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あなたの物語、わたしの物語
Netflixのカルチャーについて。
Netflixの企業文化とユーザに対する姿勢には目を見張るところがあり、注目している。
例えば、会員サービスへの考え方。
多くの会員型サービスは解約する手続きが分かりにくかったり、一定期間アクセスしていない会員がいてもサービス側から通知するなんてことは普通しない。
一方、Netflixは一定期間アクセスしていないユーザーへアカウントをキャンセルするか確認して、反応がなければキャンセルしている。サービスを使っていない人から料金を徴収したくないらしい。
次に、障害に対する考え方。
あえてサービスに障害を発生させるサービスを開発し、オープンソースとして公開している。
さらにAWSの新サービスとして追加されている。
カオスエンジニアリングという領域の考え方で、
「本番稼働中のサービスにあえて擬似的な障害を起こすことで、実際の障害にもちゃんと耐えられるようにしよう」という取り組みである。
多くの一般的なシステムに関する考え方は、
「障害が起きたときのために、導入時や定期的に障害テストを実施して復帰できるか試す」
というものなのだが、Netflixが振り切れているのは
「本番システムで障害を起こしてみないと意味なくない?ランダムにどっか障害が起きるツールつくってシステム止まらないか試してみようぜ」
という思想と実行力。クレイジーだが理に適っている。
最後が、公開しているカルチャーブック。これだ。
NetflixはNetflixで働く社員でこうあってほしいという文書だけを公開しルールをつくっていない。
この文書、自分の行動を照らし合わせるだけでテクニック系のビジネス書より遥かに価値があるように感じる。
ちょっと抜粋すると、
・戦略的に考え、自分が何を目指し、また何を意図しないかをはっきりと伝えられる
・変化を楽しむ
・真実を見極めるためには、批判を受けることもいとわない
・仲間について、当の本人に面と向かって言えないようなことは誰の前でも言わない
・仕事をする上で仲間のバックグラウンドの違いを迎え入れ、それがもたらす影響をないものとするのではなく、むしろ積極的に知る努力ができる
などなど。
在りたい姿を書き出すのは簡単だが、Netflixはそれを実践するのが断然難しいことを理解しているのだろう。だから、この文書を公開して自社にこのカルチャーを課しているのだろう。
最後に「星の王子さま」の著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの言葉を引用している。
次の言葉が、私たちの道標です。
「船を造りたいのなら人を呼んで材木を集めさせたり仕事を割り当て命じる必要はありません。代わりに、果てしなく続く海への憧れを説いてやりなさい。」
昔、10年ほど前にShing02が言っていた発言をときどき思い出す。
たしかこんな言葉だった。
「自分の人生を子どもに語るとき、おもしろい物語になるように生きればいい」
これを日々の指針にしている。まだまだ薄っぺらい物語だが。
ビジネスは理屈、損得、効率といった言葉に頼ってしまいがちだ。
本当に大切なのは「それぞれがどんな物語をもって生きていけるか」なのかもしれない。
誰のためにビジネスがあるのか。
それはあなたの物語のためであり、わたしの物語のためなのかもしれない。
ミヒャエル・エンデの「モモ」やサン=テグジュペリの「星の王子様」や「人間の土地」を読み返すと仕事の世界とは別にある物語の世界と感じていたが、自分自身が物語のなかで生きなければと奮い立たされるようになった。
なにとぞ。