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訪問看護事業戦略


〜訪看の経営〜

まずは、いわくに訪看のことではなく一般的な訪看経営についてのお話。
訪問看護ステーションの経営は、支出=人件費・その他必要経費(家賃光熱費、社用車費用等)と、収入=診療報酬とをにらみながら行う。
当然、支出>収入となると赤字だ。

赤字はつらい~~

職員10名での試算

では、職員10人(看護師6名、リハ4名)と仮定しよう。
年俸1人平均430万(訪看の看護師平均が435万、岩国は少し低い)、と仮定する。社会保険折半分や退職金引当等も考慮すると人件費は年俸の1.25倍くらいと言われているので、経営側が支払う一人当たりの人件費は535万である。それが10人で5350万。
家賃や駐車場、車諸経費、その他諸々で年間計1000〜1500万かかる。ここでは高い方で計算することにし、人件費と諸経費合計で年間6850万の支出がある。

目標設定を明確に!

職員10人(看護6名、リハ4名)で概算すると、年間費用が6850万。これを収益が上回らねば赤字である。赤字では事業継続が困難となるため、なんとしてもクリアする必要がある!
この収益目標の設定が甘く、廃業していく訪看が多い…簡単な試算方法では、人件費及び諸経費は年俸(給与総額)の1.5倍程度で考えるのも良い。例えば上の試算であれば、一人当たりの年俸が430万、これが10人で4300万、これの1.5倍で6450万。目標数値は諸経費を1500万と見たため6850万であったが、諸経費がもう少し少なく1000万であれば6350万が目標数値となり1.5倍の6450万はイイ線をいっている。しかし諸経費が多くかかる場合は目標設定が低くなってしまうため、やはり正確に行う必要がある。
とりあえず、人件費(個人への支払い分と社会保険料等の労使折半分)の最低金額はおよそ、(全員の年俸)×1.17 で求められる。
あとは諸経費をしっかり計算することだ。

診療報酬の概算

訪看の立地(地域)によっても診療報酬は変わってくるが、ここは岩国で話を進める。
訪看は介護の場合、30分未満(訪看Ⅰ2)と、30分以上1時間未満(訪看Ⅰ3)、そして1時間以上1時間半未満(訪看Ⅰ4)、がある。平均すると診療報酬は一件1時間あたり8500円くらい。
リハは一件40分・6000円で考える。勤務日数は一月20日(月21日勤務だが1日は有給をつかうとして)
と、どのくらいの件数を上げればトントンになるか考えよう!

目標件数を考えよう!

看護一日4件、リハ一日5件なら・・・

看護一件1時間(訪看Ⅰ3)、リハ1件40分(訪看Ⅰ5・2)で考える

看護師一日平均4件回ったら、一月で
8500円×4件×20日=68万
リハ一日平均5件回ると
6000円×5件×20日=60万

看護師6名年間で
68万×12ヶ月×6名=4896万
リハ4名年間で
60万×12ヶ月×4名=2880万
合計
:4896万+2880万=7776万

年間6850万の支出なので、これなら余裕で黒字。

看護一日3〜3.5件、リハ一日4〜4.5件なら・・・

これが一日平均、看護3件・リハ4件なら上記同様の計算をすると、
収益が6000万まで下がり、850万の大赤字
では看護3.5件リハ4.5件なら・・・
収益は6800万となるが、50万の赤字

このように、最低でも一日実質訪問件数と収益予想はきっちり計算し把握しておかねばならない!

どうすれば件数をあげられるか!

件数をある程度上げることができれば黒字化できることはわかった。では、どうすれば件数を上げることが出来るのか…

それは…質が高く、正しい医療を誠実に行うこと…に尽きる。

件数をどう上げれば良いかについての回答が精神論的なことって、どうなん?って思ったそこのあなた!!
ホントにこれこそが大切なのです。利用者さんやケアマネさんは本当によく訪問看護ステーションの働き方をみています。正しく誠実な対応をしていれば、いつ、誰からみられていても大丈夫!
ていうか、その前に不誠実な働き方を続けると、普通の人なら自分が嫌になるか仕事が嫌になるため長続きしません。
誰にもみられてなくとも、正しく誠実に働けば、周囲からの信頼を得、自己肯定感が高まること間違いなし!そして利用者さんから『ありがとう』と言ってもらえる機会が増加し、『仕事って楽しい!』と思うこと間違いなし!
正しく・誠実に働き、知識技術を貪欲に学び、さらなる自己成長を目指しましょう!!

やってはいけない施策・・・

介護保険限度額がまだ余ってるからと、必要がないのに最大限の訪問回数を組む。これはケアマネさんが同じグループにいる場合でなければ行えないが。ま、こんなことを行うところはないだろう!
と思ってた矢先こんなニュースが飛び込んできた。パーキンソンなどの神経筋疾患には一ヶ月で何回以上必ず行くことを求める事業所などが問題視され、そのような指示を出さぬ(医師以外の経営者が)ように求める通達が出ました・・・とのことだ。

やってはいけない2 : 訪看Ⅰ3(30分以上1時間未満)で行っている利用者宅に35~40分程度しかかかわらない・・。これは本来、OKなのですが・・ルーチンで組んでいる(その日、行くと決めている)利用者さん宅なら50分以上、できれば55分以上は居たいもの。利用者さんは30分も59分も同じ金額支払うのですよ!35分で帰られたら怒りますよね・・・
制度的には正しいですよ。けど、そういう利益至上主義みたいな訪問を続けていると見限られます。昔居たんですよ、こんなDr.、曰く「医師は訪問時間5分でいいんじゃけ。どんどん回ればドンドン儲かる」その場にいた心あるDr.「・・・」無言で席を立つ。

ただ、緊急で呼ばれた場合はその限りではないと考えます。その場合は必要な処置にかかった時間で請求してもいいんじゃないかな。だって、その利用者さんを入れた分、他の利用者さんに伺う時間が遅くなってしまうので。なるべく早く必要な処置等を済ませ、なる早でルーチンの利用者さんに戻ることが必要と思ってる。

件数を上げる施策:差別化

まずは「質が高く、正しい医療を誠実に行う」ことです。ま、それはできて当然のことなので、もう少し具体的施策を上げてみよう。
一つ目、「売りを作ること」(他のステーションと差別化を図る)
いわくに訪看はリハビリテーションを売りの一つにしている。質が高く、誠実なセラピストを集めているので基本はOK。それに加え、重症心身障害児、神経難病、呼吸器疾患・人工呼吸器を専門的に診ることのできるPTが在籍しているので医師からの信頼が厚い。これは非常に大きいアドバンテージ。最終的に指示書を書くのは医師だから。
売りの二つ目、これもリハ職がいることに付随することであるが、看護師が「リハ看護」を提供できること。リハビリ職員と協働し、利用者さんに必要なストレッチやマッサージ、運動といった各種リハ看護を行う。これは先ほどのⅠ3で20分余った時などに行うのも有効。その20分の時間でリハ看護を実施すると利用者さんに非常に喜ばれる!
売りの三つ目、これは普通のことかもしれないが・・質の高い看取り看護を提供することができる!(当然24時間もやってます)これ、結構大切。人生最後をどのように終えることができるか。ご本人にとってもご家族にとっても大問題です。したがってこれはかなり難しい看護になるが、うちの看護師は本当によくやってくれている。亡くなられ、後日ご家族から心のこもった感謝の言葉をいただくたび、この仕事をやっててよかったな、と本当に思う。

件数を上げる施策:通常

通常施策1 : 医師と繋がること。いわくに訪看は久米医院という医療法人をバックに持つ。久米先生の人脈で岩国地域の医師からの依頼もある。一件目をいただいた時が非常に大切。しっかり報告を入れ、正しい医療を行うことで信頼を勝ち取ればしめたもの!今後も依頼が続く。ただ、その先生からの依頼は断れなくなるという弱点?もあるが・・・
通常施策2 : ケアマネさんから信頼されること。介護保険はケアマネさんがプランを立てるので、如何にケアマネさんに信頼されるかは超重要。こんなことはみんなわかってますよね。と言いたいけど、リハ職員がたまにやらかしちゃったりする。病院系出身のリハ職はケアマネより上(在宅生活上の動作関係とか特に)と思ってる馬鹿な奴も結構いる。いやいや、病院リハ職員が見てるのは利用者さんのほんの一部分だけだから。在宅生活のことなら絶対ケアマネさんの方が詳しいから!家族関係がどうで、金銭関係がどうなってて本当にリハ職が考えてる通りのプランが実現可能なのか・・・。在宅のコメディカルは皆対等でしょう。どの職種が上とかないから!強いて言えば、医師だけがちょっと違うとこにいるかな。

訪問看護の事業戦略、まとめ

本来はマーケティングから始めなければいけないのだが、岩国地域も他の地方地域同様あと10年は高齢人口が増加していく。そのため、潜在顧客(戦略の話なのでこの章では利用者さんではなく顧客と言います)はかなり多いと仮定し話をする。
潜在顧客がいるのであれば、まずは顧客に如何にリーチ(知ってもらう)するか。ただこれも訪問看護の場合は顧客が直接来所するのではなく、医師やケアマネ、病院の連携室からの依頼がほとんどである。そのため、まず一つ目の施策としては如何にして関連施設に事業所を知ってもらうかである。これは古くからある「足を使った営業活動」をほとんどの事業所が行っていることであろう。しかし近年のSNS発展に伴い、リーチ手段としてのSNS運用が必要となってきている。特に田舎ではほとんどの事業所が取り組んでいないため、発信を頻回に行っていくだけでも差別化が図れるだろう。
知ってもらえれば次は差別化。事業所独自の訪問看護とはなんなのか、自分たちのスタッフで行える差別化戦略は何なのかを考え実行すること。
顧客を獲得できたなら、質が高く、正しい医療を誠実に行うこと。これだけでも必ず顧客を満足させることができる。自信を持って愚直に実施しよう!
最後に、立てた目標件数に対し、月ごとの達成・未達を確実に把握すること。
いわくに訪看では看護4.2件、リハ5件を目標にしている。4月からの開業で、看護は7月・9月は達成、あとは未達。リハは4月のみ未達、5月以降の5ヶ月は平均して5.1件で達成である。看護が8月に未達だった理由は新しく看護師さんが入ったため。利用者さんを覚えるための同行が多かったので件数が落ちている。したがって同行の必要が減った9月は目標件数達成できている。
未達理由の分析は非常に大切である。これを行ってない事業所が多いのではなかろうか。必ず分析し、改善策が必要ならただちに打たねばならない。

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あ~~、経営とかの話するの好きだから長くなってしまった~~、ごめんなさい。最後まで読んでくれてありがとう~~!
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