![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48392851/rectangle_large_type_2_a897518bc94becfd1ed20832d6a754f3.png?width=1200)
動物的/人間的
もしもし、岩崎だけど。
普段はCMディレクターをしていて、テレビCMとかWEBムービーの演出の仕事をしてる。1993年蒲田生まれで、音楽と服とオカルトが好き。あと現実ね、現実が好き。この世界の、ディティールの部分がとりわけ好きだな。お話を作るときも、重心がそっちにいきがち。劇団ノーミーツでは作家・演出家を名乗っているけど、とにかくそういう小さいものを愛しているという点が、世界をまるっと作ってしまう小御門優一郎くんとの、最も大きな作家性の違いだろう。
文章なんて大学入試の小論文の問題以降一度も書いてないけど、こういう機会だし、自分のこの一年間を振り返ってみようと思う。本当にノーミーツと、仕事のことしか記憶にないんだよな。仕事の話なんてしてもしょうがないし、必然的にノーミーツの話になりそうだな。
このnoteは劇団ノーミーツ1周年記念企画「劇団員24人全員のnote」のひとつです。劇団ノーミーツ作家・演出家の岩崎裕介が書いています。その他の劇団員のnoteはこちら。
<小御門優一郎に誘われて>
ノーミーツが発足した2020年の4月初頭は、めっちゃ暇してたな。やっていた広告の仕事は軒並み中止や延期。もう全てが未曾有すぎて、みんな「?」って状況だった。俺も監督としてデビューしてまもなく、やったラー!と息巻いていたタイミングだったので、出鼻挫かれた感じ。まぁもちろんフリーで映像やったり飲食関係の友人はそれどころじゃなかったけど。そこそこ面食らってた。特にやる気も出ず、元々インドア派だったし、久々の休みだーくらいの感覚でずっと家で映画観てた。クローネンバーグ全作一気見とかしてたな。んでしばらくボケーーーってしてたら、
この小御門優一郎って奴は大学で演劇サークル入ってた時の親友で、ものごとの面白がり方とか、創作活動におけるバイブスがとても合う人間で、4年間(2人とも留年しているので、厳密には5年間なんだけど)ずーっと仲睦まじく、一緒に演劇とか映像作ってたんだよね。色白で賢そうな顔して、実際かなり理知的なんだけど、自意識モンスターを内面に飼っている、アブないアンビラレントな男。ジキルとハイドに近いな。最近ハイドの方はめっぽう出てこないんだけど。自意識がピークの時なんて、あれは4年生の夏合宿だったかな、深夜みんなでコンビニの前でアイス食ってたら、急に小御門くんいなくなって、飯塚くんっていう、いつも3人でつるんでたのと一緒にあちこち探したんですよね。そしたら海岸の、それも沖のほう、服を着たまま腰のあたりまで海に浸かって対岸を眺めていたんですよ、小御門くん。いつもは茶化す俺たちも「え?」ってなって。んで小御門くん呼ぶじゃないですか、危ないから。戻ってきて「なんで?」ときいたら小御門くん「魂について考えていた」シビれるよな。全く意味わかんねえんだもん。魂と、腰まで海に浸かってることに、因果関係がまったくない!
いや、だいぶ長くなってしまったけど、まぁとにかく、病的なまでに自意識過剰なんだけど、決して押し付けがましくないっていう、絶妙なバランスで生きている稀有な男で、大好きなんですよ。ずっとじゃれていたいくらい。そんな彼から誘いが来たもんで、久しぶりに小御門と創作できるやったーつって、ジョインして。まぁ最初は短編の役者として2,3個出て、もう当初のノーミーツってほんとにありえないスピード、週に2個とかのペースで作ってたから、主宰3人の脳みそも枯れ始めていて、アイデアマンとしても力をかしてくれ〜って、喜んで〜ってブレストとか参加するようになって。主宰の林とか、役者で出ていたオツハタも学生時代から仲良かったので、同窓会みたいだったなぁ。あの時は、久々に会えて嬉しかったぜ!またなんかあったらよろしくなお互い頑張ろう!的なノリになると思っていた。
んで、4月の末くらいか。その頃はもう仕事のほうもテレカンが定着し始めていて、こーなんて言うか、プライベートと地続きだから逆に切りどころがわかんなくなったり、ダラダラ打ち合わせやる人が増えてきていて。ダルい大人数のテレカンとかこれ、バーチャル背景に自分がうなずいてる動画を設定して、お菓子食ってりゃいーべみたいな、まぁそういうテレワークの中で感じた違和感からネタを収集して、主宰の面々にぽつぽつ共有してたんですよ。んである晩に
それで生まれたのが、
ダルい上司との打ち合わせ回避方法良いwpic.twitter.com/3veIR4AMNo
— 広屋佑規 / 劇団ノーミーツ (@hiroyayuki) April 26, 2020
投下した直後からSNSでわりと反響がよく、あー自分の考えてること、意外と共感性あんだなーとか思って。んで翌朝起きたら、自分のキモい芝居がトレンド入りしている。橋本マナミとかがRTしている。いわゆるバズるという状態になって、みんなで喜んでた。
ここまですげー詳細に書いてるんだけど、なんでかと言うと、今でもすげー覚えてるんだけど、俺、この時だったんだよな。あれ、俺の居場所ここじゃね?何もなくても、アイデアだけで世の中ぶん殴れるんじゃね?ノーミーツ、もしや?って予感がしたのは、他でもなくこの瞬間だったんだよな。
<孤独と虚無感>
その時期の俺は暇だったのもあって、広告のクリエイティブって、なんなんだっけ?みたいにバッド入っちゃってて。っていうのも意外とみんな、本質に興味ないのよ。タレントが出ていることを担保に、情報情報!みたいな。いや広告だから当たり前なんだけど人の時間を奪うわけだから、観てくれた人にとって良い体験にしたくね?っていう。そういう気概の人ってあんまいなくて、最初はそうだったのかな、とか思う人もいるんだけど…立場論みたいなものを重々に加味しつつ、みんなで作っていても、バラバラの方向を向いてるなあって、孤独だったんだよな。関係者めっちゃいるのに俺しか、今作ってるものを面白くしようとしてないんだもの。
それにさ、広告の企画もタレントありきのものとかになっちゃうと、すごい時間とお金をかけてもすぐに古くなっていくんだよ。心血注いで作っても、5年後には風化して、誰も共感できなくなるような。そんな刹那的なものを作り続けなきゃいけないのも、虚しいわけ。
とにかく、前例に囚われていても真新しいものなんて生まれないし、流行は絶えず更新されていく。それに話題化話題化ゆーてますけどね、人の気持ちなんて推し量れるわけないんだから!もし作るなら、普遍的で、必然的で、人間由来の、強度のあるものじゃなきゃ意味ねーだろー!
みたいなことを考えてモチベ下がってた時に、まだ3人だったノーミーツと出会えたことは、結構救いだったんだと思う、マジで。全員野球で何ができるか、何が面白いか本質から掘って考え尽くして、それをフルスイングで実行しちゃう集団。同世代ってのもあってバイブスも近い。すごい!孤独じゃないし、虚しくない!これだって思ったな。んで『ダルい上司』のバズきっかけでテレビCMの話がきて、その監督としてアサインされたくらいのタイミングで正式にメンバーとして加入させてもらった。懐かしい。
オツハタは同期。ワンピースでいうサンジとウソップくらいのタイミング
ダルい上司の一ヶ月後には、テレビCMに出ていたスピード感
<短編千本ノックと気づき>
そっからはもう鬼スパンで企画して、演出して、出演して、もうひたすら作ったな。短編動画は、ほんと思いついてからアウトプットされるまでのスピード感が凄かったし、みんなでアイデア出し合いながら一緒に作ってくのがほんと学生時代に戻ったみたいで楽しかったな。
いつ会えるか、まだわからない。
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) May 6, 2020
でもきっと、おうちはまだまだ楽しめる。#EnjoyHome#劇団ノーミーツ pic.twitter.com/qh7Sdes2sb
説教してたら、それどころじゃなくなった。#EnjoyHome #劇団ノーミーツ pic.twitter.com/gh4YKJqkWp
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) May 13, 2020
Zoom新歓、やべぇ。#EnjoyHome #劇団ノーミーツ pic.twitter.com/cxAsUiTl7H
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) May 20, 2020
企業案件を受けるときにも、ある種タレントとしてノーミーツに依頼が来るから、フルスイングしやすい。本業でD案やE案に持ってくるような企画が、即お買い上げしてもらえるのはマジでありがたかった。
【世にも奇妙なオンライン会議へようこそ…】
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) July 7, 2020
『#世にも奇妙な物語 ’20夏の特別編』
スペシャルコンテンツ
『世にも奇妙なオンライン会議〜 #西野ン会議 〜』
面白法人カヤックと共に #劇団ノーミーツ 制作、岩崎 @iwsk_ 演出です!
あなたのPC画面が奇妙な世界への入口に…https://t.co/spWMMOweLw pic.twitter.com/5crxAK3ke6
プロプレミアムが、発売されました。#劇団ノーミーツ#アースジェットプロプレミアムプロモーション pic.twitter.com/XIhoWS1miv
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) July 13, 2020
さっき大層なこと語っていたけど、俺は別に自発的には何か作りたい!とか表現したい!みたいな願望は持ち合わせていないんだよ、マジで。楽したい、なるべく。友達とお茶して、音楽聴いて、ポケモンカードとモンハンやってれば幸せな人種。仕事のやるやらも、基本的には楽しそーかどーか、スケジュール的にいけるかどーかでしか判断しないしね。やるとなったら観る人がいるから誠心誠意取り組むけど、基本的には向上心もプライドもあまりないし、けっこー動物的。だったんだけどさ、ノーミーツという舞台ではじめて与件なしで自ら企画、演出して作ったものが、人に受け入れられていく過程でやっぱ意義とかさ、やりがいを意識するようになった。ノーミーツの名前がある程度売れたことで、まだ発見されていない才能をフックアップする機会も作れたし。ここが一番演出家冥利なとこだよな。
それに何より流石にこのタイミングで、同世代の才能が結集して、みんなでもの作ろうぜ!ってなってるの、いくらなんでもちょっとロマンチックだろう!カラカラになっていた創作意欲が再燃して、なんというか、ちゃんとしようみたいな、人間らしさを取り戻せた感じがあった。とにかくみんなで一丸となってものを作るのが楽しかったからかな。それが個人的に、ノーミーツに入れて一番よかったことかも。
あともうひとつ、劇団での活動を通して、自分の作家性みたいなものが少し浮き彫りになったな。
上白石萌歌さんに取材させて頂きました!#リモートフィルムコンテスト#劇団ノーミーツ pic.twitter.com/2RbL0ESNsn
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) November 20, 2020
クロちゃんに人生相談してみた。#劇団ノーミーツ#それでも笑えれば pic.twitter.com/qO6YZD4a0y
— 劇団ノーミーツ / 3.28全国学生オンライン演劇祭!! (@gekidan_nomeets) December 21, 2020
萌歌ちゃんに出てもらった短編も、クロちゃん出演のやつも、ビバラバだって「バイアスに囚われず、人の本質をみようぜ!」って命題が通底してる。無意識に作ってるのに、結果としてそうなってるんだから面白い。俺自身が持たれがちなイメージと実体に乖離があって、よく誤解されてきたから、普遍的なテーマとして「脱バイアス」みたいなのがあるのかも。作家性は意識的に作っていくのではなくて、無意識に作ってきたものに、足跡として現れるんだろうな。自分が主体となって創作をする機会を得たからこそ、内省を知る良い機会になった。
・・・あれ、マジか。
俺このnote書き始める時はもっとこう、ノーミーツのみんなに出会えてハッピー!同世代で同じ方向を向いてる異業種の奴らと出会えてじゃれあえて、好きなことやってお金稼げるのサイコー!みたいな路線になっていくと思ってたんだけど、なんかマジなやつになってるな。意外といろいろ思うところあったんだな、俺。
いずれにせよ、劇団ノーミーツにはマジで感謝だな。なんか、ほんと創作するものが人間じみたなって思う。久しぶりにきちんと人と対話して、ぶつかりながら創作ができてるからだろうね。
劇団ノーミーツには、カリスマがいない。言い換えれば、みんな何かのカリスマなんだよな。頭が良くてチャーミング。だからフラットで心地よい関係が続いているし、24人のどこをどう切り取ってもいい感じになるだろう、そういうところが好きだな。願わくば、ずっと俺のオアシスであってくれ。 そしてこのまま広告業界で殉教するところだった俺を、救ってくれてありがとうなノーミーツ。俺は俺のやるべきことが見えてきたぜ。