帰り道
マスクを外して走った夜の自転車の帰り道は、街の匂いを久しぶりに感じ、嬉しくなった。
骨伝導イヤホンから流れる、chill outなミュージックと合わさって、エモエモな雰囲気を醸し出していた。
いつもと同じ帰り道なのに、ゆったりとした時間が過ぎているような気すらした。
街からは、新築のアパートの匂い、夜の独特な草木の匂い、車の排気ガス、夜中まで干されてる洗濯物の柔軟剤の匂い、五感の一つをマスクに奪われて過ごした日々は、匂いを感じられるその時間を奪われていたように思えた。
小さい頃、お香の様な、線香の様な、匂いがする親戚の家の匂いを、街中で感じた時があった。
「この匂い、知ってる!!」
嗅いだ瞬間に親戚の家の記憶が流れ込んできた。
匂いから記憶が呼び出されることを鮮明に覚えているのは、その時があったからだ。
マスクのせいで、楽しかった日々の記憶、悲しい思い出、その時感じるはずだった事を記憶出来なかったと思うと、悲しくなった。
匂いと一緒に、普段イヤホンをして街を歩いている事が多いからか、外の音もよく耳に入ってきた。
日付が変わりそうなこの時間、好きだなって思った。
この時間を長く感じて居たいと思い、帰り道から外れてちょっと寄り道しながら帰った。
匂いも音も大事だね。
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