労災都市石巻

これまで心療内科で職場のパワハラなどをさんざん診てきて「石巻の労働環境はどうもおかしいのではないか」と感じていたが、それを裏付ける数字がなかった。ところが先日、職場の労働衛生に関する講習会(事業者かあるいはその代理が出席を義務づけ)に当院事務長として相方が出席し、驚くべき話を聞いてきた。

去年一年間宮城県で労災事故と認定された7件の内6件が石巻だったというのだ。労災事故というのは、ほとんどが事故外傷である。作業中の事故で怪我をすれば、職場も労災として届け出ざるを得ず、結果的に労災は外傷がほとんどを占める。しかし本当は例えば発熱外来をやっている医師である私が一月にコロナに罹ったというのも、立派な労災だ。休んでも給料は私だけでなく全職員に全額出すと経営者が約束したから労災申請はしなかったが、事実上は労災だ。「7件の内6件」というのは氷山の一角であり、実際はその割合で事故以外の労災や私が診ているようなパワハラによる精神的障害も起きているという事だ。

確かに石巻は港湾都市で作業現場が多いから事故は起きやすいかもしれない。しかしたかだか12万人しか人口がない石巻が100万都市仙台を圧倒して労災が多いのだ。これは異常だ。そしてそれとほぼ同率で本来なら労災と認定されるべき精神的災害も多いのだという私の読みは、これでほぼ証明されたと言って良い。

これはとんでもないところに来てしまったが、事態がこうである限り、ここで引き下がるわけにはいかない。心療内科だろうが精神科だろうが産業医外来だろうが名前は何でも良いが、ともかくここで私が石巻の精神的労災を診なければならない。

断固引き下がらない。

https://www.ayumino-clinic.com

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