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【独立リーグ】琉球ブルーオーシャンズ 取材雑感 〜8月16、17日 試合中止〜

まだパソコンが当たり前じゃなかったときならば「正直、筆が重い」というところだろう。

様々な困難を乗り越えて、ようやく実現した琉球ブルーオーシャンズの沖縄県内主催試合。それが、このような形となってしまうとは、誰が想像しただろうか。

いや、おそらく想像することを避けていただけだったのかもしれない。

旗揚げ戦となった昨年2月末の巨人3軍戦以来、およそ1年半ぶりとなる県内での主催試合。無観客とはなったものの、使用球場がある市町村の自治体と、協賛企業の協力を得て、8月15日からの3連戦を開催できる運びとなり、3球場で九州アジアリーグの大分 B-リングスを迎え撃つこととなった。

15日は、広島が春季キャンプを張る「コザしんきんスタジアム」で18時プレーボール。先発・二宮が6回無失点の好投を見せると、打線が初回から繋がり、8-0で快勝。球場ルールで7回までだったとはいえ、順調と言っていいスタートだった。

しかし、敵は思わぬところから現れた。いや、このとき既に潜んでいたのかもしれない。

試合後、選手から体調不良の訴えがあり、発熱が確認された。この日が日曜日だったこともあり、PCR検査は翌16日に。必然的にANA BALL PARK 浦添で行われる試合は中止が発表された。公式Twitterを使ったリリース発表が午後となってしまったことからも、各所への確認や連絡、検査期間との調整など、様々な対応が求められることとなったことが窺い知れる。

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【画像】16日の試合中止を伝える球団Twitter

この段階では、まだ「感染の疑いがある」というだけに過ぎず、翌17日の試合可否の判断は、16日夜にわかるはずのPCR検査の結果を受けてアナウンスされるはずだった。

しかし、沖縄県下の新型コロナウイルス感染者数は、8月17日の沖縄タイムス朝刊によると人工10万人あたり285.71人で全国1位。2位・東京の213.63を大きく上回っており、例年なら観光客で賑わっていたであろう国際通りの入り口の土産店が、PCR検査センターに変わっているほど。検査検体もかなりの数になっていることが想像できる。

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【写真】国際通り県庁側の入り口。かつて「おきなわ屋」が鎮座したところに検査センターがOPENしていた。(2021/8/14)

そんな中、おそらく検査期間の協力もあって、全ての検査結果が出る前に陽性の可能性があることがわかり、17日も試合中止を決断。Twitterの文言に違和感を感じるのは、おそらく事実誤認のないよう、聞いたことをなるべくそのまま記載したのではないかと思われる。

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【画像】17日の試合中止を伝える球団Twitter

その後、正式な検査結果が届いたことを受け、検査報告を公表。8/18 17:01現在、陽性者計11名と言うこととなった。

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これを受けて、チームは緊急事態宣言が終了予定とされている9月12日までの活動自粛を発表。今後、保健所の指示のもと、監督を始め、コーチ、選手、スタッフ一同、しばらくは自宅待機を余儀なくされるであろう。

3試合目が予定されていた8月17日。全ての検査結果が発表になる前、清水直行監督に電話で話を聞くことができた。難しい問題を抱える最中ではあったが、今回の沖縄主催試合について振り返ってもらった。

「今年の目標は『(県内外に)存在を認識してもらうこと』。そのためにはやはり沖縄で試合をやらないといけないと思っていましたし、選手たちも沖縄でプレーすることを楽しみにしていたと思います」

そんな中、1試合ではあったものの、沖縄で県外チームとの対戦を実現することができた。

「沖縄県のチームなので、沖縄で試合を見せたいという思いで、ずっと沖縄で活動を続けてきました。この8月開催は、いろんな議論をしてきた中、『無観客ならば』と各自治体から許可をいただくことができた。残念ながら1試合のみとなってしまいました、沖縄で試合ができたことは良かったと思っています」

コロナ対策はしてきたはずだった。

「コロナの感染者が出たり、クラスターとなったら、活動はできなくなるということはずっと言ってきたこと。去年の3月・4月からずっと隣り合わせで、活動はしてきた。ことあるごとにクラスターは出さない、飲食店の利用も注意を払うこと。朝の検温、消毒などの対策はできる限りやってきたつもりでしたが、遠征に出たときの管理体制が不十分だったと反省しています」

対戦相手となった大分BRが所属する九州アジアリーグは、今回の感染拡大を受けて、8月上旬に琉球と対戦した熊本・火の国サラマンダーズを含め、2チーム共にPCR検査を実施。検査結果が判明するまでの活動自粛を発表した。(九州AL 公式ホームページ https://bfk.or.jp/news/newsleague/1399/

今回の発端は琉球球団だったが、これは対岸の火事ではない。どの競技にも起こる可能性があり、実際に昨年のBリーグや、NPB一軍の試合でも、感染者多数による試合延期が発表された事例は数えればきりがないほど。今年に入ってもBCリーグ・神奈川フューチャードリームスで長期の活動休止があったのは記憶に新しいところだ。

感染者が出てしまったことを責めてもどうなるものでもない。今後、琉球球団に求められることは、自治体や保健所などとしっかり連携し、どうして感染拡大につながったのかを明確にし、公表すること。

独立リーグのカテゴリーに属する球団は、それぞれ規模の大きさや、資本力の違いはあれど、選手たちの環境は類似する点が多い。他の球団にとっても、大きく参考になることもあるだろう。

清水監督との話の中で「今後」と言うワードが何度か語られた。今回の件を受け、いろいろと再考する部分はあると思うが、少なくともここでマストをたたむことは考えていない。

4月の九州遠征、6月の西武2連戦、そして8月の九州AL交流戦を見る限り、選手個々の能力は確実に上がっている。対外試合を増やしたことで、昨年はほとんど期待できなかったNPBスカウトの眼に触れる機会も増えた。

また今回、1試合でも主催興行を経験できたことは、今後も活動を続けていく上で球団スタッフにとっても、大きな経験となるだろう。

ここで立ち止まるわけにはいかない。大きく失ってしまったものを取り戻すため、今回起こったことを真摯に受け止め、新たな気持ちで立ち上がってくることを信じて、今後の推移を見守っていきたい。

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