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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第31節 いわきFC対V・ファーレン長崎
2024明治安田J2リーグ第31節。いわきFCは9月15日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにV・ファーレン長崎を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。
■V・ファーレン長崎とは
今節の対戦相手V・ファーレン長崎は、長崎県全域をホームタウンとするプロサッカークラブ。「V」の読みは「ヴィ」。長崎と歴史的つながりのあるポルトガルとオランダの4つの言葉(勝利=VITORIA・多様性=VARIEDADE・航海=VAREN・平和=VREDE)の頭文字から取ったもの。ファーレンとはこの中の航海=VAREN。「長崎から世界へ航海に出る」という思いをチーム名に込めている。
前身は、有明町で活動していた有明SCと国見高サッカー部OBを中心とする国見FCが統合されて生まれた「有明SC」。2004年に県サッカーリーグ1部で優勝、九州リーグ昇格。2005年に現名称となり、2008年の第32回全国地域サッカーリーグ決勝大会でFC町田ゼルビアに次ぐ2位に入りJFL昇格。2012年にJFLを制し、Jリーグ参入を果たした。
2013年から5年間はJ2。2017年に2位に入りJ1昇格。この年、ジャパネットホールディングスがクラブの全株式を取得。ジャパネットの創業者・髙田明氏が代表取締役社長に就任している。
翌2018年、初挑戦のJ1では最下位。2019年からはJ2での戦いが続く。ちなみにこの年2月にハワイで開催された国際大会「パシフィック・リム・カップ2019」に、いわきFCとともに出場し、優勝している(この時いわきFCは1回戦で敗れており、残念ながら両チームの初対決は実現しなかった)。
その後、2020~2021年にJ1復帰目前までこぎつけるも昇格ならず。2023年は監督ファビオ・カリーレのもと攻撃的サッカーを展開。シーズン中盤にかけて上位争いに食い込んだ。
この年、4月29日の第12節でいわきFCとハワスタで初対戦。試合は拮抗した展開となり前半はスコアレスで折り返したが、後半にFWフアンマがゴールを挙げ長崎が1対0で勝利している。
そして二度目の対戦は8月6日の第29節。長崎は多くのシュートチャンスを作るもいわきは粘り強く耐え、試合はスコアレスドローで終わっている。
長崎はその後、リーグ終盤で失速。最終節まで昇格プレーオフ進出の可能性を残したものの、7位でシーズンを終えている。
■2024年戦力分析~V・ファーレン長崎
下平隆宏監督体制1年目となった2024年。チームは秋の新スタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」開業を見すえ、勝利を積み重ねていった。
開幕節で藤枝MYFCと引き分け、第2節でベガルタ仙台に敗戦。しかし第3節で清水に4対1で大勝して今季初勝利を挙げると、第4節でレノファ山口FCに勝利。徐々に順位を上げ、第9節で2位浮上。第10節に徳島ヴォルティスに6対1で大勝し、翌第11節にはFWエジガル・ジュニオのゴールで横浜FCに1対0で勝利。その後も負けなしの快進撃を続けていく。
前期のいわきFCとの対戦は第19節の6月26日。いわきは第21節の山口戦から中4日の強行日程。山口戦終了後そのまま九州に移動し、この試合を迎えた。
長崎はサイド攻撃を起点に序盤からボールを握りゴールへ迫るも、いわきは果敢なプレスで前半をスコアレスで凌ぐ。しかし後半立ち上がりの49分、57分に長崎が立て続けにゴール。いわきも意地を見せ、66分にDF大森理生のゴールで1点を返す。しかし84分、途中出場のFWフアンマがゴール。後半に3得点を挙げた長崎が快勝し、首位に立った。
長崎は並行してルヴァンカップ、天皇杯でも勝ち進む。ルヴァンカップでは1stラウンド2回戦でJ1のジュビロ磐田に勝利。3回戦で浦和レッズに1対0で勝利してプレーオフラウンド進出。そして天皇杯では3回戦でアルビレックス新潟を6対1で破り、高いポテンシャルを知らしめた。
しかし夏場に入り、強敵と激闘を重ねた代償が徐々にのしかかる。
天皇杯から中3日で迎えた7月14日の第24節・ヴァンフォーレ甲府戦では、先制するも逆転を許し、試合終盤のパワープレーからアディショナルタイムに追いつくギリギリの引き分け。チームは夏の移籍市場でいわきFCからDF照山颯人を獲得して守備をテコ入れするも失速していく。
中断期間明け1試合目の第25節で水戸ホーリーホックに1対2で敗れ、5カ月ぶりの今季2敗目。リーグ無敗記録は22でストップし、痛恨の3位後退。そして第27節ではモンテディオ山形に2対4で敗戦。8月21日の天皇杯ラウンド16(対横浜F・マリノス)での惜敗を挟み、第28節でレノファ山口FCに1対2で敗れてしまう。そして第29節・栃木SC戦のドロー。至近の第30節では2位・清水エスパルスとアウェーで対戦し、1対1の引き分けで終わっている。
第30節終了時点で14勝12分け4敗の勝ち点54。自動昇格圏2位清水との勝ち点差は8と開き、J1自動昇格圏入りはやや厳しい状況。至近のレノファ山口FC戦、引き分けた栃木戦そして清水戦と、いずれの試合も先制するもリードを守り切れずに追いつかれている。
フォーメーションは4-1-2-3。第30節・清水戦のスターティングメンバーはGK21若原智哉、DF8増山朝陽/48照山颯人/5田中隼人/23米田隼也、MF17秋野央樹、MF35安部大晴/6マテウス・ジェズス、FW7マルコス・ギリェルメ/20中村慶太/19澤田崇。
スピードあふれるサイド攻撃から前線の外国人アタッカーがゴールを陥れる。これが長崎の基本的なプレースタイルだ。攻撃は前線のFWフアンマ・デルガド、マテウス・ジェズス、マルコス・ギリェルメら外国人選手の出来に左右されるだけに、彼らのコンディションが気になるところ。
今シーズン14ゴールを挙げて得点王ランキング3位のエジガル・ジュニオは8月17日のモンテディオ山形戦を最後に欠場が続いているが、復帰間近との噂も。そして前期のいわき戦で2点目のゴールを決めたMF加藤大は攻守をつなぐリンクマン。しばらく負傷欠場が続いていたが前節の清水戦でベンチ入りしており、FWエジガルとともに今節出場の可能性もある。
守備で注目すべきはDF照山颯人。いわきFCに在籍した今季前半に守備の中心選手としてチームを支えた照山だが、夏に移籍して以降、長崎を勝利に導けていない。充実の半シーズンを過ごした古巣との戦いに、決意を持って臨むことだろう。
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アタッカーの復帰、そして照山の覚悟。今節いわきに乗り込んでくるのはここ数試合の調子の上がらない長崎ではなく、シーズン前半を席巻した強い長崎と考えるべき。少しでも油断をすれば、痛い目に遭うのは間違いない。
いわきにとって幸運な要素が、ここ2試合で対戦したベガルタ仙台、鹿児島ユナイテッドFCと守備の形がやや似ていること。4-4-2からゾーンで対応する長崎守備は2CB間の距離が遠めで横のつながりがやや希薄。そのためゾーンの切れ目のランニングを許したり、吊り出されたDFのスペースを埋め切れずに失点するケースが時折見られる。いわきは前線が巧みにCBの背後を取り、空いたスペースに2列目の選手が積極的に飛び込む展開を目指すだろう。
注目は暑さ。試合は16時キックオフ。今週日曜は最高気温33度と暑さが予想される。ここ数試合、後半での失点が多い長崎。持ち前の攻撃力で前半に得点を取るものの耐え切れないケースがしばしば。一方、いわきは走力に圧倒的な自信を持ち、後半の得点も多く、消耗戦はお手のもの。長崎が後半に暑さで落ちてくれば、得点チャンスはおのずと生まれるだろう。ただしハワスタは長崎市よりも涼しく、当日の気温がコンディションにどう影響を与えるかは見えない。
攻撃力の高い長崎に対し、1対0で守り切るゲームは困難。先制点を奪うだけでなく、積極的に攻め続けて2点目、3点目を取りたい。攻撃的な姿勢を90分貫けるかが試合の大きなカギ。上位の長崎が相手でもシーズンダブルは許されない。ホームで万全の状態で戦う今節は前期の借りを返し、勝ち点3をもぎ取りたい。
■両翼にアクセントをつけた選手起用が奏功
第24節から第27節までJ2参入後初の4連勝を果たし、プレーオフ圏内入りを見すえる7位に上がったいわきFC。しかし、チームはここから試練の時を迎える。
8月25日の第28節、ホームにロアッソ熊本を迎えた一戦は、スリリングの得点の奪い合いとなった。前半13分にカウンターから先制点を許し、熊本に試合のイニシアチブを取られる展開。いわきは前半にMF山口大輝のゴールで追いつくも、36分に追加点を許し1対2で前半を折り返す。そして熊本に3対1とされた後半、いわきはFW有馬幸太郎がゴールの1点差に迫るも、熊本が68分に4点目のゴール。いわきは74分にFW熊田直紀が移籍後初ゴールを挙げるも、この試合を3対4で落とし連勝は4でストップする。
そして迎えた8月31日の第29節はベガルタ仙台との東北勢対決。シーズンの行方を左右するこの大勝負でも、いわきは開始早々に先制点を奪われてしまう。
開始8分、MF山下優人がゴール前で仙台FW中島元彦にかわされ失点。仙台に試合の主導権を握られる展開となった。田村監督は不調の山下を前半32分で下げ、MF下田栄祐を投入。だがいわきは後半に入ってもなかなか攻撃の形を作れず、仙台の強固な守備ブロックを崩せないまま時間が過ぎていく。そして後半28分、セットプレーからのこぼれ球を再びFW中島に押し込まれ、0対2で敗戦。序盤の失点が響き、仙台に試合をコントロールされる展開で連敗を喫した。
この試合でいわきは8位に後退。翌週チームは鹿児島に乗り込み、仕切り直しの一戦に臨んだ。
決戦の地・白波スタジアムはいわきFCが2022年にJリーグ初戦を戦った場所。この戦いをきっかけにキャプテン山下率いるチームはJリーグでの戦いに自信を得て、J3優勝そしてJ2昇格を成し遂げている。
チームはこの地で、復調のきっかけをつかむ。
相手の鹿児島ユナイテッドFCはいわきのJ3~J2での躍進を支えたFW有田稜、MF鈴木翔大の2選手を先発起用。対するいわきはMF山下優人を左WBに起用する。MF西川潤&加瀬直輝がアグレッシブに縦に攻め上がる右サイドと、山下がボールキープからクロスを狙う左サイド。両翼のアクセントをつけた選手起用が奏功し、立ち上がりはいわきがボールを保持。鹿児島は徐々に攻撃のリズムを作り、立て続けに決定機を迎える。
結果として、この時間帯を無失点で乗り切ったことが大きかった。試合が動いたのは30分。ショートカウンターで右サイドからカットインしたMF西川がゴールを決め、いわきが先制。ボールを奪ったら素早く前線につけ、後ろの選手がボールホルダーを積極的に追い越していく。そんな「いわきFCらしさ」を明確に示した先制点だった。
仙台戦の課題がビルドアップの安定感だった。この試合は中央にDF大森理生、右に堂鼻起暉、左に石田侑資で組んだ3バックが起点として機能。アンカーのMF下田を軸にボールを動かし、WBに入った山下のサイドチェンジで相手守備を広げると、MF山口大輝、西川潤、FW谷村海那、有馬幸太郎が中央を突いていく。
いわきは39分、MF山下のFKをFW谷村が頭で押し込み追加点。2点リードで前半を折り返すと58分、左サイドを突破したMF山下のクロスに再び谷村が頭で合わせ3点目。入団6年目の山下と5年目の谷村。二人の息の合った2ゴールでいわきが3対0とリードを広げた。谷村はこの日の2ゴールでJ2得点ランキングトップとなる17ゴール。そして山下は仙台戦の不調から見事に再起。はっきりと存在感を示した。
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その後、アディショナルタイムに1点を返され、試合は3対1でタイムアップ。いわきは連敗をストップさせたが、課題はゲームの締めくくり方。後半から入ったFWブワニカ啓太、熊田直紀ら交代選手達がパワーを示せず、終了間際に押し込まれて無駄な失点を喫したのは大きな反省点だろう。
なおこの試合、湘南ベルマーレからの期限付き移籍で加入以来、負傷を引きずっていたMF柴田壮介が69分にデビュー。MF山口大輝がすでにカードを3枚もらっており、柴田はこの先の試合でもチャンスを与えられるだろう。
また8月20日には世宗未来高(韓国)からDFヒョン・ウビン、9月2日には東京国際大からGK松本崚汰の加入がリリース。プレーオフ争いが激化する一方、来季以降を見すえた補強も抜かりない。
■「チームは着実に成長している」田村雄三監督
「前節の鹿児島戦は前半に危ない時間帯もありましたが、どうにか勝つことができてよかったです。山下の左サイドでの起用は相手の出方を含めてのこと。山下にはボールを持って時間を作ってくれることを期待していました。イメージ通りのプレーをしてくれたと思います。
先制ゴールを決めた西川は当然、あれぐらいできる選手。もっと得点に絡んでほしいし、危険なゾーンにいる回数を増やしてほしいと思っています。右サイドのMF加瀬がボールを失わずにプレーできれば、もっと力を出せる。加瀬の良さを引き出せるように、少しずつ課題を与え、クリアさせることで成長を促したい。
長崎さんは基本的にやることが変わっていません。前線の強力な外国人アタッカーにやられてはいけないし、鹿児島戦と同様、危険な状況が来てもしっかりと前半を耐え切ること。試合のある日曜日はそれなりに暑いでしょうし、後半勝負になるはず。長崎さんはDFラインがやや後ろに重く、後半に間延びする印象がある。どうにかしてそこを突いていきたいと思っています。
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皆さんには大いに盛り上げっていただきたいのですが、チームとしてはプレーオフを意識するのは時期尚早。一ついい勝ち方ができても、次に負けたらやり直しですから。とはいえチームは着実に成長しています。今節は前期の戦いよりいい試合にしなくてはいけません。ホームのファンの皆さんの前で、しっかり勝ち点3を取りたいと思います」
■プレーオフ圏内入りに向け、望みを託す
明治安田J2リーグは9月7~8日に第30節が行われた。結果を受けた順位は以下の通り。
首位は勝ち点66で横浜FC。アウェーで愛媛FCを下して勝ち点3を積み上げ4連勝して首位を走る。2位は清水エスパルス。3連勝で迎えた3位・長崎との一戦を引き分け、勝ち点62で2位。首位・横浜との勝ち点差は現状4だが、清水は台風の影響で第29節が延期となっており、消化試合が1試合少ない。そのため、優勝の行方はまだ見えない。
上位2チームが勝ち点差を広げる中、プレーオフ圏内入りを争う3位以下の勝ち点差が詰まってきた。3位は勝ち点54でV・ファーレン長崎。4位・ベガルタ仙台はザスパ群馬とスコアレスドローも勝ち点1を積み、勝ち点51。3位・長崎と3ポイント差をキープする。
5位は勝ち点48でファジアーノ岡山。ホームでブラウブリッツ秋田に0対1で敗戦して足踏み。6位・レノファ山口FCも徳島ヴォルティスに敗れ2連敗を喫し、勝ち点47のまま。一方、第27節でいわきFCに完敗したジェフユナイテッド千葉がここに来てベガルタ仙台、大分トリニータ、水戸ホーリーホックに3連勝。勝ち点46で7位。ここ3試合でFW小森飛絢が2ゴールずつを挙げ、計16ゴールで得点王ランキング2位。1位のFW谷村海那を猛追する。
いわきFCは第30節終了時点で13勝7分け10敗。勝ち点46で現在8位。同勝ち点の7位・千葉との得失点差は5。そして9位は勝ち点42でモンテディオ山形。勝ち点と得失点差を考慮すると、昇格プレーオフ圏内入りの可能性はここまでか。田村雄三監督率いるいわきFCは目標達成に向け、今節に大きな望みを託す。
2024明治安田J2リーグ第31節 V・ファーレン長崎戦は9月15日(日)16時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。
激戦続く今年のJ2も残り8試合。いわきFCの若き戦士達の躍動をぜひ、ハワスタで見届けてほしい。
(終わり)
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