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エッシャー通りの赤いポスト感想
■園子温監督との出会いからエッシャー通りの赤いポストへ
園子温監督との出会いは、「時効警察」にて園子温監督が今回最後というテロップを拝見して、お名前を覚えて、Netflix、アマゾンプライムビデオにて、「自殺サークル」、「紀子の食卓」、「冷たい熱帯魚」、「恋の罪」、
「地獄でなぜ悪い」、「奇妙なサーカス」、「愛なき森で叫べ」(ざっと覚えてる限り)を拝見させていただいて、エロティック、グロテスクな中にも園子温監督の美学、もしくは映画とは教訓があるべきだ、と思っています。
決して、エロティック、グロテスクで終わらず(そこにフォーカスを当てるのは間違いでもないんだけれど、園子温監督が伝えたい事はそういう事ではないと思っている)教訓がある。
そして、園子温監督の新作「エッシャー通りの赤いポスト」(失礼ながら、タイトルを一度で覚えられず、出演されている藤田朋子さんに引用ツイートされ、「エッシャー通りの赤いポスト」というタイトルを覚えた次第です)
が公開されると知り、これは観ねば後悔する、近くても渋谷だけれど、渋谷まで行くのは苦ではないので(むしろ「エッシャー通りの赤いポスト」を観た後の渋谷の足取りは軽く、切子ちゃんと安子さんが抗っているのではないか、と思う)渋谷ユーロスペースさんに観に行きました。
■「エッシャー通りの赤いポスト」あらすじ
「エッシャー通りの赤いポスト」のあらすじを簡潔に話すと、映画「仮面」に出演する、素人のみをオーディションしていき、様々人々が集まる中、大人の汚い事情で小林監督が折れる、けれど―…というのがざっくりとしたあらすじ。
登場人物は誰も個性的で、オーディション会場に行くのに工事しているのだけれど、ここで人生においては理不尽な事で怒られて、謝罪しなくてはいけない場面など多々ある(例としてあげておくけども、社会はもっと理不尽だし、都合よく出来ていない)けれど皆「仮面」をつけて誠心誠意謝っているフリをする。
理不尽な事が遭った時はどうしようもないし、大人になって社会に進出するとこんな場面はいくらでもある。
個人的な団体でのMVPは小林監督心中クラブ、個人でのMVPは安子さんにあげたい、また小林監督も演者さんが巧みなのか、イケメンでこれは惹きつけられる…!と思わせる。
群像劇でありながら、上手く説明は出来ないんだけれど、まとまっていて、観ていてとても楽しかった…観た後に切子ちゃんと安子さんが渋谷のスクランブル交差点で今も「仮面」をつけている人々に抗っているのかもしれない、と思うとエモいですね。
■「エッシャー通りの赤いポスト」の個人的な感想
誰かが言った言葉だけれど「人生の主役は自分であり、自分にとっての家族や友達や恋人はサブであり、嫌いな人間はエキストラだと思っておけばいい」という言葉がある。
けれど、長い間、この言葉を忘れていたし、エッシャー通りの赤いポストを観させていただいた後は、自分の人生の主役は自分であって、当たり前のことなのに、忘れがちになってしまった感情を思い出した。
けれど、繰り返してしまうけれど、歳を重ねていけば、理不尽な事に何度もぶち当たり、自分をすり減らし、それこそ「仮面」をつけて自分を偽る。
「いい人」だと思われたい、「凄い人」だと思われたい、そんな気持ちばかりが先行してしまう、けれど、もっと人生は出来る範囲で迷惑を掛けないのであれば、自分の思ったとおりに生きていいのだと思う。
観終えた後に、渋谷を歩いていると、足取り軽く、園子温監督の素晴らしさ、また演者の方全てに拍手を送りたい。
ご縁があって、佐藤鯨様(工事現場のマサコさん、キャッチ・ユア・ドリームを切子ちゃんのお母さん・藤田朋子さん)にフライヤーをいただいたり、色々良くしていただき、失礼ながら、この場で感謝をしたいと思います。
園子温監督作品が好きなら、にやっとするようなキャスティングもあるので、ぜひぜひ観ていただきたい…!
圧倒的なまでの熱量を感じられるのに、胃もたれせず、何度もリピートしたい、そんな素敵な映画でした。
また園子温監督作品を初めて観たい、でもエロティックだったり、グロテスクだったりするんでしょ?という心配もなく(少しの暴力はあるけれど、でも許容範囲)出てくる個性的な演者さんの中から推しを見つけるのも楽しみの一つ。
映画館で、この熱量と爽やかな感覚を味わって欲しい。
拙いながら、ここまで書いてきましたが、興味を持ったら、もうあなたも「仮面」のオーディションを受けに行って、エッシャー通りにある赤いポストに投函しているんですよ〜。
人生との折り合いに疲れたら、たまにはワガママしてしまおうよとこれでもか、と思わせてくれます。
素晴らしい作品に出会えた事に感謝をー。