コロナの五類変更について

発熱外来をやって300人以上のコロナを診断治療した医者として発言します。コロナの5類変更は「やむを得ません」。よい、悪いではなく、「やむを得ない」のです。


まずオミクロン株の感染性の強さです。家族の誰かが陽性に出たから一応症状はないが検査してくれ、と頼まれて検査すると、ほとんど陽性です。もし一時の中国のように国民片っ端から検査したら、今発表されている数の数十倍の陽性者が出るでしょう。人間が社会生活を営みながらこの流行を抑えることは不可能です。理解して欲しいのですが、この世には善いことと悪いことの他に「どうしようもないこと」があります。オミクロンの感染を防ぐ手立ては、事実上ありません。どうにもならないのです。

二番目はオミクロン株の重症化のしにくさです。ちょっと鼻水が出るから検査してくれと言われて検査すると陽性です。「ちょっと鼻水が出る」人を7日間隔離する意味があるとは、私には思われません。「ちょっと鼻水が出る」患者をN95マスク漬けて隔離室で検査する光景は、ほとんど喜劇です。

三番目は昨今の中国の状況です。中国は厳格な管理が失敗に帰し、「盲動とでも慣れ」というような完全放置に切り替えました。その結果、中国全土で数億人が感染したとも言われます(正確な統計はないのですが、14億人の少なくとも過半数が感染したとみるのが妥当、と言うのが疫学関係者の意見です)。その結果、中国は確かに一時代混乱に陥りました。しかし一ヶ月経ってみた今は、中国社会は落ち着きを取り戻しています。確かに、6万とも言われる犠牲者が出ました。しかしその大半は、既に寿命に達した高齢者でした。コロナで死ななくてもいずれ何かの理由で死ぬはずの人々が死んだのです。その犠牲を払った結果、中国人は集団免疫を獲得しました。放置政策に出て一ヶ月あまり、中国における感染は明らかに収束傾向にあります。投げやりな政策ではあったけれども、結果は吉と出たのです。こんな大規模な臨床研究は医学史上初めてです。参考に値します。

以上の理由から、私は五類変更止む無しと考えます。


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