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【総説】GAFA各社のVR/AR戦略【#30】

今日のトピックは「GAFAのVR関連企業買収」について。

こんにちは、こんばんは。
VR/ARの会社・World Maker inc.を設立した大学院生(@iwhododo)です。
VRは注目の高い領域だけに、日々大量のニュースを目にします。
そこで毎日1つだけVRに関連したトピックを取り上げてお届けしています。
※ちなみに選定基準は100%の独断と偏見に基づきます。

毎日更新しているので、ぜひフォローしてチェックしてください。

この記事のまとめ

VR/ARは現状、5Gのキラーコンテンツ
GAFAのアプローチは別々
中国企業や日本企業もVR/ARで進出

5Gのキラーコンテンツ

国内でもいよいよ次世代高速通信「5G」ネットワークの商用サービスが始まりました。その「5G」の要求条件は次の通りです。

高速・大容量 (eMBB)
高信頼・低遅延 (URLLC)
多数同時接続 (mMTC)

これらを活かしたコンテンツのひとつに、VR/ARが挙げられています。
というのも、VR/ARのサービスは、これまでのディスプレイを通じた2次元的な情報表示から3次元的な情報表示を可能にすることで、私たちの情報伝達効率や体験に大きな価値を齎すと期待されているためです。一方で、それらを十分なクオリティに引き上げるためには4K、8Kのような高解像度の映像配信や、「VR酔い」にも繋がる遅延の軽減が必要不可欠でした。

穿った見方をすれば、5Gで起こる革新的な体験にVR/AR以外に目立ったものがまだ見つかっていないのかもしれません。

とはいえ、Google、Amazon、Facebook、Apple、さらにMicrosoftを含むIT業界の巨大企業・GAFAM各社もこぞってVR/ARに力を入れており、それぞれ異なるアプローチでイニシアチブを獲得しようと躍起になっています。

GAFA 各社のアプローチについて

1.Google:Androidを軸にした手軽なAR

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1-1.Google Glass

Google Glassを覚えていますか? 2013年頃から提供されていたスマートグラスです。自然言語による音声操作やミニマリストな外観など、今日のプロダクトに繋がる要素が多く見受けられます。

当時は、フロント部分にカメラがついていることなどから、プライバシー侵害やセキュリティへの懸念が強く提起されていました。ここでも現在とはかなり意識の違う時代だったことが伺い知れます。

一般には普及しなかったGoogle Glassですが、軌道修正をして現在はエンタープライズ向けに設計されたモデルが販売されています。

さらに2020年6月末、Googleはカナダのスタートアップ企業・Northを買収したと明らかにしました。Northはデザイン性にも優れたスマートグラス「Focals」を販売している企業で、今後さらに洗練されたスマートグラスの開発に取り組むものと思われます。

スマートグラスとAR/MRグラスの違いについて
違いは一概に定義づけられませんが、ここでは、スマートグラスは単にメガネなどを介して情報を現実空間に重ねて表示するデバイス。AR/MRグラスはセンサなどを用いて現実空間の距離・物体などを検出してそれに合わせた情報を反映するデバイスと区分しています。例えば、今回のnoteにおいてはGoogle Glassはスマートグラス、Microsoft Hololens(後述)はMRグラスです。

1-2.Google Daydream View

GoogleのVRに関する取り組みについても紹介します。

Google Daydream Viewは、2016年のMade by Googleで初登場した、スマートフォンを利用したVRヘッドセット。Android向けのVRプラットフォームDaydream向けに最適化された製品で、簡易的ではあるもののコントローラーと合わせて360°動画を見るためなどに用いられていました。

しかしながらこれも一般には普及せず、現在はサービスを終了しています。

1-3.モバイルAR

Google Glassにせよ、Daydreamが提供されていたスマートフォンにせよ、その基盤にはGoogleの開発するOS・Androidが搭載されています。現存する多くのVR、ARグラスでも同様です。

先日もGoogleはAndroidのARコンテンツプラットフォーム「ARCore」を積極的にアップデートし、最も汎用性が高く、多くの人々に行き渡るモバイルARの体験向上にも努めています。

VRはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、ARはモバイルを中心として投資や開発が進む潮流にあるため、Androidの今後の動向には目が離せません。

情報の取得を分厚い辞典を開いたり賢人に聞き回ったりするゲームから、検索エンジンによって誰でも手軽にアクセスできるものに完全に転換してしまったGoogle。だからこそそ、本質的には「誰でも手軽に情報にアクセスできる手段」としてのARを今後も推し進めていくと考えられます。

※傘下であるYouTubeについては今回割愛します。

Amazon:民主化による浸透

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今やECサイトだけでなく、世界トップのシェアを誇るクラウドコンピューティングサービスAmazon Web Services(AWS)を提供するAmanzon。

ECサイトではAR試着や家具の試し置きなどを導入し、リアルな店舗の優位性を代替する手段が取られています。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響も大きく、業績は好調です。

さて、数あるAWSのサービスのうちでも特筆すべきは、Amazon SumerianAmazon Lex(Alexa)の2つ。

Amazon Sumerianはブラウザ上でVR、AR、3Dアプリケーションを簡単に作成できるサービス。専門知識は不要で、ユーザーは事前に準備されているデータや自分でアップロードした3Dデータを用いて、ウェブ上でVR/ARコンテンツを作成可能です。初めてでも作りやすい、テンプレートも用意されています。マルチプラットフォームにも対応しており、用途もECだけでなく、教育や研修、マーケティングなど多岐にわたります。

また、Amazon Lexは音声やテキストを使用して、任意のアプリケーションに対話型インターフェイスを構築するサービス。Amazon Alexa に採用されている深層学習技術と同じ技術を利用できるため、短時間で高性能な自然言語処理を実現可能です。

Amazon AlexaはGoogleに買収されたNorthのスマートグラス「Focals」にも搭載されていました。その他にもAlexaは同社が招待者向けに提供した独自のスマートグラス「Echo Frames」や指輪型の「Echo Loop」にも搭載されています。

VR/ARというのは何も視覚に限ったことではありません。
ましてやグラスをかけたりHMDを被ったときだけの体験ではありません。

現状、AmazonはAlexaを中心とした音声サービスに力を入れているように見受けられます。同社は本の朗読サービス・Audibleなども提供しています。
音の強みは映像や画像よりも「ながら聞き」しやすいところ。

いささか強引なきらいはありますが、私見ではAmazonは高価なハードウェア(しかも定期的に新しいプロダクトが出て刷新されるもの)を購入して初めて可能になる体験よりも、その莫大なリソースを提供したり、ハードルを下げたりすることでサービスを民主化し、AR試着と音声ARを通じてライフスタイルに浸透させることを意図している用に見受けられます。

Facebook:ソーシャル形成のためのVR

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Facebookはソフト/ハードの両面において、VRでのニュースが目立ちます。

研究としても、非常に小型なVRグラスのプロトタイプを公開したり、1枚の人物写真から3Dモデルを構築する深層学習フレームワークを発表したりと新しい話題が尽きません。

以前書いた通りですが、特にFacebookはVR HMDを開発するOculusだけでなく、VRゲームの企業買収も顕著です。
これまでに「Beat Saber」のBeat Gamesや「Asgard’s Wrath」のSanzaru GamesといったVRゲームスタジオを傘下に加え、先日は「Lone Echo」がヒットしたVRゲームスタジオのReady At Dawn Studiosの買収を発表しました。

上のnoteに書いた通りですが、そもそもここに、VR戦略などというものは存在しないのかもしれません。Facebookはソーシャル・ネットワーキング・サービスを提供する企業です。すなわち、ソーシャル形成のためのいち手段としてVRが存在しているに過ぎないと捉えるほうが自然に思われます。

Apple:複数デバイスで繋がるAR体験

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Appleは先日行われた開発者向けカンファレンス「WWDC20」にてARへの布石をいくつも散りばめています。

また、かねてより「Apple Glass」と称されるARグラスがリークされ、Google Glassの教訓を活かした一般消費者向けのプロダクトになると期待されています。ARKitやLiDARなどの既存の技術も搭載されるはずです。

Apple Glassをひとつの例としても、既にAir Pods ProやApple Watchなどを通じて身の回りのAR体験を形成しつつあるApple、Apple GlassがどれだけApple愛好家やアーリーアダプターに刺さるプロダクトとなるか期待が寄せられます。

他の企業の取り組み

VR/ARは決して既存の大企業だけのものではありません。
VR領域への投資を行ってきたThe Venture Reality Fund(VR Fund)は毎年カオスマップを公開していますが、その中には上述したGAFA以外にも多くの企業やサービスが含まれています。

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Image Credit: The VR Fund

GAFA各社の取り組みについても今回は日経新聞に取り上げられたタイミングに合わせて浚っただけで、さらに細かく見ていくと面白いかも知れません。中国企業や日本企業の取り組みについてもまた別の機会にまとめます。

我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか

ボストン美術館に所蔵されているポール・ゴーガンの『D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?』(和訳:「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」)。

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Image Credit: The VR Fund

タヒチの鮮やかな黄色は、けれど、ゴーガンが病気と老いに怯え、さらには家族との永い別れを経て孤独が深まっていた時期に描かれた作品です。画面の右から左へ、赤子として生まれる人間の誕生から蹲る老人の死への近づきが時系列で描かれています。ゴーガンはこの作品の完成後に山に入り、砒素を飲んで自殺を試みます。それは未遂に終わったものの、ともすれば「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」という言葉はゴーガン自身の精神的な遺言と言えるでしょう。

私たちも突如として日常が変わり、苦悩や寂寥感にも襲われる日々です。
その中でもGAFA各社はそれぞれの本質に則って未来を描き出そうとしています。老いの恐れよりも前に若くあり続けることで生きていこうとしているのかもしれません。私たちも自らの筆をとり、一度白くなったキャンバスに未来への行程を引きながら、あるいは何度も直しながら進んでいきたいと考えております。World Maker Inc.にご興味をお寄せいただいた際にはぜひ下記のHPよりお問い合わせください。

World Maker Inc.について

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過去のnoteはこちらにまとめています。


会社のみんなとドーナツ食べます。