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リアルスケール・プロトタイピング(=実寸大で試行錯誤してみよう)のススメ

岩沢兄弟・弟のたかしです。今月もコラム担当させていただきます。

去年、登壇させていただいたデザインカンファレンス「デザインシップ」、第2回の開催が決まったそうで。おめでとうございます。今年は、国際フォーラムなんですね。規模もさらに大きくなり、楽しみです。

さて、そんな開催決定の報を受けて第1回のデザインシップでお話しした内容を振り返りながらのコラム。

(▼第一回の様子は、まとめてくださっている人がいるので、こちらをどうぞ。)

「これくらい」のズレが、「使われない空間」の悲劇を生む

私が前回、デザインシップでお話したテーマは「リアルスケール・プロトタイピング」でした。わかりやすく言えば「実際のサイズで試行錯誤してみよう」ということです。どういった場面で有効なのか、というところも含めて書き進めてみたいと思います。

「これくらいの感じで」って、空間設計がスタートすること、ありませんか?

例えば、大きめの会議室。

「30人くらいのイベントできそうな。ちょうど“この部屋くらい”かな」

なんて、一言からスタートしたプロジェクトがあったとします。

だけどそれぞれの思っていた「これくらい」が、実際の寸法になるまでズレていて、空間に必要な機能が実装されず、結局使われないスペースになったり…..。

最初の「これくらいの」のすれ違いが悲劇を生み出すことがあります。

そんなことあるの? と、思われるかもしれませんが、結構あると思いますよ。

みんなで触っても良いもの(=模型)を会話の中心に置く

一般的に、空間をデザインする際は、図面で初期の提案を行ってから、CGイメージパースを制作して、提案~承認~詳細設計~制作という流れが多いと思います。

イベントブースのデザインなどでは、イメージパース先行という場合もあるかもしれません。

岩沢兄弟の場合は、あまりCGを作ることは少なく、早い段階で簡単な模型を作ってプロジェクトチーム内での意思統一をすることを心がけています。

テクノロジーで解決できる?

ちなみに。

「CGを極力使わずに模型を使います」というとデジタル嫌いと思われるかもしれませんが、そんなことはなく、デジタルテクノロジーを活用したアプローチも大好きですよ。

VRやARなどによって、実際のスケールで体感することができる仕組みは整ってきていますし、MR(Mixed Reality)などは、土木・インフラ工事の現場などで活用されはじめはじめています。

大規模工事や構造まで視覚化したいもの(配線や配筋のルートなど)については、VRやARの有効性は高いです。

けれど、それらテクノロジーを「空間のプロトタイピング」で使えるかというと、現時点では疑問が残ります。

人や荷物の収容能力、通路計画や照明のシミュレーションなど設計者視点でのプロトタイピングは、デジタル空間に置き換わって行くでしょう。

けれど、空間にものを配置してみた際の、同じ空間にいる人に与える影響については、実際に置いてしまった方が、はやく違和感に気づけます。

「それぞれの頭の中にあるスケール感には、大きなズレがあること」を認識するためには個別体験という一人称視点では、共有しにくいのです。

ここから、VR空間におけるスケールとは何か?ということも考えてみたいのですが、ここの掘り下げは、また改めて。

徳島県「やぎう坐」の現場ではビールケースで壁や棚を実際に作ったり

神津島のプロジェクト拠点づくりでは、スケッチを元にイメージを共有して


▲ビールケースで実際に使える縁側をプロトタイプしました。

「実際に作っちゃえば良いじゃん」のハードルを下げる

さて、話は再び「リアルスケール・プロトタイピング」へ。

図面もCGも模型も重要。だけど、それらを使って話し合い続けても、おそらくズレの認識に至るのは難しい。なら、リアルスケールでプロトタイピングしちゃったほうが良いじゃないか。実寸の家具を作っちゃおう。

そこを起点にして、みんなで空間の構想を考えたらいいじゃないか。そこから考えようよ。

ということをデザインシップではお話ししたのでした。

▲「WAKUGUMI」のプログラミングをしてくれた堀川淳一郎さんと一緒に

それを実現するために岩沢兄弟が開発したツール「WAKUGUMI」は、デジタルテクノロジーを用いて簡単に家具パーツを作成することができます。

(現在は、加工のしやすさや再利用のしやすさなどの面も考えて3層段ボール「トライウォール」を使ってのサービス準備を進めています)

まとめ。目指すのは…「誰だ?こんなところに棚を置いたのは! 使いやすいじゃないか!」

「空間デザインのために、プロトタイピングをしましょう」と言っても企業においては、プロジェクト予算を割り当てて、会議をして、ゴール設定をして、という流れがほとんどだと思います。

オフィスにおける空間設計の場合、ゴールの多くは「部署間のコミュニケーションの促進」であったり「集中しやすい環境づくり」のはず。

そうであれば本当に必要なことは、試行錯誤して解決方法を探りながら進めることです。そのために、実寸で家具のプロトタイプを作り、実際の空間に設置してみて、運用してみる。使われ方を観察してみる。そのフィードバックを全体のプランに反映させて行く。

というリサーチフェーズに繋げることこそが大事です。

図面や模型で考えながら、実際の空間にプロトタイプしたものを配置してみることで、空間への手がかりが現れて来ます。

目指すのは「誰だ?こんなところに棚を置いたのは!使いやすいじゃないか!」

そんなに簡単には、いかないかもしれませんが。「これくらいの棚が欲しいなぁ」と思ったら、まずは作ってみて、みんなで使って一緒に検討してみる。たとえばそういうところから始めてみませんか。

作りながら考えるツールとして「WAKUGUMI」を活用してもらえるとうれしいです。

WAKUGUMIについてはこちらから(個人利用は無料です!)

(いわさわたかし/岩沢兄弟)


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