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浸水対策はどこまで進んでいるのか | 第3回内講(浸水対策住民説明会)

台風13号水害後の県や市による浸水対策が、いったいどこまで進んでいるのかを市民に共有してもらうために、内郷まちづくり市民会議が主催する説明会を7月23日に開催しました。防災のまちづくりについて語るトークイベント「内講」の第3回を兼ねた説明会となっています。

四ツ倉会長から冒頭のあいさつ

県や市の説明会というと、流域の区長を中心とした流域住民に対する説明会は何度か実施されてきましたが、市民全体、オープンな場での実施はありませんでした。そこで改めて、市民会議からオファーをしまして、今回の説明会となったことを冒頭でご紹介しておきます。

説明会の冒頭、内郷まちづくり市民会議の四ツ倉会長からあいさつがあったあと、早速、福島県、いわき市の担当者から、①被害の状況の整理、②現段階での浸水対策の進捗、その後の計画ついて説明がありました。

ここからは、福島県いわき建設事務所が公開している(当日も使われた)資料を参考に簡単に振り返っていきたいと思います。

豪雨と氾濫の状況

線状降水帯が形成されて豪雨となった状況がわかります

台風13号がもたらした雨は、最大24時間雨量で、平が189ミリ、山田が194ミリとなっているなか、好間町大利で267ミリという突出して多い、想像を絶する雨が降っていました。内郷地区にもいくつか沢が流れています。そこに大量の雨水が流れ込んだ状況が推察できます。

当日の説明によれば、令和元年台風で夏井川が氾濫したときに、48時間で304ミリという記録が残っているそうです。台風13号水害では、雨が降っていた時間は6〜7時間とされていますから、いかに短時間で、いかに大量の雨が降ったかということがわかると思います。

あまりに大量の雨が周辺に降ったため、川が氾濫した被害よりも、山の斜面などから流れてきた水が溜まったり、橋に流木が引っかかってダム状になって水を堰き止め、周辺の居住域へ水が流れてしまったりと、「内水」の氾濫が大きいな被害をもたらしたということがわかってきたようです。

県の担当者から詳しい解説がありました
内郷地区の浸水の状況

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/life/773176_2211391_misc.mp4

↑のリンクは、浸水の状況をシミュレーションした動画で、氾濫の状況をしっかりと読み取ることができます。どんなタイミングで、どの地区が氾濫していったのかを視覚的に理解できるので、ぜひこちらの動画をご覧いただき、実際の状況と合致しているかを確認してみてください。

緊張感のある説明会となりました
被害状況のまとめ

↑のスライドは、被害状況を簡潔にまとめたものです。新川と宮川、両河川に共通する特徴として、①流下させる能力が小さいにも関わらず大量の水が流れ込んだこと②橋に流木が引っかかって氾濫を助長したこと③溢れ出た水が道路を伝わり浸水被害を拡大させたことなどが整理されています。

浸水対策

被害の状況について説明されたあと、浸水の対策についての説明がありました。宮川、新川、それぞれに異なる特徴があることから、それぞれの特徴・被害状況に合わせて主に3つの対策を行なっていくとのことでした。下のスライドの赤字の部分。①応急・緊急対策②氾濫防止対策③被害軽減対策この3つが柱になっていくようです。

問題点と対策の整理
浸水対策の一覧。さまざまな工事を行うことになっています
いわゆる「勝手橋」の撤去に関する資料

上のスライドで示したように、さまざまな対策・工事が行われていくことになりますが、特徴的なのが、宮川流域の「勝手橋」の撤去。説明によれば、宮川流域だけで、持ち主不明の勝手橋が9本も存在しており、豪雨時にはこの橋に流木などが引っかかって浸水被害を拡大させる恐れがあることから、これを撤去するという方針になっています。

かつて炭鉱町だった時代に、それぞれの家の利便性を考えて住民たちが自ら橋をかけたわけですが、防災の面からはこれが障害になっているということになります。当たり前に橋が何本もある風景を見てきましたが、マップを見て改めて、橋の多さに気付かされました。工事の暁には、川沿いの風景も今とは少し変わっているのかもしれません。

足りていない状況把握

住民からは厳しい意見がいくつも出てきました

説明のあとには、住民からの質疑応答の時間が設けられました。住民からは厳しい声が上がっていました。目立ったのが、行政がまとめた被害状況と自分たちの被害実感が事なっているという意見です。

「行政がまとめた資料では自分の家は浸水エリアに入っていないが間違いなく浸水している」
「もう少し、地域の住民への直接的な聞き取りをやるべきだ」
「自分の家は甚大な被害を受けたが、浸水エリアに入っていない、家まで来て調査してほしい」
。そんな声が目立っていたように思います。

災害からまだ1年も経っていない。そのことを痛感する説明会となりました

被害を受けた多くの住民が、これまでほとんど自力で生活再建にあたってきました。生活を取り戻すだけで精一杯です。どんな被害を受けたのか、どんな辛さがあったのか、聞いてもらいたい話、将来の展望、不安など、さまざまな話を、行政には聞いてもらっていないと感じているはずです。

被害を受けた自分の自宅が、もし浸水エリアに入っていなかったら、災害を経験したこと自体がなかったことになってしまいます。怒る気持ちは当然だと思いますし、行政には、しっかりと聞き取り調査を実施してもらい、不安に応えるような浸水対策をしてもらいたいと思います。

一方で、行政の被害想定と住民側の被害はいつも食い違う、という現実も見えた気がしました。前回の内講で、令和元年台風で被災した平窪の皆さんに話を聞いたときもそうでした。行政が設定した被害想定、避難経路では無理がある。そこに暮らす住民ならではの視点を防災に生かさなければならないという話を、平31区の江尻区長も話されていました。

行政のハザードマップだけではなく、まさに、住民の、住民による、住民のための防災マップをつくる。その必要性を、改めて感じる説明会となりました。説明会の開催にあたっては、県や市、内郷支所の皆さまにも多大なるご協力をいただきました。重ねて御礼申し上げます。

内郷まちづくり市民会議・うちぼうプロジェクト事務局

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