#私を構成する5つのマンガ:人、命、宇宙、科学、歴史、戦争、運命、未来、力、友情、勝利、超越、英雄、ユーモア
5つだけ挙げるならば、「火の鳥(未来編)」(手塚治虫)、「アドルフに告ぐ」(手塚治虫)、「AKIRA」(大友克洋)、「風の谷のナウシカ」(宮崎駿)、「キン肉マン」(ゆでたまご)が、私を構成するマンガです。
私を構成しているぐらいですから、幼少期、特にマンガを読み始めた小学生の間に出会った作品ばかりになります。個人的なセレクションです。
人生の初めのころ、これらのマンガから私が学んだことは、「人」として「命」にどう向き合うべきか。広くて遠い「宇宙」の片隅で生きるわれわれが、「科学」と向き合い科学技術を発展させてきた「歴史」には、いつも人と人とが殺し合う「戦争」があったこと。人はそんな「運命」に抗って、よりよい「未来」を切り拓こうと「力」を尽くし、また「力」を求め、「友情」に育まれて、「勝利」をようやくつかむ。多くの人や大きな壁を「超越」した存在と出会い、また対決して、自分自身をも超越した「英雄」になっていく。そして、その凱旋ロードは「ユーモア」で彩られていることです。
火の鳥(未来編)
「火の鳥(未来編)」の主人公の山之辺マサトは、ひとりの人として、地球上の命すべてに向き合うことになります。科学の力を手に入れても、命の尊さを忘れて、戦争で自滅した人類。同じ歴史を繰り返すナメクジを見守る、遠い未来のマサトは人を超越した存在になります。新しい人類が現れて、努力し、自分に勝利し、壁を乗り越えて外の世界に出ていくとき、英雄になった者は、人や地球、小宇宙も超越した火の鳥に出会うことになります。
アドルフに告ぐ
「アドルフに告ぐ」は三人のアドルフの運命についての話です。ナチスドイツの思想に染まって、人の尊い命を冒涜するようになってしまうアドルフ・カウフマンとユダヤ人の幼なじみ、アドルフ・カミル。恐怖とプロパガンダによる大衆の洗脳で、超越者に自らをなぞらえ力を求めるアドルフ・ヒトラー。ヒトラーの親衛隊として英雄気どりだったカウフマンとユダヤ人として神戸で生き抜いたミゲルは戦後、パレスチナで対峙する運命にありました。殺し殺される歴史を生き抜き、死力を尽くした戦いに最後は勝利したアドルフも負けたアドルフも、戦争で運命を狂わされた人生でした。最後には命を大事にできなかった勝者に、英雄の輝きも、望んだ未来もありませんでした。
AKIRA
「AKIRA」の舞台は連載当初の1982年にとっての近未来2019年、ネオ東京。この宇宙にある、科学を超越した、まだ人が理解できない「力」を使ったアキラによって一度は崩壊した町で生き抜く、命知らずな不良少年の金田。「力」を手に入れた幼なじみの鉄雄との友情を頼りに、鉄雄を食い止めるべくもがき迫るも、歴史は繰り返し、東京はまたも崩壊。アキラの力を制御できる英雄として崩壊後の東京で群衆に祭り上げられた鉄雄は、自らに戦争をしかけてくる軍隊を「力」でしりぞけるも、アキラに取り込まれて消失。金田は生き残り、鉄雄にも、「力」に飲み込まれる運命にも勝利し、新しい東京をまた、改造バイクで疾走していく。
風の谷のナウシカ
「風の谷のナウシカ」の主人公は、科学の力を過信した人みずからが造り出した戦争兵器によって滅びた世界を生きる少女、ナウシカ。命の尊さ、世界の真実をみなに伝えようと、もがき苦しみ、人ならざる蟲との共生の道をさがして生きます。蟲とこころを通わせる人を超越した「力」で世界の真実を知るナウシカは、英雄として祭り上げられるために勝利することではなく、民衆や蟲、巨人、世界に寄り添う道を選びます。自分の弱さや「正体」の秘密を抱えて、命と向き合いながら、未来に向けて歩んでいきます。
キン肉マン
「キン肉マン」の主人公は人間ではなく超人の、キン肉マンこと本名、キン肉スグル。ズッコケながらも努力し、超人の力をぶつけ合い、敵と戦い勝利し、仲間の超人や敵とさえも友情を育み、だんだん英雄、スーパーヒーローになっていきます。いままでの自分を超越したような新しい敵と何度も死闘を繰り返して、過去の自分をさらに超越していきます。超人の長い歴史のなかでも異端児として、ときに神々との戦争や宇宙から飛来した敵にも勝利して、自らの運命を切り開いていく、ギャグとユーモアにあふれた、プロレス系格闘マンガです。
「キン肉マン」で登場するほどメインなテーマではありませんが、手塚治虫さんのマンガはギャグやユーモアにあふれていますね(あっちょんぶりけ)。「火の鳥(未来編)」や「アドルフに告ぐ」でも、ユーモアによってシリアスが対比され、人や世界がより立体的なストーリーになっています。「AKIRA」の「健康優良不良少年」たちのやりとりや、「風の谷のナウシカ」の軍人クロトワのひょうひょうとした生き方には、ユーモアがあります。ちりばめられたユーモアは、重厚長大なこれらのマンガセレクションの登場人物のストーリーを、より人間味あふれるものにしています。
子供の魂百まで
「人」「命」「宇宙」「科学」「歴史」「戦争」「運命」「未来」「力」「友情」「勝利」「超越」「英雄」そして「ユーモア」。小学生だった私に5つのマンガが教えてくれたこれらのテーマは、これから待ち受ける人生の広さや深さそのものだったと思います。私の人生の大事なイントロダクション、そのための5冊の教科書が「火の鳥(未来編)」「アドルフに告ぐ」「AKIRA」「風の谷のナウシカ」「キン肉マン」でした。
子供の魂百まで。私の原点で出会ったこれらのテーマと、大人になった私はいまも、向き合っています。
山之辺マサト、アドルフ、金田、ナウシカ、キン肉マンに、あらためて深く感謝。この記事を書き終えた後でまた、会いに行きます!
作品の紹介
「火の鳥(未来編)」は手塚治虫さんが1967から68年にかけて書いた作品です。COM誌に掲載されました。火の鳥シリーズ11話の第2作目であって、時間軸としてはもっとも未来、最終話にあたる作品です。以下、関連リンクです。
「アドルフに告ぐ」も手塚治虫さんの作品です。1983~1985年にかけて週刊文集で掲載されました。週刊文春から「徹底的にシリアスな大河ドラマ」をとのリクエストを受けて書かれました。以下、関連リンクです。
「AKIRA」は大友克洋さんの作品です。1982から1990年にかけて週刊ヤングマガジンに掲載された作品です。私はマンガよりも先に、アニメでAKIRAに出会いました。以下、関連リンクです。アニメの4Kリマスター版が出ましたね。
「風の谷のナウシカ」は宮崎駿さんの作品です。1982から1994年にかけてアニメージュに掲載された作品です。こちらもマンガよりも先に、私はアニメで出会いました。以下、関連リンクです。
「キン肉マン」は1979年から1987年まで週刊少年ジャンプで掲載されたプロレス系格闘マンガです。作者はゆでたまご。2011年から週プレNEWSで連載を再開しています。以下、関連リンクです。
(了)