小さなお子さんのいるご家庭の【災害対策】
こんにちは。
岩間こどもクリニック 院長の岩間義彦です。
今回は<小さなお子さんのいるご家庭の【災害対策】>について記載します。
日本は地理的な特徴から、災害が多い国といわれています。
台風、地震、洪水など、災害が身近で起きたときに備え、各家庭でどんな対策をしておけばよいでしょうか。
想定する災害の種類や発生時期によって、必要な対策は異なります。
また、家族構成によっても必要な対策は変わってきます。
ご高齢の方がいらっしゃるのか、持病をお持ちの方がいらっしゃるのか、あるいは小さなお子さん(赤ちゃん)がいらっしゃるのか。それも考慮しておく必要があります。
さらにいえば、水道や電気・ガスなどライフラインが損傷したご自宅での生活を想定した対策と、避難所生活を想定した対策も違います。
このように「災害対策」といっても範囲が広く、すべてを網羅しようとすると一冊の本でもとても書ききれません。そこで今回は、乳幼児を含めた『小さなお子さんのいる家庭の災害対策』にテーマを絞り、小児科医の視点から書いていきます。
【事前の災害対策について】
災害で危険が身近に迫ったときに必要な「避難用の持ち出し袋」の中身についてです。
小さなお子さんのいる家庭では一般的な避難用セットに加えて以下のものを用意しておくといいでしょう。
・おむつ、おしりふき(最低3日分)
・赤ちゃん用のミルク(常温で保存可能な液体ミルク+哺乳瓶+紙コップ)
※哺乳瓶が洗えないときは、紙コップを使用することができます。
※液体ミルクの缶にアタッチメントを付けて授乳ができます。
・食べなれた離乳食(アレルギーを考慮)
※使い捨てカイロで液体ミルクやレトルト離乳食を温めるという方法もあります。
・幼児用の食器類
※消毒や殺菌ができない時のための紙皿・紙コップ・小さなスプーン
・着替え
・小さく折りたためるアルミ製のプランケット(防寒対策に)
・使い慣れているおもちゃや大好きな絵本
・子ども用口腔ケア用品
・ビニール袋
・常備薬/バンドエイドの大中小/体温計
※常備薬と体温計については後で詳しくふれます。
・保険証/母子手帳/お薬手帳+「子ども医療費受給者証」(乳幼児医療費受給者証など自治体によって名称が異なる)などのコピー
・子どもひとりひとりについて名前・年齢・既往症など必要事項を書いた医療カード(首から下げられるようにしたもの)
【喘息への備えについて】
災害現場では、ホコリが舞い上がる劣悪な環境が予想されます。災害になれば必ず喘息の発作が起きると考えて、喘息のお子さんがいらっしゃるご家庭は次のような対策をしておくことが重要です。
・二週間分の喘息発作止めを備蓄しましょう。
・エアゾールタイプの発作止めが使えない小さなお子さんのために、電動吸入器の電源を確保します(災害時に使用できるように練習しておくことをお勧めします)
・マスクと水分補給用の水を十分に備蓄しておきます
電動吸入器には、家庭用の100V電源に対応するものや乾電池で動くものなど、いろいろなタイプがあります。100V対応の吸入器を使っているご家庭では、クルマのシガーライターの12Vを100Vにしてくれる「インバーター」と呼ばれる装置があると安心です。
また、充電式の乾電池と充電器、小型ソーラーパネルの組み合わせも何かと役に立ってくれます。
【風邪対策について】
次に「風邪」への備えをしておきましょう。
避難所のように環境が変わると、特に小さなお子さんは風邪を引きやすいものです。
軽い風邪は次のような備えをすることで、診療施設が開設されていなくても対処できます。
・10回分の熱冷まし薬を備蓄しておく
・市販の咳止め薬を備蓄しておく
熱冷ましは市販薬の、例えば『小児用バッファリン』などを、パッケージを開けずに避難用の持ち出し袋に入れておきましょう。また、熱冷ましと咳止めは体温計とセットにしておくと便利です。体温計は腋の下で計るタイプが正確でお勧めです。
【下痢・嘔吐対策について】
小さなお子さんはお腹をこわしやすいので、次のような備えをしておくと診療施設がない場合も当座の対処ができます。
・市販の整腸剤(例えば、ビオフェルミン)を備蓄しておく
・吐き気止めの座薬(例えば、ナウゼリン)を備蓄しておく
ここでいう整腸剤は、一般的に下痢止めとして売られているものではありません。
下痢は腸内に溜まった悪い菌やウイルスを体内に排出してくれます。
それを止める下痢止めは、基本的に子どもには飲ませない方がいいのです。
吐き気止めは口から飲むタイプもありますが、小さなお子さんの場合は座薬が便利です。
それでは次に、小さなお子さんのいる家庭の「災害対策」についてママ・パパからの質問にお答えしていきましょう。
【①災害時に活用できる「子どもの応急手当」について教えてください】
覚えておいてほしいものは「止血」の方法です。
我が家の子どもたちには、幼い頃からこう言い聞かせてきました。
「出血したら、まずは患部をしっかりと押さえてね」
清潔な布で出血している部分を押さえるのが理想です。
しかし、災害にあったとき清潔な布があるとは限らないので布なら何でもいいです。なければ指先や手のひらでぎゅっと押さえるだけでも効果はあります。
ひどい出血であったとしても、押さえている間は止血することができます。
その後の対応については、止血対応をしながら考えましょう。
【②避難生活や災害後などの、子どもの精神状態が心配です。チェックポイントがあれば知りたいです】
東日本大震災のとき、多くの子どもたちがADS(急性ストレス障害)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)によって不眠になったことが報告されています。
これらのストレス障害は、生死に関わるような体験をした後、その記憶が自分の意志とは無関係にたびたび思い出され、辛くなって発症します。
お子さんがストレス障害になっていないかのチェックポイントは、まず体重の大幅な増減があるかどうかです。
一カ月程度の期間で、2キロから3キロの幅で体重が増減していた場合、ストレス障害の可能性があります。
もうひとつのチェックポイントは、体の見えないところに傷がないかどうかです。
ストレスが原因で、皮膚を掻きむしることがあります。
思春期以降のお子さんの場合は、ストレス障害によって自傷行為に及ぶことがあるので気をつけてあげてください。
ご不安なことがありましたら、ぜひ小児科医に相談してみてください。
今回の記事は以上です。
いつもご覧になっていただき、ありがとうございます。
育児に向き合うママ・パパの参考になりましたら幸いです。
岩間こどもクリニック
院長 岩間 義彦
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