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寒おこし日記|8日目(三浦)

 こんにちは、そこに居るために 三浦雨林です。
 今日は1月23日。
 東京に戻ってきて、早5日目、え、5日目?
 日記とは何なのか…という感じですが、記録のためのテキストなのでという言い訳と共にまだまだお送りいたします。
 ぜひ最終日までお付き合いください。


8日目

ワークショップ

 1月15日。
 「居るためのワークショップ」当日。
 悠加さん主体のWSは何度も実施しているので、私の仕事は事前にプレWSを体験し、素直なフィードバックをすることのみ。私自身もお客さんとして普通に参加してみました。

畳の上に、様々な角度で4枚の付箋が貼ってある
おすすめの居方を付箋に書いて共有するワーク
「肌触り 対角線で空間を見れる」と書かれた付箋が畳に貼ってある。
「肌触り 対角線で空間を見れる」
「隅に背中をくっ付ける そして体育座り」と書かれた付箋と椅子の上にパソコンが乗っている絵が、部屋の角に貼ってある。
「隅に背中をくっ付ける そして体育座り」
「欄間の下の柱?なんとなくつかみたい ぶらさがりたい」と書かれた付箋が欄間に貼ってある。
「欄間の下の柱?なんとなくつかみたい ぶらさがりたい」
「酔ったとき ここのヘリに座るとよい」と書かれた付箋が、窓のヘリに貼ってある。
「酔ったとき ここのヘリに座るとよい」
「ここに立つ つまさきをつけて立つ 目の前に宇宙、キラキラ 右を見てもキラキラ」と書かれた付箋が床に貼ってある。
「ここに立つ つまさきをつけて立つ 目の前に宇宙、キラキラ 右を見てもキラキラ」
「おしいれ ドラえもん やってみたい」と書かれた付箋が襖に貼ってある。
「おしいれ ドラえもん やってみたい」
「しゃがんで外を見る 内側の明かりが見えなくなるまで顔をガラスに近づけると外の景色がよく見えるよ」と書かれた付箋が、窓枠に貼ってある。
「しゃがんで外を見る 内側の明かりが見えなくなるまで顔をガラスに近づけると外の景色がよく見えるよ」
「こたつに入る 足のあたたかさと 背中のあたたかさと 人の気配を感じる 安全地帯にいる気持ち」と書かれた付箋がこたつに貼ってある。付箋の前の座布団に猫が座っている。
「こたつに入る 足のあたたかさと 背中のあたたかさと 人の気配を感じる 安全地帯にいる気持ち」

 我々が行うWSの多くは主にアーティストに向けて設計されるので、今回は使う言葉や順番なども再考が必要だった。組み立て直した結果、うまくいった!と大手を振って言えるわけではないが、参加者がリラックスして取り組める環境づくりは出来ていたと思う。ただ、それは我々だけの力ではなくて、参加してくださった方々やシェアハウスとも家自体の性質が強く影響していて、改めてこの家と地域の懐の広さ(と臆さぬ姿勢?)に脱帽したのでした。

 また、会場(というかシェアハウスのリビング)には13日に実施した「居心地を考える」ワークもそのままにしてあったため、空間に対する人の眼差しがかなり蓄積されてきた。
 私のワークは「居心地を観察する」というテーマで、①自分自身の居心地を認識するワークと、②空間を客観的に観察するワークの二本立てで実施した。
 抽象的な自分の気持ちに向き合う時間と、具体的な空間へのアプローチという二つの視点から居心地を観察することによって、広がりのあるワークになっていたと思う。特に、前者の①「自分の居心地を考える」ワークは、思いがけずチームで協働する方々に受けてもらいたいものとなった。
 「自分の居心地を考える」ワークは、"自分にとって居心地がよい状態・状況"を言語化し絵画にするもので、元々は自己理解に役立つのではと思い設計したものだった。しかし、実際は自己の観察結果を共有することによって、自己理解と共に、他者理解への道が拓けるようなワークだった。

風景画のような絵と、猫が描いてある絵がガラスに貼ってある。
自分の居心地を考えるワーク

 上記のように、完成した「自分の居心地」の絵をワークの最後に共有する時間を設けた。絵の下に貼られているタイトルのようなものは、各人の居心地の良さに必要な要素で、"安全・動いているものがある"(左 宮本)、"やわらか・あたたか・ひとり"(右 三浦)と書かれている。
 それぞれの居心地の良さに必要なものがわかることによって、居心地の悪さに繋がる要素も浮かび上がってくる。具体的な状況を逐一共有するのではなく、感覚そのものが共有されることによって、より深い他者理解が思いがけず可能になった。実際、このワークを行なってから、宮本と三浦はお互いの居心地を、具体的な事故が起きる前に気遣うことが出来ていたように思う。

 下記の写真は②空間を客観的に観察するワーク。紙に描かれたさまざまなものたちの居場所を与えてみるというもの。ポイントはただひとつ、自分がしっくりくる場所に配置せよということのみ。

ガラスに家の絵が貼ってある
家の居場所
壁掛け時計の横に集合写真を撮っている人たちの絵が貼ってある。
集合写真を撮ってる人たちの居場所
襖に扇風機の絵が貼ってある
扇風機の居場所
大きなゴリラのぬいぐるみに赤ちゃんの絵が貼ってある。
赤ちゃんと「ぬ」の居場所
スピーカーを持つ手の絵が欄間に貼られている。
スピーカーを持つ手の居場所
椅子に座る人の絵が障子の飾り木に貼ってある。
座る人の居場所

 悠加さんのワークは身体と空間という物理的なアプローチから、私のワークは主に気持ちの感覚的なアプローチから"居る"を考えるものになった。ようやく二つ目の視点が生まれて、少しだけ"居る"理解へ近づいたような気がする。
 私のワークも回数を重ねてブラッシュアップしていければいいな。

ガラスにワークで使用した絵がたくさん貼ってある。写真中央に猫のたびが座っている。
猫は居心地の良い場所を見つける天才

晩御飯

 シェアハウスとも家に来た初日、食材の買い物に行くと「まぁ、夜ご飯はなんとなくみんなで食べることが多いかな〜」と言われた。私は「え、家でなんとなくみんなで食べることなんかあるか?」と思っていたのだけど、だんだんその意味がわかってきた。シェアハウスとも家は、その言葉通り、なんとなくみんなでご飯を食べられる場所っぽい。ここまでの日々、きちんと約束をしたわけではないのに、なんとなくで誰かと夜ご飯を一緒に食べている。気を使ってくれていたのもあるだろうが、それでも多くの場合の"自宅"ではあり得ないペースで、住人以外の人がここでご飯を食べている。

 ただ、珍しく(?)この日は約束してみんなで晩御飯を食べる日だった。元住人のゆき姉がシェアハウスとも家で作られたお米で、おにぎりなどを作ってきてくれる、記念すべきパーティ。私は鱈とサメの鍋を作ったが、宍倉さんもゲンギョの鍋を持ってきてくれて、鍋被りをした(なんとなくで持ち寄るので被ることもあるよね)。

塩握り、味噌握り、納豆巻き、いなり寿司、たくあん、梅干しなどが写っている。全てゆき姉の手作り。
塩握り、味噌握り、納豆巻き、いなり寿司、たくあん、梅干しなど、全てゆき姉の手作り
宍倉さん作のゲンギョの鍋。ゲルに見えるゲンギョが写っている。
宍倉さん作のゲンギョの鍋(右下のドゥルドゥルしたものがゲンギョ)

 私の鍋の写真はなかった。
 自分が作った料理の価値、低くなりがち。

 とも家米は本当に美味しかった。みんなは「素人だから〜」と言っていたけれど、普段食べるのには十分すぎる美味しさだった。なにより、自分たちで作ったお米ということ自体に特別なものがあると思う。

 ここに集まる人たちは、少なくともこの食卓を一緒に囲んだ元住人の方々は、ただの友達・ルームシェア仲間というのではなく、もっといろんなものを一緒に経験していて、友達よりも近くて、家族よりも遠い、なんといえばいいのかわからないけれど、ゆるい共同体に近いのかなと思い始めてきた。先日の米詰め作業に引き続き、お米に対する姿勢を見ていて、改めてそう感じたのでした。

 満腹になり、美味しい日本酒で盛り上がったところで、そのままにしていたワークショップの付箋にゆき姉が興味を持ってくれた。

たびのマネをして猫耳をつくるゆき姉の写真
たびとゆき姉
障子を指差して、ゆき姉とたびに自分が気に入った居方を説明する家主
ゆき姉とたびに自分が気に入った居方を説明する家主
電気の紐に書いてあった「居方のポイント」を実践するゆき姉。紐を触ろうとしている。
電気の紐に書いてあった「居方のポイント」を実践するゆき姉

 部屋に誰かの視線が蓄積されていくことは、時間が視覚化されて残っていくということ。
 誰かがここに居て、去っていく。その繰り返しの中でたまたま私もここに来て、誰かが居た時間を想像する。やがて私も去っていき、また誰かが訪れる。あらわれて、居て、いなくなる。うまれて、生活して、しぬ。

 昨年フルスペックで展示をした『土地も家の中に居る』で行なっていたことも、今考えるとそのようなコンセプトになっていた。よくよく考えると、5年前そこに居るためにとして初めて行なった実験も、ただ数分間止まってみるというものだった。思えば我々の取り組みには、常に"時間"が組み込まれている(そしてそれはその時無意識な場合もある)。
 私たちが"居る"を考える時、"時間"が重要な要素であることはわかった。ここからは、それがどうして重要なのかを紐解いていくことになりそうです。ひとつステップ。

家主に頭を吸われている猫のたびの写真
家主に吸われるたび

 後追い日記、読んでくださってありがとうございます。
 最終日の分まで書き切りますので、どうぞよろしくお願いします。
 それではバイナラ

1月23日 下高井戸の喫茶店にて
三浦雨林

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