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いわきりなおとの国宝漫遊記 第2回「志野茶わん銘卯花墻(うのはながき)」の巻

◉手のひらの中の宇宙  


漫画家いわきりなおとさんが、東京国立博物館で6月4日まで開催中の特別展「茶の湯」で展示している、国宝「志野茶わん 銘卯花墻」(三井記念美術館蔵)を紹介します。
(※「茶の湯」展はすでに終了しています)

織田信長豊臣秀吉明智光秀など、戦国時代から江戸時代の大名や武家の間では立派な茶わんを持ち、部屋を飾るのが最大のステータスでした。
現代のビジネスマンが高級スーツやブランド時計を身につけ、できるオトナを演出するのと同じですね

井戸茶わん、楽茶わん、志野茶わんなどは、少しゆがんでいて、模様も抽象的で地味です。初めて見る人にはその美しさを理解するのは難しいかもしれません。

ところが、美術館巡りを重ねて
普段からたくさんの美に触れる経験をするうちに、
良さが分かるようになってくる。
むしろ、ゆがみや抽象的だと感じていた部分にこそ魅力を感じてくるんです。

 昔から日本人は枯れ山水の小さな庭に、美しい山の景色や川の流れ、水の音を感じ、五七五の短い俳句に四季の移ろいや無限の広がりを感じてきました。
これが日本文化の特徴「見立て」です
物の見た目だけではなく、その向こう側の景色に思いをはせ、美を読み取るのです。
現在国宝に指定されている茶わんは八つ。そのうち日本で作られたのは、本阿弥光悦作の白楽茶わん「銘不二山」と、安土桃山~江戸時代に作られたとされる卯花墻の二つだけ。卯花墻の白い見た目に、垣根に咲き乱れる卯の花の景色、そして春のぬくもりを感じるのです。


茶わんとは、手のひらの中の宇宙。

その美を理解できる人は今も昔もできるオトナなのです。
(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 


※いわきりなおとの国宝漫遊記は共同通信加盟新聞にて連載中です。
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