【観光コラムKITENE~IWAKURA~】「白って200色あんねん。」じゃあ紺色は?まち歩きのテーマは無限大
1. はじめに
わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。岩倉市は、愛知県の北西部、西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は日本の「さくら名所100選」に選ばれたお花見処で、毎年春に行われる“岩倉桜まつり”が有名です。そんな五条川の桜のような、すでに観光地として認識されている名所に行くことだけが観光ではないという考えから、日々まちの新しい観光資源を探しています。
今回は、【小さな疑問がまち歩きのテーマになる】というお話です。
2. 5年ぶりの桜まつり
2024年、春。岩倉市では5年ぶりに「岩倉桜まつり」が開催されました。新型コロナウイルス感染症の影響で中止されていた桜まつり。お客さんは以前のように戻って来てくれるのだろうか?そんな心配をものともせず、いざおまつりが始まると、川沿いは昼も夜も、開催をまだかまだかと待ち望んだ人でいっぱいになりました。わたしは今年から新しく企画された、市内の夢さくら公園でのミニSLイベントを担当しており、メイン会場の「お祭り広場」にはあまり行けなかったのですが、おまつり特有の熱気に、岩倉の桜の底ヂカラを見たような気持ちになり、嬉しく、そして誇らしく思いました。
「岩倉桜まつり」のお楽しみの1つである、五条川での「のんぼり洗い」のデモンストレーション。
「のんぼり洗い」とは、鯉のぼりの糊落とし作業のことで、毎年大寒のころから始まる、岩倉市初春の風物詩です。この伝統的作業工程を受け継ぐのは、市内に2軒ある幟屋さんです。
そのうちの1軒「旗屋中島屋代助商店」さんで、今年の桜まつり期間中、おもしろい取り組みが実施されていました。店を舞台に撮った短編映画を、店のギャラリーで無料で上映するというもので、映画を目当てに来店した方はもちろん、ふらっと花見でいらしたお客さんも立ち止まって映画を見ていました。
上映されていたのは、短編映画「花浅葱」。(読みは「はなあさぎ」)
アラフォーのわたしにはちょっと恥ずかしくなっちゃうような恋の始まりを描いたものでした。
映画の中では、タイトルにもなっている「花浅葱」をはじめとする日本の色、しかも「紺色」にスポットを当てています。
映画を見ながら、
「花浅葱」と「浅葱」が違うのか?そりゃ名前が違うんだから多少は違うだろう。紺色って何色?アンミカさんは「白って200色あんねん」って言ってたなあ(笑)
「花浅葱」が具体的にどの色かを事前に意識せず映画を見たので、もしかして自分にもっと色の知識があったら、あれがあれか!と楽しめたのかなあ、という思いが頭をよぎり、ストーリーに集中できません…。
あ!映画はとっても良かったです。描写の美しさだったり、出演した職人さんの演技がびっくりするぐらい上手くて。俳優のオファーがきちゃうんじゃなかろうか、と妙な心配をしてしまうほどでした。
3. 気になったら調べる→調べることも全部楽しむ
さっそく映画のタイトルになっていた「花浅葱」について調べることにしたのですが、ネットで調べちゃうのは勿体ないし(簡単に答えが手に入ってしまうかもしれないのがなんだか寂しいです)、せっかくなので図書館で色の図鑑を借りてみました。
浅葱はありましたが、肝心の花浅葱は残念ながら載っていません。
続いて、市内のスーパーの文具コーナーで色のシールを購入。
お目当てのたくさんの「紺」。「花浅葱」も発見。
紺色以外にもたくさんの色があることが分かりました。
シールを台紙ごとに分け、リングに通して表を作りました。
6才になる娘と、作った表を持って市内を歩いてみました。花や草、公園の遊具など、表と照らし合わせながら色をさがしてのまち歩き。いつもの景色も少しだけ違って見えているようです。
娘に感想を聞くと、「ぴったりの色をさがすって、難しいね。」とのこと。
難しいから楽しい、難しくてすぐに分からないから、今よりもっと深く知りたくなるんです。
4. まとめ 日常の小さな疑問がまち歩きの彩りとなり、まちの魅力となる
冒頭にも述べたように、“五条川の桜並木”のような、いわゆる観光地に行くことだけが観光とは思っていません。
桜や城跡、遺跡などの名所・史跡だけではなく、そこに住んでいるまちの人や、まちの人の作るおいしいもの、まちの人がよく出かけるお散歩コースなど、 みんなの“好きなこと”が観光になり得るのです。
一見、観光とは関係ないのでは?というようなものでも、視点を変えれば観光資源になります。観光のためのまちづくりをするのではなく、まちづくりのために資源を磨く。固定観念を捨て、気になったことは何事も調べ、面白がって楽しみながら体験して自分のモノにする。そうすれば、まちあるきのネタ、つまりは観光のネタは尽きることはない、と実感しています。こうしたことの積み重ねが、観光まちづくりの可能性をどんどん広げていってくれるのではないでしょうか。