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【独立リーグ】9月7日 神奈川フューチャードリームスvs.茨城アストロプラネッツ

こんにちは、岩国です。ついこの間まで、強い日差しが照りつけていたと思ったら、今週はすっかり秋模様。人の都合に関係なく、季節は巡っていくんだなと感じています。

球団発足以来、追い続けている琉球ブルーオーシャンズ。先月は大きなアクシデントに見舞われていましたが、今月に入り、松尾大河選手、倉内凱之投手、二宮衣沙貴投手の3名が、BCリーグ・茨城アストロプラネッツへの派遣という、明るい話題が入ってきました。

「チームが活動休止の中、NPBドラフトやトライアウトへ向けて、試合出場の機会を与えたい」という清水監督の要請を茨城APが受諾。リーグの了承を得て、3選手はBCリーグのシーズン終了まで、実戦で力を示す機会を得ることとなりました。

合流初戦となった9月5日から、松尾大河選手は出場。第一打席でヒットを放ったほか、今季初の三塁守備でも好守を見せていました。

今回は合流3試合目。倉内凱之投手が先発した9月7日の試合について、つれづれと。

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秋風が吹き抜ける横須賀。少し肌寒い夜となったが、グラウンドでは白熱した試合が繰り広げられた。

その立役者のひとりとなったのは茨城アストロプラネッツの先発・倉内凱之。今月に入り、琉球ブルーオーシャンズから派遣されてきた大型右腕だ。

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【画像】先発・倉内凱之投手。この試合が茨城APでの初登板となった。

初回は不安定な立ち上がりを攻められた。先頭打者にヒットを許すと、送りバントで1死2塁で3番・ナッシュ。アウトローへのスライダーを当てられ、ライト線へのポテンヒット(2塁打)で1点を先制された。

しかし、その後のピンチは、4番・カレオンをスライダーでセンターフライ。5番・工藤はアウトコースへのフォークで三振と、最少失点で切り抜けると、2回・3回は制球も安定。身長189cmを活かした高いリリースポイントから繰り出されるストレートと、縦に大きく曲がるカーブ。そのカーブより10キロほど速い縦のスライダーを使い、各バッターを抑えていった。

4回。先制タイムリーのナッシュと2回目の対決では、全球ストレート勝負を挑むも、インコースをバックスクリーンへ運ばれた。ナッシュはこの一発を含め、今季ここまでリーグトップの12本塁打。自ら望んでの力勝負といったところだろうか。

少し疲れが見えた6回、先頭打者に対しストレートのフォアボール。ここで琉球の同僚でもあるサード大河が声をかける。次打者はここまで2安打1ホーマーの3番・ナッシュ。いいタイミングだ。

3回目の勝負は、外角低めのカーブを引っ掛けさせた。高く弾んだハーフバウンドがサード大河の前へ。落ち際をグラブで捕球し、素早くセカンドへ。併殺は取れなかったが、ここまで打たれていたナッシュから、確実にアウト1つを重ねた。

4番・カレオンの打球が、後ろに下がっていたセンターをライナーで襲う。しかし、懸命に前進したセンター・安田が、ダイビングキャッチ。倉内の粘投にバックも守備で応えた。

この回までかと思われたが、7回も続投。2アウトからヒットを許し、1番・青木と4回目の対戦を迎えるところで交代。あとを受けたリリーフふたりがこの回を抑え切り、倉内は6回2/3、93球、2失点。先発としての役割を十二分に果たした。

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【画像】交代を告げられた倉内投手。内野手全員とハイタッチ。微笑ましいいい光景だった。

琉球球団は8月中旬、チーム内でのコロナ感染が発覚。沖縄での主催試合も2試合目以降は中止となり、緊急事態宣言が明ける予定の9月12日まで、チーム活動自粛を発表。派遣3選手はコロナ感染がなかったというが、十分な練習環境ではない中、難しいコンディション調整が強いられていたことは想像できる。

数字に残った投球内容もさることながら、そうした環境下で、この1チャンスにしっかり照準を定め、結果を残してみせることができたというのは、精神的な強さがなければできないことではないか。

NPBのスカウトの眼にどこまでそれが見えているかわからないが、もともと札幌日大の時点から、ドラフト候補に名前が挙がっていた投手。そういう部分を含めて、大きく化ける可能性を秘めているのではないかと改めて感じさせられたマウンドとなった。

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松尾大河選手は3試合連続サードで先発出場。初戦の5日は7番、2戦目からは2番での起用。この日もヒットを放ち、打順に関係なく3試合連続安打を記録した。8月の九州遠征から、打撃に無駄な力みがなくなっていたが、状態の良さは続いているというところか。

守備でも、詰まったハーフバウンドの処理を無難にこなし、清水監督が「かなり改善した」という送球も安定。琉球では全試合ショートでの出場で、サードはなかったが、サードの方が送球も安定しているように見えた。この後も攻守に期待したい。

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【画像】二塁打を放った松尾大河。ここまで3試合連続安打と結果を残している。

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試合は1点差の9回表、5番・山中の二塁打を起点に、茨城が2アウト1・2塁を作ると、代打・植田の高く上がったフライをショートが捕球できず。その後の打球処理をもたつく間に、1塁ランナーもホームに還り、3対2で逆転勝利を収めた。

記録はヒットとなったが、神奈川先発・乾投手も8回途中1失点と好投。最後投げていたサイドスローの伊藤投手も、速球とスライダーのコンビネーションで2アウトまで漕ぎ着け、最後も打ち取った打球だっただけに、もったいないプレーだった。

スタンドでは、お母様であろうと思われる方が、観戦されていた。登板時には人一倍大きな拍手を送り、抑えたときにも声は出さずに強い拍手を送っていた。そしてピンチには息を飲み、黙して見守る。寒いのだろう、両手を擦りながら、小刻みに体を震わせていた。

そして失点の場面では、天を仰いで、大きなため息をひとつ。茨城寄りで見ていた私だが、最後は神奈川寄りの視点で、試合を見ていた。

ここで当たり前のことに気がついた。自分の子の挑戦を支え、応援し続けているこうした親御さんは選手の数だけ存在するのだと。

独立リーグに集まる選手たちのすべてではないと思うが、若年層の多くは、日々悩み、もがきながら、大きな夢への道に繋がっていると信じて、自身と戦っている。

沖縄で取材を受けていただいた元阪神投手で現在、社会人チームの投手兼任コーチを務める西村憲さんがこんなことを言っていた。

「どんな環境であれ、自分を信じて、NPBを目指している人間をバカにするようなことは絶対にできない。頑張ってほしい」

目指すところの高さを考えれば厳しい意見も必要だが、その言葉は血の通ったものであるよう、努めていきたいと改めて思った横須賀の夜だった。

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【あとがき】
最後に書いた神奈川の伊藤塁投手。シーズン当初は練習生契約だったようで、BCL選手名鑑にも詳細が載っていない投手。チーム事情はわかりませんが、そこから試合に出られる契約まで上がってきたのは努力しているというのもあると思います。

実際の投球は「右の宮西」というイメージを持っていただければと思いますが、インサードへ142キロのストレートで見逃しを取ったあと、同じコースから曲げてくるスライダーで空振り三振を奪ったり、定石どおりに右打者の外スラもいいところに決まったりしていました。

再現性の点が課題になりそうですが、悪くなかったので、そのお母さんにも「いい投手ですね」って言いたかったくらいです。

琉球を入り口に、ただただTVの仕事をしたり、NPB球団を取材するだけでは、気付けなかった多くのことを学ぶことができていることに、本当に感謝したいと改めて思いました。

みなさんに頑張って欲しいです。



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