アズワンはエレファンティネ島の思い出-今までで最高の場所
20代から30代前半の今まで色々な場所に行って、愛着のある場所や感動した場所は色々あれど、「ここに来るために旅行を繰り返したのか」と思えた場所はそんなに多くない。
その中の1つが2023年に行ったエジプトのアズワン(Aswan)。
地名はされど、市内から車で数時間のところにあるアブ・シンベル神殿は有名。
元あった場所が水に沈んじゃうから移動させたんだよね…よく世界不思議発見で見てた。
とはいえ、私がアズワン好きなのはこの神殿があるからではない(神殿も好きではあるけど)。
アズワン、もっと正確にいうとナイルに浮かぶ中洲のエレファンティネ島の、穏やかさと懐かしさと異国情緒が交わったその空気が好き
この時の旅行、エジプトはカイロから南下して、ルクソールにも行ったけど、どこも「チップくれ」「これじゃ足りない」「タクシー!」など騒がしかった。
それが悪いわけではないが、安らぎとは程遠かった。
荷物を持ってくれたり、場所を教えてくれたと思ったら、二言目には「金」。与える者は祝福されるという考え方とか、観光客と地元の経済格差とかは分かるけれども、親切にされても「チップ目当てか」と思うと気持ちが曇った。
そんな疲労困憊の中でアズワン駅に着いたのは夜23時。ナイル川の中洲…エレファンティネ島…のホテルだったので、ナイル川の船着場にタクシーを止めてもらう。
船着場にはホテルのボーイの子がおり、英語はそこまで話せないなれど、重いバックパックを代わりに背負って、ホテルまでの道を歩いてくれた
エレファンティネ島は灯りもまばらで、静かで、細い道が入り組んでいる。夜中で眠り込んでるとはいえ、騒がしく車が飛びかうカイロや、観光客目当ての馬車の臭気が漂うルクソールとは雰囲気が違う。
ホテルに着き、チップ渡さねばと思って用意をしていたら(スマートに渡せない…)、マスターに引き合わせた後にふらふらどっかへ行ってしまう男の子。
あれ!?と思ってこの時はタイミングを完全に逸したけども(私が悪い)、対岸ではいざ知らず、この後もエレファンティネ島では殆どチップをねだられることはなかった
宿のテラス
泊まった宿はここ。
駅などがあるアズワン市内の中心へ行くフェリーの船着場とは逆側。
船着場周辺は賑やかでシーシャを提供するレストランもあり観光地然としているのに対し、こちら側はゆったりとして静か。少し歩くけど、宿泊するにはこちら側の方が絶対に良い。
で、ここのホテルは裏がすぐナイル川に面している。
対岸の丘の上に見えるのは聖シメオン大聖堂。歴史ある修道院。
このテラスから見る風景が本当に良かった。写真映えはしないんだけど…
特に夜。
この時2月、それでも日中は太陽が照りつけて暑いが、陽が落ちれば風が心地良くなる。
夜に1人でテラスに座っていると、虫の鳴く音、ナイルの水音、遠くから微かに届くパーティの喧騒が聞こえる。
見えるのは対岸の船着場の灯りにぼんやり浮かぶ大聖堂の影、おそらくは対岸のパーティか飲みの明かり、それを映して穏やかに揺れるナイルの水面だけ。
…海外旅行に行く理由は多々あれど、思い起こせば、最初に興味を抱いたのは「ルピナスさん」という絵本の中で主人公のルピナスさんがエジプトでラクダに乗る絵だった(ルピナスさんはラクダから落ちて腰を痛めてそれ以降旅行行けなくなるんだけど…)。
でも海外に行っても、自分はその風景の野次馬、あるいは雑音でしかなく、溶け込めていないというのを自覚するだけ、ということも多い。特に有名な観光地は。
この静かなナイルの風景は、私が幼心に求めた異国情緒と、包み込むような安らぎを同時に与えてくれるものだった。
絵本の絵とは違う(あれは真昼間に若い白人のルピナスさんがラクダに乗る絵なので)、でもその絵から感じた「理想」の中に自分が違和感なくいるような感覚だった。
カイロやルクソールは1回行ったら満足かなと思うけど、この島はもう一回戻ってきたい!と思えた。私がカイロに赴任したら四半期ごとに来る。
「海外旅行に行く理由」に戻るけど、私はこういう安らげる場所を自分が見つけた時にいちばん充足感を覚える。
逆にツアーで色々連れ回されて素敵な景色を効率的に回ることができても、楽しくない(色々観て回るなら、非効率で取りこぼしがあって疲れても、自分で色々プラン立てて回る方が好き)。
そんな私にとって、この島、この宿は最高だった。日本から遠く離れた場所でのこの安らぎの瞬間は、一生忘れないだろうなと思う。
島の思い出
島では夕方も昼も、近所の人同士で道端で談笑してる。女性たちは料理の下拵えをしていたり、おっちゃんは夕涼みしながらチャイを飲んでいたり、子供は細い道で走り回ったり。喧騒とは程遠い、ゆったりした生活の時間が流れている。
そんな中を私がぼーっと歩いていると、まあまあ浮くというか、妙齢日本人女性1人は珍しく、小学生くらいの女の子から物珍しそうに声をかけてもらったり、おっちゃんのチャイ談義に混ぜてもらったりもした。
…ルクソールで住宅街をチャリで走ってる時も子供は追いかけてきたけど、そこでも「マネー!ドラー!」と口々に言われたものだ…それが悪いわけではないけど、慣れてないから心情は複雑だった…
チャイに誘ってくれたおっちゃんは島の学校の先生で、「明日学校に来い!」とも言ってくれた。
島の風景
島の家は可愛く彩られていて、歩くだけで楽しい。このヌビアデザインが素敵…もしお土産的な…お皿とか布とかがあったら散財していた。
…というわけで、もし機会があったら是非また行きたい!思いがけず素敵な場所だった。