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AI-愛-で紡ぐ現代架空魔術目録 付録 その6『魔法社会の軍事機構解説』

 付録は『AI-愛-で紡ぐ現代架空魔術目録』の世界観とキャラクターを引き継いだスピンオフ作品群です。本編と一定の関連性を有している、あるいは同一時間軸上にある場合もありますが、基本的に、新エピソードというわけではなく、補完的・補充的なサイドストーリーです。わけあって、付録シリーズは有償公開となります。予めご了承ください。なお、本編への加筆修正や直接の続編につきましては、従来通り無償公開いたします。

はじめに

 魔法社会は他国に対して威圧的・挑戦的な存在ではない。しかし、北西方向には宿敵『北方騎士団』が座し、同時に、社会の内部にも、例えば近時であれば、『奇死団』や『三医人』の革命軍、『魔法社会の裏切り者』などの反乱分子といった脅威が存在して、内外に敵を抱える状況にある。また、すぐ東に位置する『東の隣国』とは良好な外交関係を築いてはいるものの、そのさらに東や南方の諸国には、経済的・文化的に成熟する魔法社会への影響力行使を目論む者がいるのもまた事実である。そこで、中央政府とアカデミーは、国防と治安維持の為に強固な軍事機構を備えているのであった。
 軍事および治安維持機構は中央政府とアカデミーの二重構成となっており、非常時には相互に連携して内外の敵と対峙することとされている。しかし内実は厳格な縦割りとなっていて、しばしば指揮命令系統の乱れと連携の不備が指摘されるところであった。
 以下に、現下の魔法社会の軍事機構について解説しよう。

1 軍事機構の概要

 軍事機構は、大きく分けて『国防部門』、『治安維持部門』、『自警部門』に分類されており、それぞれについて中央政府の指揮下にあるものとアカデミーの独自指揮に服するものが存在する。

1-1 国防部門

1-1-1 中央政府旗下の部隊

  • 常設魔法国防部隊

  • 連合術士隊

  • ルビーの特殊銃砲団

1-1-2 アカデミー旗下の部隊

  • 常設魔導士隊

  • 魔法使い緊急即応部隊

  • アカデミー最高評議会近衛親衛隊

  • 白銀の銃砲団

1-2 治安維持部門

1-2-1 中央政府旗下の組織

  • 政府警察

1-2-2 アカデミー旗下の組織

  • アカデミー治安維持部隊

  • 漆黒の渡烏

1-3 自警部門

1-3-1 中央政府旗下の部隊

  • 辺境警備術士隊

1-3-2 アカデミー旗下の部隊

  • 対アンデッド警備隊

  • 中央市街区防衛守備隊

2 中央政府旗下組織詳述

2-1 国防部門

【1】常設魔法国防部隊

常設魔法国防部隊。

 常設魔法国防部隊は、専守防衛を旨とする国防の主力部隊である。総兵力は2個師団規模。侵攻してくる外的(主に『北方騎士団』)から魔法社会の中枢を自衛するために、その大部分が『スカッチェ通り南北市街区』と『ケトル・セラーの街』に展開される。一部は東部都市の『フィールド・イン』市街区にも駐留するが、大規模の主力は西部に集中している。
 政府国防部隊の重要な戦力であり、中央政府はこの部隊をその他地域に派遣することを極度に忌避する傾向がある。その政策方針が、『三医人の反乱』の際、アカデミーによる南部都市群の防衛を著しく難しくしたのは記憶に新しい。それは、政府とアカデミーの指揮系統が縦割りであり、国防のための柔軟な連携というのは理念的な建前に過ぎないことを如実に表す好例であった。
 同部隊は、基本的に成人した魔導士によって組織され、その実力は折り紙付きである。魔法鎧とローブその他の法具・術具を装備し、殲滅力・継戦能力ともに優れる。騎馬隊が主体であり、機動力もある。
 本部は『スカッチェ通り北市街区』に位置しており、同市街区は、商業区であるのみならず基地の城下町としても大いに栄えることとなった。政府国防省の配下にある。

【2】連合術士隊

連合術士隊。

 連合術士隊は、常設魔法国防部隊とは異なり、必要に応じて侵攻にも従事する攻撃的な性質も併せ持つ部隊である。『北方騎士団』を牽制する目的で、その本部は北部の大都市『インディゴ・モース』に置かれている。1個師団規模の総兵力を擁する。
 常設魔法国防部隊よりは柔軟な部隊運用がされるが、基本的には『インディゴ・モース』を中心として、主に『スカッチェ通り』、『サンフレッチェ大橋』、『インディゴ通り』の防衛を担っている。『三医人の反乱』の際は、結局最後まで南下を見送り、北部での駐留を続けた。魔王騒動の際は、アカデミーの要請によりソーサラーの指揮下に入って中央市街区の防衛にあたり、『魔法社会の裏切り者』の一団を退けることに成功する。
 連合術士隊の「連合」とは、中央政府とアカデミーの双方の軍事部門の指揮命令下にあって、戦局に応じて柔軟な運用を実現すべく冠されたものであったが、事実上は政府国防省の指揮下にあり、アカデミーが同兵力を動員する際には、最高評議から国防省に対する正式の要請を必要とするなど、指揮系統切り替えの柔軟さはなく、硬直的な運用に留まっている。
 大部分が歩兵で組織され、術士で構成されていることから、殲滅力よりも継戦能力と防御力に特化した部隊であり、その特性は7日以上にわたる中央市街区防衛という籠城作戦の際に大いに発揮された。

【3】ルビーの特殊銃砲団

ルビーの特殊銃砲団。

 魔法社会全体にとって深刻な脅威となった『奇死団』に対する姿勢として、錬金銃砲とアンデッド専用の『魔法銀の法弾』は有効であるとして譲らず、抜本的な対策に打って出ることに及び腰のアカデミーに業を煮やした中央政府が、『アカデミー最高評議会』を飛び越えて直接その軍事部門に接触を図ってアカデミー内に設置した特殊部隊。アンデッドに対して極めて効果の高い『ルビーの法弾』を扱うことができ、その能力は『白銀の銃砲部隊』を遥かに凌ぐものであった。しかし、臨場するすべての生者をアンデッド化するというリッチー・クイーンの脅威の前ではやはり無力であり、彼女が姿を現した遭遇戦において、隊員の全員が無慈悲にアンデッド化されるという非業の最期を遂げることになる。
 『奇死団』事件後も部隊そのものは維持されており、その指揮権は、国防省からアカデミーへと委譲された。対アンデッド戦のみならず対人戦闘や対機械兵戦闘においても、高い殲滅性を安定して発揮することから『三医人の反乱』の折には、アカデミーが運用できる数少ない兵力の一端として大いに活躍した。
 『ルビーの法弾』はその破壊力が破格であるため、通常の錬金銃砲では暴発の危険が付きまとったが、政府国防省の要請を受けた『ハルトマン・マギックス』社は、その使用に耐える専用の銃砲を開発することで、期待に応えて見せた。
 指揮権はアカデミーに移されているが、所属としては政府国防省の下にある。

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