ウクライナ紛争新段階! クリミアで爆発等激化! ハイマース等でのウクライナ側攻撃なら攻撃力は別次元! ゼレンスキー大統領クリミア奪還宣言! 米国は攻撃容認! その後ウクライナが東部で反転攻勢! しかしプーチンは核使用も辞さず!! 2022.9.26
(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 2022年9月26日時点で加筆・アップ)
2022年8月、クリミア半島で爆発事件や無人機による攻撃などが多発した。サキ航空基地、マイスコエの弾薬庫、グバルデイスコエの飛行場、クリミア橋のあるケルチ、ロシア黒海艦隊の本拠地セバストポリ等である。
しかし、ウクライナ側支配地域から、例えばサキ空軍基地は200km以上離れている。これに対して、米軍がウクライナに供与のした高機能ロケット砲ハイマースは、米軍が射程80km以下に制限したため、届かないはずだった。しかも攻撃は、200~300km先から誤差10~20mの超高精度で行われている。
こうした点から、米軍が関与し、ウクライナの攻撃能力を一段階アップさせたのではないかと推測される。その背景には、米国のクリミア攻撃への支持が存在する。ウクライナが米国の支援で攻撃のギアを上げたのが事実なら、ウクライナ紛争はまさに米国の「代理戦争」そのものである。
その後9月になって、ウクライナは東部で反転攻勢を本格化させ、ハルキウ州の大部分を奪還したことが報じられた。
しかし、ロシア側の被害があまりに大きくなれば、プーチン大統領が戦術核を使用する可能性が懸念されるのも事実だ。それは、核戦争に直結する大問題である。西側大手メディアでは、このきわめて重要な視点について、ほとんど無視してきたのではないだろうか?
実際に、9月21日、プーチン大統領が演説で、「保有するあらゆる手段を行使する。これは脅しではない」と、核兵器使用も辞さないことを断言したのだ。懸念は刻一刻と現実味を増している。
詳しくは、ぜひ、記事本文を御覧いただきたい!
クリミアの基地でロシア空軍機9機が破壊される! ゼレンスキー大統領はクリミア奪還を宣言!
2022年8月、ロシアとウクライナの双方が、自国領だと主張しているクリミアで、爆発などが多発し始めた。
8月9日のサキ海軍航空基地の爆発事件以後、クリミア半島中央部のマイスコエの弾薬庫、グバルデイスコエの飛行場、クリミア橋のあるケルチ、ロシア黒海艦隊の本拠地セバストポリで、爆発や無人機による攻撃が起きた。ウクライナ紛争は、米国から送られたハイマースなどの新兵器によって、ギアが一段、上がった模様だ。
8月9日、ウクライナ空軍は、クリミア半島西部にあるサキ航空基地の爆発で、ロシア軍機9機が破壊されたと発表した。
『NBC』(10日)によると、ロシア側は当初、弾薬が発火して爆発したと発表したが、ウクライナのSNSでは、ウクライナが発射した長距離ミサイルが基地を攻撃したのではないかという憶測で騒然となった。
『NBC』は爆発の数時間後、ゼレンスキー大統領は毎晩のビデオ演説の中でクリミア半島を奪還することを誓い、「ウクライナに対する、そして自由なヨーロッパのすべてに対するこのロシアの戦争は、クリミアで始まり、クリミアの解放で終わらなければならない」と述べた、と報じた。ゼレンスキー大統領による事実上のクリミア奪回宣言である。
米軍供与の高機能ロケット砲は射程80km以下のはず!! 200km以上先の基地をどう攻撃!?
サキ航空基地はクリミア半島西部に位置しているが、現在、クリミア半島の北に隣接するへルソン州をロシア軍側が制圧しており、ウクライナ側の支配下にある地域からは少なくとも200kmは離れている。
米国はウクライナへの軍事支援を拡大し続けており、高機動ロケット砲システム・ハイマースをウクライナへ供与している。
しかし、ハイマースの供与にあたって、米軍は、ウクライナ軍が国境を超えてロシア領を攻撃しないようにと、射程距離が70km~80kmのものに限定する、と説明してきた。ところが、サキ空軍基地への攻撃は、米国の説明とは異なり、米軍が供与したハイマースの射程を大きく超えている。
仮に、サキ空軍基地への攻撃を、ウクライナ側が実行したとすれば、ウクライナ側はすでに200km~300kmの射程距離を持つハイマースか、同種のミサイルシステムを、米国から供与されたのか、保有しており、すでに使用していることになる。
上記『NBC』は、ウクライナの軍事アナリスト、オレー・ザダノフ氏の分析として、射程約125マイル(約200km)の射程を持つウクライナのネプチューン対艦ミサイルS-300か、西側から供給された射程約185マイル(約300km)のハープーン対艦ミサイルを使用した可能性がある、と報じた。
『BBC』は8月11日、「少なくとも8機の(ロシア軍の)航空機が損傷または破壊されたようだ」と報じた。『BBC』は、爆発の前後の衛星画像を比較し、Su-24Mを含む2種類の戦闘機が、近くの2つの建物と共に爆発によって破損したと説明している。
『BBC』は、S-300が使われたのではないかと推測している。
英国のベン・ウォレス国防長官は、「ウクライナが必要に応じて致命的な武力を行使することは絶対に合法である…自国の領土を取り戻すためだけでなく、侵略者を押し戻すためにも」と、ウクライナ側がクリミア攻撃をすることを擁護した。
200~300km先から誤差10~20mの超高精度攻撃!! ウクライナの攻撃力が米国関与で格段に上昇か!?
『BBC』が示した、爆発前後の衛星画像を比べると、その「爆発」が大変高い精度で行われたことがわかる。
破損した戦闘機Su-24Mは全長25m、全幅18mである。そのサイズから類推すると、爆発前、それぞれの戦闘機は1辺がおよそ50mほどの盛土の塁でコの字型に囲まれていた。爆発後、戦闘機が破壊された残骸が確認できるが、盛土の塁は崩れていない。つまり、非常に高い精度で1機ずつがピンポイントで破壊されているのだ。
仮に、ウクライナの支配下にある地域から、ミサイル攻撃が行われたとすると、200~300km離れた場所から誤差範囲10m~20m程度の精度でミサイルが打ち込まれたことになる。射程距離から見ても、精度から見ても、ウクライナ側の攻撃力が一段も二段も上がったといえそうだ。
ハイマースにも、GPS誘導タイプのものがある。GPS誘導による高精度のミサイル攻撃であるとすれば、攻撃対象のGPS情報を提供している米国の関与の疑いも濃厚である。
クリミアの他の軍事施設でも爆発!「ロシアのクリミア支配を否定する強力な政治的声明だ」!
その後、クリミアでは8月16日にクリミア半島中央部のマイスコエの弾薬庫、グバルデイスコエの飛行場で爆発が発生している。ロシア当局者は、マイスコエでの爆発は破壊工作によるものだと述べたものの、破壊工作の種類や想定する関与者については明らかにしていない。
『NBC』(18日)は、スコットランドのセント・アンドリューズ大学の戦略研究教授であるフィリップス・オブライエン氏の「クリミアでこれらすべての爆発が偶然に起こることはありえない」、「これらは非常に効果的に攻撃されている重要な軍事施設であり、準備の兆候を示している」という言葉を紹介している。
オブライエン氏は「これらの爆発は、地上のウクライナの特殊部隊、地元の破壊工作部隊、長距離兵器、またはこれら3つすべての混合によるものである可能性がある」と述べている。
戦略上、南部を制圧するロシア軍への補給路への攻撃であり、ドニプロ川西岸の支配権を取り戻すための一貫したウクライナの反撃という意味があるが、オブライエン氏は政治的な重要性を指摘している。
オブライエン氏は、クリミアへの攻撃は「実際にクリミアが安全ではなく、ロシアの強力な支配下にないことを示すことは、非常に強力な政治的声明である」だと述べた。
ゼレンスキー大統領は、爆発の後、人々がその地域から逃げ出したとして、「クリミアが彼らにとっての場所ではないことをすでに理解しているか、少なくとも感じている」と指摘した。
ゼレンスキー大統領の言葉を聞いていると、「クリミアから逃げ出した人々」を、自国民であるとは感じていない。国家間指導者としては致命的なまでの国民への「共感」の欠如が感じられる。自国民が武力攻撃に怯えて、自らの住む土地から逃げ出すことをゼレンスキー大統領が「悲劇」と感じていないのは、クリミアの住民の9割がロシア語話者であり、住民の意志によってロシアへの編入を望んだためであろう。彼の言動は住民がどこかへ(おそらくはロシア本土へ)逃げ出すのを、よしとしている気配が濃厚である。東部、南部・クリミアのロシア語話者は、「ウクライナ人」ではないのだから、徹底的に追い出したい、という底意がすけて見える。
『CNN』(18日)は、サキ航空基地、マイスコエの弾薬庫、グバルデイスコエの飛行場で発生した3回の爆発について、「ウクライナが関与していたことが同国政府の内部報告書から明らかになった」と報じた。匿名のウクライナ当局者がCNNに報告書を共有した、ということだ。
ウクライナ高官が「解体」呼びかけた、ロシアと結ぶ「クリミア橋」付近のケルチで爆発!?
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問は8月17日、ロシアが2014年に併合した南部クリミア半島と同国本土を結ぶクリミア橋は「違法建築物」であり、「解体されなければいけない」と呼び掛けた、と『AFP』が18日、報じた。
ケルチ海峡を渡る全長19キロのクリミア橋は、2018年に開通し、ロシアとクリミア半島への軍民両用の主要輸送路として活用されている。
『UKRINFORM』(19日)は、18日夜、クリミアのケルチとセバストポリ、南部ヘルソン州ノヴァ・カホウカ、ロシア領ベルゴロドといった、複数地点で爆発が生じたと報告されている、と報じた。
ケルチは、クリミア島の最東部、ロシア本土とつながるクリミア橋のある地域である。
『UKRINFORM』は、「ロシアの報道機関がクリミア占領政権の『クリミア首長顧問』なる人物(クリュチュコフ氏)の発言として、ケルチで防空システムが稼働したと報じた」、「ソーシャルメディア上では、ケルチでは少なくとも4回大きな爆発音が聞こえたと書かれている」、「ケルチ住民は、『海から飛んできた』ミサイルを見た、上空で爆発した」と、ケルチでの「爆発」について報じている。
クリュチュコフ氏は、人々が聴いたのは「防空システムが稼働した音」だと述べているそうだ。記事は夜空を光る物体が上昇し、小さな爆発を起こす様子をとらえたSNSの動画を紹介している。
ベルベク空軍基地付近でも爆発! ロシア黒海艦隊本部でウクライナの無人機撃墜か!
『ロイター』(19日)は、19日にかけて爆発が相次ぎ、セバストポリの北にあるロシア軍のベルベク空軍基地付近で爆発が発生し、クリミア半島の反対側にあるケルチでも巨大な炎が上がった、と報じた。セバストポリにはロシアの黒海艦隊の本部基地がある。
『ロイター』は、ウクライナ当局者は、クリミアで発生した爆発の約半分はウクライナ軍による攻撃だったと認めている、とも報じた。
『ロイター』は、ウクライナ軍が、ハイマースよりも射程が長い「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」を用いているのではないかと、推測している。一方、ウクライナ当局者は、ATACMSを保有しているかどうかは明らかにしなかった、ということだ。
ロシアメディア『RT』は8月18日、「クリミア最大の都市セバストポリの市長は、ウクライナの無人航空機が市の空港近くで防空システムによって撃墜されたと報告した」と報じた。
ミハイル・ラズボザエフ市長は、「ベルベック飛行場の近くで無人航空機が防空システムによって撃墜された」と、18日にテレグラムに投稿した。
『RT』は20日、「土曜日(20日)の朝、ウクライナの無人機がセバストポリのクリミア港にあるロシアの黒海艦隊の本部に墜落した、とミハイル・ラズボザエフ市長は述べた」と報じた。
ラズボザエフ市長は、低空飛行していた無人機は本部の上空で撃墜され、屋根に激突し、火災が発生したが、死傷者や重大な損害はなかったと述べ、「ウクライナのせいだ」と述べたということだ。
また、クリミアのセルゲイ・アクショーノフ知事も、セバストポリの無人機攻撃の直後、別の無人機が半島の西で撃墜されたと報告した。
「米国がクリミア攻撃を承認」! ウクライナは米国支援で攻撃のギアを上げた!
これまでもクリミアへの攻撃は単発的に行われてきたが、8月9日のサキ空軍基地での爆発以来、連日クリミアのロシア軍の拠点やその付近で「爆発」が起きている。
『ポリティコ』は8月17日、「米国はウクライナがロシア占領下のクリミアを攻撃することを承認する」という記事を出した。
「クリミアを攻撃することはウクライナにとって公正なゲームであり、そこにいるロシア人を攻撃するためのアメリカの支援がある。
CNN が入手したウクライナ政府の文書によると、ロシアに併合された半島での先週の3回の爆発の背後にはキエフがあり、これにはモスクワの戦闘機数機を破壊したサキ空軍基地での大規模な爆発も含まれている。
クリミア作戦へのキエフの関与を、公式に認めたウクライナ当局者は、まだいない。しかし、オレクシー・レズニコフ国防相は水曜日、『ボイス・オブ・アメリカ』に対し、ウクライナは米国が提供した武器で占領地を攻撃する可能性を排除していないと語った」。
レズニコフ国防相は、「米国が提供した武器で占領地を攻撃する」と述べている。レズニコフ国防相は、米国がハイマースの射程距離を70~80kmに制限するとしたとき、いずれ200~300kmの射程が可能になるだろう、と述べていた。
『ポリティコ』は、ある米政府高官が、「キエフが必要と判断した場合、米国はクリミアへの攻撃を支持する」と語ったと報じている。
米政府高官「提供したものはすべて自衛目的である。彼らが主権を持つウクライナの地で追求することを選択した標的は、定義上、自己防衛である」
バイデン政権は、ウクライナ軍がロシア領を攻撃すれば、それは第3次世界大戦につながる可能性があると警戒する一方で、ロシアによるクリミアの併合を認めていない。
「バイデン政権の立場は変化ではなく、長年の政策を肯定するものだ。ウクライナがロシア国内を攻撃するために、アメリカ製の兵器を使用してはならないことは、非常に明確であるが(ジョー・バイデン大統領は、それが第3次世界大戦を引き起こすことを恐れている)、ワシントンは、強制的に押収された半島に対するモスクワの支配を認めていない」(ポリティコ、17日)
バイデン政権がクリミアへの攻撃を容認している以上、クリミアへの攻撃は続くだろうと、『ポリティコ』は指摘している。
クリミアへの攻撃は、これまでの東部ドンバス地方で行われてきた地上戦とは次元の異なる攻撃だ。200~300kmの長距離砲、おそらくGPS誘導による高精度の攻撃は、米国の主導で、米国の供与した兵器で、米国の許可を得た攻撃であると推測される。ウクライナ側が「アメリカンレベル」にギアを上げた攻撃をクリミアにかけ始めた、ということは、まさしくウクライナ紛争が米国の「代理戦争」として行われていることを隠そうとしなくなったものであるといわざるをえない。
※この記事はIWJウェブサイトにも掲載(記事リンク(https://iwj.co.jp/wj/open/archives/511060)しています。
IWJは会員登録制で記事や動画コンテンツを公開しており、月額1100円(税込)または年会費1万1000円(税込)の一般会員になると過去2ヶ月間に公開されたコンテンツを御覧になれます。月額3300円(税込)または年会費3万3000円(税込)のサポート会員になると、すべてのコンテンツを御覧いただけます。
IWJウェブサイト(https://iwj.co.jp/)はこちら
ここから先は
¥ 110
IWJは会費と市民の皆様からのご寄付・カンパを活動費として、新しい時代の「公共性のある情報インフラ」を目指しています。よろしければ「サポート」をよろしくお願いいたします!