命は一番大事か?

最近Twitterってのを私も始めましてね。いや、あれはなかなか慣れませんね。一度あのTwitterの文字数一杯に書いたら「長くて分かりません」とコメントが付いた。長いって言ったって、あのTwitterの文字数内ですよ。それが長いと言われると、私なんか困っちゃいますね。あれは俳句か何かの世界なんでしょうか。

ってそんなことを書くつもりじゃなかった。そのTwitterで新型コロナはこうやって収束させるんだ、と言うこのノートのページにリンクを貼ったら、

「人命が第一と言う考えのどこが絵空事?コロナ感染をゼロにするのは不可能だから人が死んでも仕方がないと?人が死ぬのは避けられない。だから自粛なんかやめて経済を回せなどと言う残酷な考えが現実的だとでも言うのですか?」とまあ凄いけんか腰のレスが付いたんです。そこで「絵空事なんて誰も言ってないだろうが。現実にはこういうやり方をするんだと教えただけだ」と答えたら、

「ではどんなに厳しい現実があろうと人命は他に変えられない。第一だと言う考えには賛同していただけるんですよね。上から目線の発言は嫌われますよ、ご忠告」と来たもんだ。なんだかけんかっ早い人だなと思ったのだが、この発言に一斉にいいねやリツイートが付き始めた。所謂「バズる」ってやつですか。

それで以下のように順々に返信を付けた。Twitterってのはこういうのを書くには向いてないね。短文しか書けないから、ちょっとずつ区切って書くしかない。ここではそれじゃ読みにくいから、纏めて書きます。

その問いに正面から答えるのは難しい。私は高齢者医療が専門だが、しばしば年寄りが拘束、つまり縛られている。前の病院で3年間手を縛られたままの92歳の老婆がいた。彼女は鼻から栄養の管を入れられていた。彼女が縛られていたのは、その経鼻経管を抜くからだった。私は彼女の嚥下反射を調べたが、やはりかなり反射が遅く、そのままモノを食べさせたら誤嚥するのは明らかだった。そこで私は管から半夏厚朴湯と言う漢方薬を一ヶ月注入した。すると一ヶ月後、嚥下反射は正常化し、彼女は92歳には十分な栄養を口から取れるようになり、管は抜け、当然抑制も外せた。これがきっかけで私は一年以上管が入って拘束されている人14人に管と拘束を外せないか試みたら、7人は外せて7人は外せなかった。これは短いながら英論文にしてある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7586527/

その後私は職場を変わり、今の病院の副院長になった。この病院では経鼻経管は行わず、口から食べられなくなったら単純な点滴だけして看取ることになっていた。だがそれでも多くの患者が拘束されていた。その理由は転落だった。多くの患者が、ベッド柵を越えて降りようとして転落し、足を骨折するからと抑制されている。私はその一人を見て、とてもベッド柵を越えられないのではないかと思い、起きて床に降りて、と声を掛けた。すると驚いたことに、寝たきりにしか見えなかった人が柵につかまり、ついには起き上がって床に立とうとした。だが当然しっかり立てるわけではないから転ぶ。確かに危ない。ベッドじゃなくて床にマットを敷いたらと提案したが、それでは看護介護スタッフの腰がたまらないと言う。

ちなみに私は老健の施設長もしたことがあって老健では抑制、拘束は違法だ。だから拘束しないが、その代わりしょっちゅう皆ベッドから落ちる。落ちて大腿骨頚部骨折、つまり足の骨を折る。一度折れた人の家族が怒鳴り込んできたことがあったが、入所時に書面でそう言う事故があっても受忍するという契約書を交わしてあったので助かった。

この問題は、今のところ解決が見つからない。一般の人は稀にしか見ないかもしれないが、私にとっては日常だ。それを目の前にして、命こそ一番大事だと私は自信を持って言い切ることはできない。

とまあここまで書いたら、相手へのリツイートが止まり、向こうは黙っちゃった。炎上は消し止められたわけだ。でもTwitterって狡いね。相手に敵わないと思うと黙っちゃうのね。やっぱり私はああいうのは好きじゃないよ。

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