【観光コラムKITENE~IWAKURA~】 ケッコーな湯加減で♡「名古屋コーチン」の入浴剤を開発した話
1.はじめに
わたしは、愛知県岩倉市で観光まちづくり事業を企画・運営する「NPO法人いわくら観光振興会」で働いています。岩倉市は、愛知県の北西部、西尾張地区にあり、市のほぼ中心を流れる五条川は「日本のさくら名所100選」に選ばれたお花見処で、毎年春に行われる“岩倉桜まつり”が有名です。そんな五条川の桜のように、すでに観光地として認知されているような名所に行くことだけが観光ではないという考えから、日々まちの新しい観光資源を探しています。
今回は、2021年12月1日に市制50周年を迎えた岩倉市が取り組んだ“岩倉を訪れた人がお土産として購入したくなる新しい名産品の開発”を目指す「いわくら名産品開発事業」に、『いわくら入浴剤』で挑んだ弊会のお話です。
2. 祝!市制50周年。岩倉市が新しい名産品を開発するってよ。
市制50周年を盛り上げようと、市は数々の周年記念事業に取り組みました。その中の1つが、お土産として買いたくなるような、新しいまちの名産品づくりに取り組む「いわくら名産品開発事業」でした。
自分たちが考えたモノがお土産として商品化でき、さらに行政のお墨付きがもらえる!こんな機会はそうそうない。ワクワク♪ということで、早速、市が開いた「いわくら名産品開発事業」事業所募集の説明会に参加しました。そこに出席していた事業所のみなさんの顔ぶれを見て、私は「これは食べ物の応募が多くなるに違いない」と予想をたてました。というのも、飲食店の事業所さんが多かったからです。
“もしかしたら食べ物以外だと選考を通過する確率も上がるかも~。とにかく、他の事業所さんが絶対に作らないものを作りたい・・・!“
そこで思いついたのが、3歳の長女がハマっていた入浴剤。当時、我が家では入浴剤は “チリチリ”という独特のあだ名で呼ばれており、毎回お風呂に入るのを渋る娘の入浴を促す特効薬として使われていました。「色が変わったね!」「いいにおいがするね!」とテンションはMAX、効果は抜群!そんな姿を見て、岩倉のオリジナルの入浴剤を作ったらプチギフトとして喜ばれるかも。と思い、この事業にピッタリでは?と職場で提案しました。
しかし市内には温泉はおろか、銭湯さえありません。「そんなものお土産になるの?」という声もありました。そこで、入浴剤のテーマになる岩倉らしいモノはないか、と考えてみることに。
愛知県岩倉市は名鉄名古屋駅から特急で約11分。都市部にアクセスしやすいベッドタウンで人口約4万8千人。冒頭でも書いたように岩倉五条川の桜並木は有名です。
桜の入浴剤かぁ~!いいじゃん♪でもそれだけじゃありきたりだな。もう1つなにかセットで販売するとしたら・・・
“名古屋コーチン”!!キミに決めた!(笑)
3.岩倉市と名古屋コーチン
岩倉市内には人工ふ化場があり、名古屋コーチンは市の特産品にもなっています。他にも名古屋コーチンに関わる事業所で興された「岩倉市名古屋コーチン振興組合」があり、“地鶏の王様”名古屋コーチンの素晴らしさを市内外に伝えています。
テーマは岩倉自慢の名古屋コーチンに決めた!
名古屋コーチンの入浴剤を作るなら、香りはどんなものがいいだろうか?
まずはじめに考えついたのは「鶏小屋の香り」。
今ではほとんど無くなってしまいましたが、昔の岩倉市は養鶏が盛んで、まちのそこら中に養鶏場があったそうです。その当時の風景を彷彿とさせるような、藁の香りに混じったフンのにおいって、田舎のにおいとして温かい感じがしておもしろいんじゃないか?
しかし、事前に企画案を見て話を聞いてくれた関係者のみなさん全員が大反対(笑)体を綺麗にするところでフンのにおい漂わせてどうするの?と叱られてしまいました。
ごもっともな意見で作業は振り出しに…。
“名古屋コーチン”と“香り”をどう結び付けたらいいかを悩んだ末、私はその食べ方に注目することにしたのです。
4.ひきずり鍋
“ひきずり”とは、尾張地方で主にすき焼きのことを言います。岩倉市でも代表的な郷土料理で、名古屋コーチンを丸ごと1羽使ったコーチンの代表的な食べ方の1つ。しょうゆ風味が特徴で、市内の飲食店で提供されています。
“名古屋コーチン”自体は、日本3大地鶏としてその名は全国的に有名ですが、“ひきずり”自体の認知度は低く、鶏の食べ方としてまだまだ可能性を秘めていると思っています。
“ひきずり”のにおいにすれば市の特産品と郷土料理の両方をPRできる、こうして新たな特産品の誕生となりました。
5.名古屋コーチンの入浴剤作りの苦労はここから
さて、テーマは決まったのですが、商品作りはここからがスタートです。まずは、こんな入浴剤を作ってくれる会社を探さなければなりません。
いくつかの入浴剤メーカーに問い合わせをしたところ、予算などの兼ね合いもありますが、多くが既存の香りや調合済みの入浴剤から中身を選択して、パッケージのみをオリジナルデザインとして商品を製造する会社でした。
そこで、ショッピングセンターや雑貨店で売っている入浴剤ギフトを改めて調査。どんなものが売っていてメーカーはどこか、などと調べていくと、某雑貨屋で食品をテーマにした入浴剤に出会いました。そこで製造メーカーに早速連絡。コンセプトの説明をすると、名古屋方面に用事があるので~と、フットワーク軽く会いに来てくださることに。
そこから、色と香りの開発・選定が始まり、開発者さんの調合してくれた香りを確認しながら作り上げていきました。あ~でもない、こ~でもないと、わがまま放題に試作をお願いしてしまいました。本当に感謝しています。
一方、商品パッケージのデザインも重要なポイントであると考えていました。はじめは岩倉市PR大使である「い~わくん」をデザインしたものを想定していましたが、お土産としては少し気取ったようで、なおかつ岩倉市の特徴を伝えられるものがいいなと考え、写真を使用したパッケージの作成に変更しました。当時弊会でアルバイトをしてくれていたデザイナーさんにお願いして、何度も何度もデザインを作り直しました。
なんやかんやで商品化までたどり着いたところで、なんと商標登録の問題が発生!
詳細は省きますが、この問題が解決するまで生産はストップしてしまいました。
最初の製品が納品されたのは、お土産を考え出してからほぼ一年後でした。ふう…。
6.まとめ 極論、入浴剤は売れなくてもいいからホンモノ食べてー!
製造してくださった会社の担当者さんも「こんな依頼は初めて」と手を焼いた名古屋コーチンの入浴剤。わたしとしては、もうできないと思ったことが形になって、とにかく嬉しいという思いと、達成感でいっぱいです。
商品を見た方からは「どんなにおいなの?」「パッケージがユニークだね」などと声をかけてもらって、まさに狙い通りの反応で、正直ホッとしています。
市内の方はもちろん、市外の方も、ひきずり鍋をまだ食べたことがない方にも、まず入浴剤を使ってお風呂に入ってもらって、ホンモノのひきずり鍋を食べに行ってほしいです。いや、やっぱり、極論。入浴剤は売れなくてもいいからホンモノ食べてー!(笑)
いわくら入浴剤 2個セット価格:¥500(ケース付き) ※バラ売り可 各¥250
岩倉市役所1階 岩倉市観光情報ステーションで販売中
●いわくら観光振興会グッズページ
【メディアで紹介されました】
●新聞掲載
2021年11月22日(月)中部経済新聞
2021年11月24日(水)朝日新聞朝刊
2021年12月 1日(水)中日新聞尾張版朝刊
●テレビ
2021年11月26日(金)NHK総合まるっと!
2021年12月7日(火)中京テレビキャッチ!
2021年12月15日(水)中京テレビストライク!
●その他
Yahoo!ニュース掲載
【 この記事を書いた人 】
木村 さや香 (Kimura Sayaka)
NPO法人いわくら観光振興会 人事教育長/イベント企画制作
1986年生まれ。岩倉市在住。1児の母。岩倉市PR大使い~わくんのアテンド"鯉のぼり恋子"としても活動。「観光資源は自分たちでつくることができる」をコンセプトに、市内の農家や商店、消費者をつなぐ企画を提案している。