ロシア・ラブロフ外相インタビュー(第4回)「ゼレンスキー発言に1000の矛盾!」彼を操り、停戦遅らせ、ロシア衰退望む米英の思惑指摘!「紛争解決は、ウクライナを統治し、ゼレンスキーを外から管理する者次第」! 2022.8.27
(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 2022年8月25日時点で加筆・アップ)
ロシア外務省が2022年4月25日(日本時間26日)に、国営テレビ『チャンネル・ワン』の番組『ビッグゲーム』で放送されたセルゲイ・ラブロフ外相へのインタビューを、テキストにしてホームページに掲載した。
このインタビューの中で、ラブロフ外相は、「第三次世界大戦」「核戦争」の危機について、バイデン政権との間で行われてきた戦略兵器削減条約の延長に関する話し合いを、米国側が放棄したと述べ、米国の単独覇権主義と、米国だけは自分達の「ルール」のもと、「何をしても許される」という「例外的な国家」観をもっていることを批判している。
IWJが独自にこのインタビュー全文を仮訳してみたところ、西側メディアが一切報じていない、米国やNATO、ウクライナにとって不都合な真実が、数多く指摘されていることがわかった。
ラブロフ外相の、こうした主張は、西側では、当然ロシア側のプロパガンダと受けとめられ、耳を傾けようともしないことが容易に予想できるが、その主張には、歴史的な奥行きと視野の広さがあり、新たな知見も得られる。耳を傾ける「価値」も「意味」も十分にある。
「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」とは、「孫子・謀攻編」に出てくる有名な格言である。「敵(ロシア・中国他)について何も知らず、味方(米国・ウクライナ・NATO他)についても「幻想」しか知らず、己(日本)についてはもっと知らず」では、戦争をするとかしないとか、勝ち負け以前に、生き残ることすらできない。
日本のマスメディアが、そろいもそろってウクライナ寄り、反ロシアの方向に「情報操作」を行っているということは、皆さまご存じの通りだが、誰を騙しているかといえば、いうまでもなく、彼らは自分自身と我々日本国民を騙しているのである。
自国のメディアに目隠しをされていては戦うことも逃げることも生き残ることもできない。
また、なぜ日本のマスメディアは、米国の戦略や国益のために横並びで動くのか、そこも不可解過ぎる。
既にお届けした第1回、第2回では、バイデン政権との間で行われてきた戦略兵器削減条約の延長に関する話し合いを、米国側が放棄したことや、米国の単独覇権主義、米国だけは自分達の「ルール」のもと、国際法や国連に拘束されず何をしても許されるという「例外的な国家」観を有していることを、ラブロフ外相は批判している。
第3回でラブロフ外相は、国連が「民主主義国家」にも「権威主義的な国」にも、国家の持つ主権的平等に差別を設けていないことを指摘し、国連安保理での常任5か国の拒否権を見直す米英の動きを「危険な傾向」だと批判している。
さらに、2022年3月29日にトルコのイスタンブールで行われた対面での停戦交渉で、ウクライナ側代表団が、ゼレンスキー大統領にロシア側の提案を見せていなかったことが明らかにされ、ゼレンスキー大統領の持つ権力に疑問を呈している。
また「米英が紛争を長引かせようとしている」との見方も示している。
最終回となる第4回でラブロフ外相は、「ゼレンスキー大統領が、非同盟、非核の地位の準備はできていると公言しながら、ステファンチュク国会議長は、憲法からNATO加盟の意思に関する条項を削除することはない、これまで通りNATOに加盟すると宣言している」と指摘している。
西側に都合よく利用されているだけのゼレンスキー大統領について、ラブロフ外相は「彼はいい役者なのだが、時々おかしなことが起こるので、その状態がよくわかる。よく見て、彼の言っていることの本質を読み取れば、1000の矛盾があるはずだ」と、冷静に分析してみせた。
西側の民主主義を体現しているかのような素振りを見せるゼレンスキー大統領のもと、ウクライナ政権が自国内のロシア系住民への弾圧政策を続けてきたことを指摘した上で、「欧米諸国にとっては、そんなことはどうでもいい。彼らは戦場で、ウクライナがロシアを打ち負かすことが目的だ」との見解を示している。
ラブロフ外相は、ウクライナとの停戦交渉について「すべては我々ではなく、ウクライナを統治し、ゼレンスキーを外部から管理している人々に依存している」と語っている。この「外部から管理している人々」とは誰のことを指すのか、ここが今後、焦点となると思われる。
さらにラブロフ外相は、米国がウクライナに供与する携帯型ミサイルが、ウクライナから海外のテロリストに流されている危険性も指摘している。
詳しくは記事本文を御覧いただきたい!
欧米は武器供与は戦争継続のためではないと言いながら、実際はロシアが慈悲を請うまで「戦場で」打ち負かすと主張!
以下、仮訳第3回からの続きである。
インタビュアー「あなたとのインタビューの準備のために、ワシントンの行政機関に話を聞きました。彼らは、キエフに交渉を長引かせるように導いていることを否定しています。彼らは逆に、自分たちの仕事はゼレンスキー大統領をサポートすることであり、ロシアとの会談におけるキエフの立場は、米国ではなく、ウクライナ大統領のものだと言っています。
今、私が関心を抱いているのは、ゼレンスキー政権に対する米国の軍事支援の拡大です。(中略)
彼(ゼレンスキー)は、より強い国家(ロシアのこと)による『侵略の犠牲者』である国の指導者であると同時に、世界中の民主主義を支援する意欲を個人的に示す人物であるという、ユニークな位置づけに成功したのです。
ワシントンでは、ゼレンスキーにできるだけ多くの武器を援助することは、戦争を長引かせるための路線というよりも、米国が自ら軍事行動に関与することを拒否していることに対する代償であると言われています」
ラブロフ外相「私はそうは思いません。彼らはすでに別の言い方で、『ゼレンスキーはプーチンを倒さなければならない』と言っているのです。
ジョンソン英首相は『ロシアは敗北しなければならない』と発言(※注1)。J.ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表は、勝利は『戦場で』達成されなければならないと述べています。
自分たちが兵士を送らないのは、『恥ずかしいこと』ではないのです。新しく生まれた『英雄』を応援したいわけではないのです。ゼレンスキーは『民主主義の道標』のように描かれていますが、実際は、立法レベルであらゆるロシア的なものを禁止し、ネオナチズムとナチスの理論と実践を強化する土台を築いているのです。
しかし、彼ら(欧米諸国)にとって、そんなことはどうでもいい。彼らは突然、ゼレンスキーがロシアに取り返しのつかないダメージを与え、『戦場で』確実にロシアを打ち負かせるように、できる限りのことをしたいのです。そうなれば、ロシアは慈悲を請い、彼らが期待している条件よりもはるかに不利な条件に同意しなければならなくなります」
(※注1)『ロシアは敗北しなければならない』と発言:
ジョンソン英首相は、ポーランドのPAPのインタビューで、「私は、ロシアが奪取した領土から去ることなく、戦争賠償を支払うことなく、関係正常化に戻るという道、可能性は一切目にしていない」と発言。「私たちがウクライナ人の英雄的な抵抗をサポートすることで一致し続けたら、プーチンは最終的に敗北する」とした。
参照:
ゼレンスキーの発言には1000の矛盾! 彼は「非同盟」を公言したが、国会議長は従来通り「NATO加盟」を宣言!
インタビュアー「慈悲については、これはホワイトハウスではなく、議会の『コメンテーター』ですね」
ラブロフ外相「英国のジョンソン首相は、ほとんど同じ言葉で話しています」
インタビュアー「ボリス・ジョンソンは、特殊なケースですね」
ラブロフ外相「それは同意します。しかし、ゼレンスキーもまた、特殊なケースです。『観客のために』仕事をする能力、模倣する能力など、ある面で似ているのです。
例えば、交渉の真似事をするのです。
ゼレンスキーには、私たちの提案を理解するために1週間の猶予が与えられました。今日、ウクライナ国会のステファンチュク議長の演説を読みました。この危機の結果、ウクライナは憲法からNATO加盟の意思に関する条項を削除することはないだろう、と彼は述べました。
どうですか? すべての交渉は、特定地域の安全保障と相まって、キエフの中立や非同盟の地位について議論しています。ゼレンスキーは、非同盟、非核の地位の準備はできていると公言しながら、国会議長は、憲法から何も削除しない、これまで通りNATOに加盟すると宣言しているのです。
欧米では、ウクライナ大統領が自分の利益とアプローチを有能に表現していると受け止められていますが、これは特異なことです。彼はいい役者なのですが、時々おかしなことが起こるので、その状態がよくわかります。よく見て、彼の言っていることの本質を読み取れば、1000の矛盾があるはずです。そして、彼は3日ごとに矛盾して、何かを述べ、それを否定し、また述べた立場に戻ってくるかもしれない」
「民主主義国家」ウクライナが、ロシアの言論、教育、マスメディアを禁止、ロシア正教会を破壊!! 現在のウクライナのネオナチがロシア人破壊を宣言したと同様、第二次大戦でバンデラらはポーランド人破壊を宣言!
ラブロフ外相「ワシントン政権は、西側民主主義圏全体を掌握し、民主主義の体現者、象徴となった人物像を構築している感があります。繰り返しになりますが、この民主主義国家(ウクライナ)が、ロシアのあらゆるもの(ロシア語、言論、教育、マスメディア)を禁止し、ロシア正教会の教会を破壊したとき、西側の仲間たちはどこにいたのでしょうか。
バンデラ(※注2)同様、ヒトラーに仕えたウクライナ反乱軍(ヴァッフェンSS『ガリツィア』師団)(※注3)の首領シュケヴィチ(※注4)は、ポーランドの教会を破壊し、『ポーランド人のすべてを破壊し、ポーランド人をすべて殺す』と宣言しました。
今では、ポーランド人ですら、そのことを黙ってみています。ヴォルィーニャの大虐殺(※注5)は、学校の教科書から削除されましたが、その後、シュケヴィチやバンデラのウクライナ反乱軍は、現在のウクライナのネオナチがロシア人の破壊を宣言したのとほぼ同じように、ポーランド人の破壊を目標とすると宣言したのです」
(※注2)バンデラ:
ステパーン・バンデラは、1928年にウクライナ軍事組織の一員となり、翌年ウクライナ民族主義者同盟(OUN)に入党。1933年に幹事長となった。
1935年にポーランド警察に逮捕され、死刑判決を受けたが、第二次大戦でポーランドに侵攻してきたナチス・ドイツ軍により解放された。その後、ウクライナ国家再生宣言を執筆したが、ナチス・ドイツはこれを認めず、強制収容所に送られた。
戦後、ウクライナはソ連に再占領されたため、ドイツに移住し、OUNの活動を管理した。1959年にKGBのスパイに暗殺された。
参照:
(※注3)ヴァッフェンSS『ガリツィア』師団:
第二次世界大戦時、ウクライナ西部のガリツィアからの義勇兵で編成されたナチスの武装親衛隊の第14SS武装擲弾(てきだん)兵師団『ガリーツィエン』のこと。
第一次大戦後、オーストリア=ハンガリー帝国の崩壊とともに、その支配下にあったガリツィア地方(今の西ウクライナ)が、西ウクライナ人民共和国として独立した。
それと時を同じくしてオーストリア=ハンガリー帝国の支配下から独立したポーランドが武力でガリツィアを占領。ポーランドへの抵抗がステパーン・バンデラら、民族主義者が台頭する下地となった。
1939年に、ナチス・ドイツとソ連が独ソ不可侵条約を結び、その付属の秘密議定書にもとづき、まずドイツ軍が西側から、続いてソ連赤軍が東側からポーランド第二共和国に侵攻して分割し(第5次ポーランド分割)、一時的にガリツィアはソ連領土となるが、1941年のナチス・ドイツによるソ連侵攻でナチス・ドイツの占領下となった。
ウクライナの民族主義者らは、ソ連と戦うため、ナチス・ドイツに協力し、1943年に第14SS武装擲弾兵師団が結成された。所属はナチス武装親衛隊だった。
参照:
(※注4)シュケヴィチ:
ロマン・シュケヴィッチは、ウクライナ反乱軍司令官で、ナハティガル大隊の副司令官。息子のユーリ・シュケヴィッチは、ウクライナ国会議員であり、ウクライナ人民自衛官を率いていた。
参照:
(※注5)ヴォルィーニャの大虐殺:
ドイツ占領期の1942年に反独・反ソ・反ポーランドのウクライナ独立を標榜して活動を開始し、その後第14SS武装擲弾兵師団に参加した者も多いと言われるウクライナ蜂起軍の中には、ウクライナ北西部のヴォルィーニャでのポーランドの人民族浄化に深く関わった者もいるとされている。
ポーランド人住民の大半にあたる3万人から6万人にのぼるポーランド人が犠牲となったと言われているが、正確な死者数は不明。
参照:
米軍の軍事援助は毎週8億ドル、7億ドルと増加の一途! そして武器はテロリストの手に!?
インタビュアー「ワシントン政権の思惑から離れ、ビジネスの話をしましょう。
私はこれをどう考えればいいのかわかりません。前代未聞の、私には予想外の規模の、ゼレンスキー政権に対する米国の軍事援助のことです。2週間前に8億ドル(約1030億円)。1週間前にさらにもう8億ドル。現在、国務長官と国防相がキエフを訪問していますが、また7億ドルです」
ラブロフ外相「これはウクライナだけでなく、東欧のいくつかの国も含まれています。キエフには、その約半分が払われました。
インタビュアー「公平ですね。
疑問が生じます。それは何につながるのでしょうか?(中略)ロシアはこれについてどうするのでしょうか? それともモスクワは、戦力均衡の深刻な変化にはつながらないと考えるのでしょうか?」
ラブロフ外相「ウクライナの国境を越えたとき、これらの兵器はどうなるのか、最終目的地はどこか、という質問に対する現在の米軍の匿名の発言をいくつか読んだことがあります。彼らは言いました。『これらの兵器がどこに行くのか、私たちには何の情報もない』。(※注6)
戦車に加えて、装甲兵員輸送車、そしてテロに適した兵器である携帯型対空ミサイルシステムが、何千と供給されています。
何年もの間、携帯式地対空ミサイルシステムの海外への移転の相互通知について、米国との間で合意していたのですが、それは今や何の意味もなくなりました。
この合意により、私たちは最も危険な武器をテロリストの手に渡さないこと、そして私たちもまた、そのような失敗や軽率な行動を取らないことを確認することができていました。
『ジャベリン』は、携帯用ミサイルでもあります。戦車用に設計されたのでしょうが、テロ攻撃にも使えます。これはどこに行くのでしょうか? 強調したいのは、何千何万という単位であるということです。
これまでの経験から、最高司令官に従属しないと自慢している、ネオナチ大隊『アゾフ』、『アイダー』や、ウクライナ軍の中で、特別な、自律した、手のつけられない地位を占めているそのほかの部隊から、この武器が、現在ウクライナに来ている国々に広がっていくことが分かっています。(中略)」
(※注6)『これらの兵器がどこに行くのか、私たちには何の情報もない』:
米国がウクライナへ国境を越えて送り込んでいる対戦車ミサイルや地対空ミサイルなど大量の兵器が「どうなったか確認する方法はほとんどない」と関係者が証言したことを、2022年4月20日CNNが報じた。
CNNによれば、「兵器の一部が米国の意図していなかった相手の軍や武装組織の手に渡る可能性がある」と、米当局者も軍事アナリストも指摘している。
関係者は「短期的な保証はある。だが戦争という霧の中に入ればほぼゼロになる」「短い期間が過ぎれば大きなブラックホールの中に落ち、ほとんど感知できなくなる」と語る。
CNNは「現地に米軍がいないことから、米国や北大西洋条約機構(NATO)はウクライナ政府が提供する情報に大きく依存する情況」だと指摘。
「ウクライナには、自分たちへの援助を増やし、武器の供与を増やし、外交支援を増やす根拠となる情報しか提供しない動機がある」という米当局者の認識や、情報活動に詳しい関係者の「現場に誰もいない状況で把握することは難しい」という証言を紹介している。
特に「携行型のジャベリンやスティンガーは、列車で輸送されるS300のような大型ミサイルに比べて追跡が難しい」とし、「ジャベリンにはシリアル番号が付いているものの、関係者によれば、輸送状況や使用状況をリアルタイムで把握する手段はほとんどない」と述べている。また、ドローン「スイッチブレード」に関しても「追跡は困難」としている。
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