齋藤陽道さんとドッグレッグス

大きな失恋をして、当時住んでた千駄ヶ谷をフラフラと散歩していたら、ワタリウム美術館の前を通り、たまたまやっていたのが齋藤陽道さんの写真展だった。写真のなかの光や淡い色に、擦り切れてボロボロだった心が潤うのが分かった。あの時は本当に助かった。

その6年後。今の職場である図書館で手に取ったのが『声めぐり』。齋藤さんの文章は理路整然としていながらも生々しくて感動的で、またもや私を潤す。感覚を言語化するうまさ。書き手としてもこんなにすごいなんて、なんて人だ。

その中で、齋藤さんが写真を始めるきっかけとなったと紹介されていたのが『無敵のハンディキャップ』。障害者プロレス・ドッグレッグスの旗揚げからその後までを描いた話だ。冒頭、リングシーンから始まる。"肉の弾ける音“"骨があたる音”が聞こえる。一緒にリングに立ち、戦っているかのような臨場感。うー痛い。でも血が湧く。

私は、相撲の次にプロレスが好きだ。「相手への愛がないとできないスポーツだ」と友人が教えてくれた時からイメージが変わり、東京にいた頃は詳しいお姉さまに連れられて何度か観に行った。客席の温度がダイレクトにリングに伝わる感じ、選手たちのキャラの立ち方、汗、肉、血、声、どこまでも生々しい世界。

本の中では、選手個人のエピソードも丁寧に描かれているので、感情移入してしまう。日本にはびこる闇も浮き彫りにされる。健常者とは?障害者とは?老いとは?家族とは?テーマが目一杯詰まってるんだけれど、読み終えた後は不思議な爽快感の残る本だった。これまた、すごい本に出会えた。

ちなみに齋藤さんも「陽の道(ひのみち)」というリングネームでドッグレッグスに参加しているのだそう。どこまでも多才な人だ。観に行かねば。

声めぐり
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SP/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033794178&Action_id=121&Sza_id=C0

無敵のハンディキャップ
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SP/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033843026&Action_id=121&Sza_id=C0

障害者プロレス ドッグレッグス
http://doglegs.a.la9.jp/

写真家 齋藤陽道
http://www.saitoharumichi.com/

#これいいよ

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