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【Life is Baseball】エナジック投手兼任コーチ・西村憲、沖縄の地で奮闘中! 〜新天地・沖縄編〜

元阪神タイガース投手・西村憲。2010年には、リリーフとして65試合に登板するなど、一軍でも結果を残した右腕だ。

しかし、ケガなどの影響もあり2014年オフに戦力外通告。NPB復帰を目指し、BCリーグで3年間プレーしたのち、2018年から現在所属している沖縄の社会人チーム「エナジック硬式野球部」の投手兼任コーチとして、新たな野球人生をスタートさせている。

福岡出身の西村にとって、沖縄は阪神一軍春季キャンプ以外では縁のない土地。再出発の決め手はなんだったのか?

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「BCリーグでの3年間を終えて、次へとなったとき、いくつかオファーをいただきました。お話をいろいろと聞かせていただきましたが『コーチで』という話が多かった。その中で、エナジックは『まだプレーをしてほしい』と、おっしゃってくださり、プレーヤーとしての比重が大きいと感じました。そういうところが大きかったと思います」

当時31歳。選手としてまだまだやれるという思いがあって当然だろう。その考えに理解を示してもらえたことで、投手兼任コーチとして新天地での活動をスタートさせた。初めてのコーチ業に不安を抱えての沖縄入り。ただ、チームに合流した時には、その不安を超える不安に直面することとなった。

「実際に選手たちを見たときに『これで勝てるのか?大丈夫かな』と、正直思いました。僕は投手コーチだったので、投手陣を見たのですが、簡単なノックのゴロもうまく捕れなかった」

元NPB選手に見られるということで、選手たちに多少緊張はあったかもしれない。しかし、西村が見てきた野球との大きな違いに、正直驚きを隠せなかったという。

「だからこそコーチという部分で、かなり頑張らないといけないと思いました」

投手として、自らも投げながらではあったが、西村はそんな彼らとしっかり向き合う決意を固めた。

しかし、初めてのコーチ業。確固たる指導論を持っていたわけではない。誰かに相談することはあったのか。

「やはり自分が経験したことを、僕の口から僕の考えで言わないとダメだと思ったんです。人から聞いた話だったら必ず行き詰まると。当時、話を聞いてもらうことはありましたが、指導する上では、自分の感性を大事にしました」

基本的な技術指導はもちろん行う。その甲斐あって、当初の不安は解消されて行った。そんな中、西村が自らの経験から、必要性を感じて取り入れていったのが『自主練習』の時間だった。

「時間いっぱいメニューを組むことはできるんですが、出されたメニューで終わりでは成長していかない。結局、選手自身が自分に何が足りないかを見つけていかなければいけないんです。自分で考えてやる練習時間で、選手個々に差が生まれてくる。やはり普段から頭を使う癖がある選手は、土壇場でも考えて対処できると思っています」

野球は特に不確定要素の多い競技だ。普段から考える癖がついていれば、それぞれの状況に対して、考えて、予め準備し、対処できるようになるというわけだ。

ただ選手任せにするわけではない。どういう考えで、どういう練習を行うのか。その様子を遠くからしっかり観察することも忘れない。

「コーチの目を意識しないような状況で、自らの意思でしっかり行動できているかを見ています。しっかり行動できる選手は、大事なところでやってくれる、ピンチの場面で切り抜け出す方法を考え出せる力があると思っているので、そこは大事にしています」

やるもやらぬも自己責任。実践するのは簡単かもしれないが、コーチ陣が選手たちを信頼していないとこの関係は成り立たない。

その信頼に選手たちもしっかり応えていると感じさせたのは、自主練習の時間ではなく、ノック前のキャッチボール。距離、投球間隔、ボールの強さが投手ごとに違い、個々が明確な意図を持って、1球1球を投げており、それぞれが自らの考えを持って、取り組んでいる様子が窺い知れた。

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ここ最近はコーチ専任に近い状態という西村。コーチに専念する時間も必然的に増えているが、その中でもうひとつ大切にしているのが「見る」ことだ。

「投手だけでなく、野手からも質問などを受けるのですが、そのためには普段から見ておかないと、ちゃんと答えることができない。だから、投手に限らず、野手の練習もしっかり見ています。あとは単純に興味があるというのもあります」

この話を聞いた時、元西武ライオンズ編成部長、故・根本陸夫氏が、当時西武二軍投手コーチに就任した森繁和氏に「1年間、見とけ」(高橋安幸著「根本陸夫伝」より )と言われた話を思い出した。

縁のなかった沖縄の地で、誰に教わるわけでもなく、この考え方に行きついたと聞いた時にはとても驚いた。それだけ西村が、野球と、選手たちと真摯に向き合い続けてきたということだろう。

NPBという多くの野球人が目指す舞台から離れたことで、野球に対する視野も大きく広がった。

「現役で投げている時は『自分のピッチングさえ良ければ勝てる』と思っていたんです。自分と向き合って、周りが見えなかった。でもコーチになって、俯瞰で野球を見たときに、いろいろな発見があって『ああ、なんでこれ、現役の時に気づかなかったんだろう。これに気づけたら、今でもいいピッチングができていたんじゃないか』と。離れて見ることの大切さっていうことがわかったんです。」

実際に物体を見る時、近くで見れば見るほど、その物体がなんなのかわからない。離れてみることで、その物体を初めて認識することができる。絵画などに例えるとわかりやすいだろうか。

「現役をやっている時って、一直線に野球にぶつかっていく感じでしたが、俯瞰でみるようになって、いろんな謎が、問題が浮かんでくるんですよね。ぽんぽんと。それの答え合わせをしているような感じです」

そう話す姿は、6年前に石川や草薙でみた彼とは違い、本当に野球について考えることを楽しんでいる様子だった。

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チームの目標は、6月の「社会人野球日本選手権」と11月の「都市対抗野球大会」本戦への出場。そして一つでも多く勝つこと。

そこを目指して、チームは日々練習する中で、ただ見ている時間も増えてきた。こちらが何かを言わなくても、選手たち課題を見つけて、自発的に取り組んでいる。

「理想は教えないことだと思います。本当にどんどんうまくなっていますよ。昔は選手たちが小さく見えましたが、今は堂々としている。一人ひとりの選手が、どういう選手だっていうことがわかるようなブランディングができたかな」

ここ数年、大会では結果を残すことができなかった。自信を持って挑んだ5月の社会人野球日本選手権は九州予選1回戦で大敗。そこから立て直し、心身ともに強くなったチームは、無敗で都市対抗一次予選を突破。9月28日から福岡で行われる二次予選に駒を進めている。

都市対抗野球大会・本戦の舞台は、かつて西村が、巨人を相手に投げた東京ドーム。再びその人口芝を踏む姿を、私は期待したい。

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