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第22回 石と賢治のミュージアム再訪 稲と石灰編
第21回のとおり、#石と賢治のミュージアム での建築石材とは何かの問題以外の点をご紹介したいと思います。
建築石材をのぞいて入館冒頭ガイド
第20回のとおり、#石と賢治のミュージアム の前回ビデオは見ていたので割愛させていただきました。ここでガイドの方から説明を受けました。サヌカイト(讃岐石)による木琴体験ならぬ石琴体験をしました。とても綺麗な音色で石から発しているとは思えないくらいです。また、ガラス工芸作家による、銀河鉄道の夜をイメージした、銀河、りんどうの花をガイドの方より説明を受けながら見せていただきました。こちらは写真撮り忘れました。次回の課題にしたいと思います。
ブラックライトで光る石たち
これは写真に収めたかったので、今回の目的の一つでした。ブラックライトの照射は職員の方が行います。
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秋田大学鉱業博物館 でも同じような設備があり、蛍石などを見ることができます。かなり、ギラギラとした石もありますが、青は宮沢賢治のイメージにぴったりだと思いました。特に銀河鉄道の夜の、燐光の青い光はそのままです。
燐光は光のエネルギーを蓄えてゆっくり放出するもので、紫外線を当てた後、しばらくたってもぼーっと光ります。
動画で撮っていませんが、この光が、しばらくぼーっと光っているものと捉えてください。これだけで、銀河鉄道の夜の世界に近づいたと思えませんか。ぜひ、直接見ていただきたいと思います。
石の展示室
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鉱物の写真を少しばかり。宮沢賢治作品の引用例は別として取り上げる予定なので、まずは鉱物の世界を楽しんでください。
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このような展示が一杯あります。オパールなどはその反射するきらめきを見やすいように回転させてあります。ぜひ現地にてご覧ください。
宮沢賢治における陸羽132号と肥料
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宮沢賢治のパネルで見落としていたものに、稲の育成と肥料吸収状態がありました。ここで北東北で生活している方ならば気がつくことがあるでしょう。収穫が11月上旬なのです。これでは降雪の恐れがあり危険です。しかし当時としては収穫適時期に収穫するというより、収穫しやすく田から水がはける時期が十月から十一月上旬だったのでしょう。同時に江戸時代からの在来品種は晩成よりで、平年であれば多収に傾いていたこともあります。他地域では降雪の中、刈り取りを行なっていたというお話があるそうです。陸羽132号はそれ迄の品種より稲熱病(いもち病、稲を枯らす病気)に強かったと聞いています。(陸羽132号は国立農事試験場陸羽支場 育成です。場所は秋田県現大仙市)
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話は戻りますが、宮沢賢治は肥料では窒素、燐酸、加里、石灰の四要素が大事だと語っていたそうです。そして盛岡高等農林から問題としていたのは、土壌の酸性度と見ていたようです。イネ栽培にはpH=5.5~6.5が適切だと示されているそうです。ですが降雨量が多い日本では、降雨量は蒸発量を上回り土壌中へ浸透する水と一緒に土の中のアルカリ分(石灰)が流されやすくなります。つまり酸性化しやすい。そこで賢治は、土壌をアルカリ化にする炭酸石灰の販売で広く農民に炭酸石灰を与えて土壌を最適の phにしようとしました。また、恩師の関教授の後押しもあり炭酸石灰の販売に取り組むこととなるのです。
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実際、田のphを確認するために、田の土を舐めてまわったと関登久也(宮沢賢治の親戚)が賢治の教え子からの聞き書きで記載されています。(続宮沢賢治素描 関登久也 著)
終わりに
もっと鉱物の写真を掲載していきたかったのですが、作品を味わいながら項を改めて記載したいと思います。
このようなサラリーマン宮沢賢治を、#石と賢治のミュージアム に行きながら感じてみてはいかがでしょうか。このように実りを改善する賢治の姿は、童話グスコーブドリの伝記を彷彿させます。旧東山町は一関市と合併するまでは、グスコーブドリのまち、を標榜していたそうです。グスコーブドリのまちに足を伸ばしては如何でしょうか。
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グスコンブドリの伝記
参考文献
『東北の稲研究』 監修 鳥山国士 他 東北農業試験場稲作研究 100年記念事業会