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ゲームブック名作紹介:グレイル・クエストシリーズ①
ゲームブックの名作を紹介しています。今回はグレイル・クエストシリーズです。
『グレイルクエスト』の項目数は200前後と、一般的なゲームブックと比較してかなり少ない。ロールプレイングゲーム (RPG) の要素を取り入れようとすると項目数はその倍くらい必要になる。項目数が少ないと、内容が分岐するだけの小説にならざるを得ない。読者が展開の選択権を持つゲームブックは、通常の小説への感情移入とは異った形での「主人公との一体感」をもたらすため、主人公が勝手に行動して読者の意志と齟齬を生む分岐小説は不満を招きがちである。しかし本シリーズの読者は「魔法によって主人公の肉体に宿った存在」とされるため、自主的な行動をとる主人公を俯瞰しても違和感がない。また、結果的にほとんどの項目を読破する構造になっているため、ボリューム不足を感じさせることもない。
項目数の少なさを補うのが、『ドラゴンの洞窟』のストーンマーテン村で用いるような見取り図の存在である。読むべき項目を図の形で提示することによって、「道は東と西に続いている」のような移動のための描写を省くことができる。しかし見取り図と項目を照らし合わせる作業が単調になりがちであるのと、項目の構造を解き明かすパズル要素が失われることから、この手法を取り入れた人気ゲームブック作品は少ない。本シリーズが数少ない成功例であるのは、著者のユーモア感覚によって各場面の描写を読むこと自体が楽しくなっているからである。
分岐小説形式を選んだブレナンだが、ヒットするゲームブックにはRPGの要素が必須であることは承知しており、本シリーズにも忘れず取り入れている。しかし、その要素は未加工で投入されている。たとえば敵との戦闘を回避する「友好反応」や「ワイロ」は無くてもかまわないルールだが、RPGでは交渉が行えるため選択肢に加えられている。『ドラゴンの洞窟』の冒頭では装備品をリストの中から買い揃えるが、実際に役立つ品は多くない。買い物という行為自体がRPGのキャラクター作成時における楽しみのひとつであり、その目的を果たした後はあまり詳しく調整されていないのである。同巻の魔法リストも同様で、一覧を眺めて読者に楽しんでもらうことが第一であり、各魔法の使用に際して精緻なパズル的要素は組み込まれていない。普通ならこのような手法は通用しないが、皮肉とユーモアに満ちた本シリーズにおいては、いい加減さも笑いの種として機能している。
【#ゲームブック 紹介:グレイル・クエスト】「#暗黒城の魔術師」(1985)さあ、じっと座っているんだ……これから魔法をかけるんだから。 いずれわかる。わしがもう何百年も前に死んでいるということもな。この魔法は手間がかかる。そう、この本が魔法そのものというわけだ。https://t.co/dLQ1YwCTtf pic.twitter.com/J62y3iZX7I
— IWASAWA@TOKYO (@IWASAWA_Koichi) August 3, 2021
【#ゲームブック 紹介:グレイル・クエスト】「#ドラゴンの洞窟」(1985八月の雨は、ドラゴンが子を生むのに最適だ。大量のドラゴンの子が翌年大きくなり、暴れまくり、大変な災いがもたらされる。使者が「もっとも兇暴な真鍮のドラゴンが地獄より逃げだした」と告げた……。 https://t.co/0kuUzSaJLC pic.twitter.com/hotFz1SGxe
— IWASAWA@TOKYO (@IWASAWA_Koichi) August 4, 2021
【#ゲームブック 紹介:グレイル・クエスト】「#魔界の地下迷宮」(1985) これなるは魔法の書なり。ひとたび開くことあらばたちまち時をはるか越え、伝説の息づく地へゆかん。先で待つは冒険の定め。旅の途上で命を落とすか功をなしとげ凱旋するか、覚悟をもってのぞむべし。https://t.co/8LdNcwqmX3 pic.twitter.com/OnrfEKkXbq
— IWASAWA@TOKYO (@IWASAWA_Koichi) August 5, 2021
【#ゲームブック 紹介:グレイル・クエスト】「#七つの奇怪群島」(1986)消えたアーサー王の秘剣エクスカリバーをもとめてピップは不思議な航海に旅立つ。謎にみちた海図をたよりに奇怪な七つの島で手に入れる〈黄金の鍵〉が意味するものは…? https://t.co/bFQQ2pWw4C pic.twitter.com/yPiKAdsHZ1
— IWASAWA@TOKYO (@IWASAWA_Koichi) August 6, 2021
(了)
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