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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第26節 いわきFC対愛媛FC

2024明治安田J2リーグ第26節。いわきFCは8月10日(土)、ハワイアンズスタジアムいわきに愛媛FCを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■愛媛FCとは

オリジンは、愛媛県立松山東高OBにより1970年に創設された松山サッカークラブ。1987年に四国サッカーリーグに昇格し、1996年に愛媛フットボールクラブ(愛媛FC)に名称を変更。本格的な強化が開始された。

1998年に四国リーグ初優勝。全国地域サッカーリーグ決勝大会に初出場して3位。2000年に四国リーグ3連覇も地域決勝は予選リーグで敗退。しかし、全国社会人サッカー連盟の推薦によってJFL昇格を果たす。

2003年に運営法人・株式会社愛媛FCが設立。2005年にJFLを制しJ2加盟承認。四国で2番目のJリーグクラブとなった。

しかしJ2では苦戦が続く。2006年に9位、2015年に5位に入った以外は下位低迷も、粘り強く生き残った。だがリーグのレベルアップや昇格組の台頭などで、次第に降格圏をさまよい始める。

2020年は21位に終わるも新型コロナウイルス感染拡大の影響によって降格を免れた。しかし2021年、チームは開幕から6戦未勝利と苦しみ、一時は16位まで浮上するも終盤に失速。ホームゲームで1勝しか挙げられなかったことなどが影響し、20位でJ3降格となった。

2013~14年に監督を務めた石丸清隆氏が8シーズンぶりに復帰した2022年。J3第3節でいわきFCと初対戦。試合はいわきペースで進み、前半に右SB嵯峨理久(現・ファジアーノ岡山)のクロスにFW有馬幸太郎が頭で合わせ、いわきがリード。しかし後半アディショナルタイム、愛媛が数少ないチャンスをモノにして追いつくもアディショナルタイム5分、のちにJ3得点王となるFW有田稜(現・鹿児島ユナイテッドFC)がファーストタッチで殊勲の決勝ゴール。いわきが2対1で劇的な勝利を挙げた。

そして二度目の対戦はJ3第30節。いわきはMF岩渕弘人(現・ファジアーノ岡山)、FW有田稜のゴールで2得点。終盤に愛媛に1点を返されるも、2対1で勝利。シーズンダブルとなる勝利でJ2昇格に向け勝ち点を積み上げている。

この年、愛媛FCはJ3で7位に終わり、1年でのJ2復帰は失敗。翌2023年は関西大からMF深澤佑太、関西福祉大からMF谷本駿介を獲得するなど、徐々に若手主体のチームへ切り替えを図っていった。チームは第2節から第10節まで9試合負けなし。着実に勝ち点を積み重ね、第17節で首位浮上。第14節から第27節まで14試合負けなしと首位を独走し、J3優勝とJ2復帰が決定。この優勝は初のJリーグタイトルとなり、13得点を挙げたFW松田力がJ3最優秀選手に選出。J3ベストイレブンに松田の他、GK辻周吾、DF小川大空、DF森下怜哉、MF谷本駿介、MF茂木駿佑が選ばれている。

■2024年戦力分析~愛媛FC

J2返り咲きを果たし、石丸監督体制3年目を迎えた2024年。チームは若手路線を継続し、関西大からDF谷岡昌、磐田U-18から舩橋京汰、Kリーグ浦項スティーラースからパク・ゴヌ、全北現代モータースからユ・イェチャン、FC岐阜から窪田稜らを獲得。開幕節でブラウブリッツ秋田に勝利し、第7節では藤枝MYFCに3対0で完勝。第8節で仙台に勝利するなど、J3を制した勢いをそのままに、中位に食い込んだ。

いわきとは5月6日の第14節で2年ぶりに対戦。中2日の過密日程、しかも強風の中で行われたこの試合は互いにロングボールを蹴り合うも風で精度を欠く展開。前半は風上の愛媛が決定機を迎えるも、いわきGK立川小太郎が好セーブ。風が収まってきた後半はいわきが再三の決定機を迎えるも愛媛GK徳重健太が阻み、スコアレスドロー決着となった。

愛媛はその後、5月18日の第16節でジェフユナイテッド千葉に1対7で大敗するも6月12日の天皇杯2回戦でファジアーノ岡山に7対1、6月16日の第20節で清水エスパルスに3対0で完勝。しかし第22~23節でロアッソ熊本、ザスパ群馬にともに4対0で完敗と、波の大きいシーズンを送る。

至近の第25節・徳島ヴォルティス戦は四国ダービー。愛媛はハイプレスと球際の強さでゲームを支配するも前半に徳島が先制。愛媛は試合を通じて主導権を握るも1点を奪えず敗れ、9勝7分け9敗の勝ち点34で10位。一方、天皇杯では7月10日の3回戦でJ1アビスパ福岡に2対0で勝利し、ベスト16進出。8月21日のラウンド16ではいわきFCに圧勝したサンフレッチェ広島と対戦する。

J3を席巻した勢いをかってシーズン序盤を戦い、その後、新戦力が台頭。天皇杯でファジアーノ岡山を相手にハットトリックを達成したルーキーFW舩橋京汰がスタメンに定着するなど、ポジション争いが活性化されているのが今の愛媛FCだ。

フォーメーションは今季途中から守備時に3-4-2-1、攻撃時に4-2-3-1の可変システムを採用。第25節のスターティングメンバーはGK36辻周吾、DF33小川大空/6谷岡昌/19尾崎優成、MF4山口竜弥/14谷本駿介/18菊地俊介/21パク・ゴヌ、MF17茂木駿佑/25石浦大雅、FW27舩橋京汰。

左WBを務めたMF4山口が第25節終了後、徳島に移籍。そしてMF25石浦が徳島戦のレッドカードで出場停止のため、今節のメンバーは変動するだろう。石浦の穴を埋めるのは前節ボランチに入っていた18菊池か。また昨シーズンJ3最優秀選手のFW松田力、オーストラリア人の大型FWベン・ダンカンが前節ベンチ入りしていないのは気になるところ。

走力にフォーカスする愛媛の戦い方は、いわきと似た部分も多い。前線からしっかりとプレスをかけ、球際で激しく競りにくる。そして奪ったボールを後方からしっかりとつなぎ、周囲の選手がボールホルダーを積極的に追い越す。個に依存せず、どこからでも点を取りに行くのが今季のスタイルだ。

特に警戒すべきはダブルボランチ。今節は昨年のJ3優勝の立役者となったMF8深澤佑太、MF14谷本駿介の2年目コンビの先発を予想。ゴールキックから丁寧にボールをつなぐ愛媛のプレースタイルの核となるダブルボランチ。ビルドアップの中心そして攻撃の起点となる彼らにボールを運ばせないことが重要になる。

加えて左サイドハーフも厄介な存在だ。スピードがありドリブル突破が得意なMF13窪田稜と精度の高いクロスを送り込むMF17茂木駿佑のどちらが先発するにせよ、攻撃の決め手となる左サイドからのアタックを封じ込めることはマスト。若さと縦の走力を武器に攻撃に人数をかけてくる愛媛。いわきはパス&ゴー、ワンツーを簡単に受け渡さず、しっかりとついて行きスローダウンさせたい。

通算戦績はいわきの2勝1分け。だが愛媛はJ3時代から大幅な若返りを図り、前期は強風の中での戦い。過去の対戦結果は参考にならない。いわきはここまで積み上げてきた走力や球際の強さといったベースで上回り、ボール保持時間を増やしてゲームを優位に運びたい。得点の取り方、ボール保持の仕方は異なれど、ともに走力を武器とする2チームの激突は見どころの多い展開となるだろう。

■シーズン終盤に向け進化は続く。

第24節にアウェーでモンテディオ山形との東北決戦を制し、連敗を3で止めたいわきFC。約3週間の中断期間を経て、第25節はホームにブラウブリッツ秋田を迎える東北決戦となった。

序盤に試合を動かしたのはいわき。4分、MF西川潤が競り合いに勝ってMF加瀬直輝にボールを送り、加瀬が右サイドをドリブル突破。クロスにFW谷村海那が合わせ、いわきが先制する。

秋田は持ち前の縦の強さで徐々に盛り返し、いわきゴールに迫る。だがいわきは粘ってはね返し、ゴールを割らせない。39分、秋田DFがMF加瀬へのファールで退場。10人となった秋田は4-4-1で構え、試合はそのまま進んでいく。

いわきは61分、鹿屋体育大からの来季加入が発表されたばかりのFW加藤大晟を投入。加藤は身体の強さを示してたびたび秋田陣内に侵入。見せ場を作った。

再び試合が動いたのは69分。FW有馬幸太郎が右サイドで粘ってクロス。これをFW谷村が決めて追加点。谷村は今季計13ゴールで得点王ランキング2位。1位エジガル・ジュニオ(V・ファーレン長崎)に1ゴール差に迫る追加点で、いわきが2対0で勝利。5月3日以来となる、ホームでの勝ち点3を挙げた。

この勝利でいわきは2連勝。10勝7分け8敗の勝ち点37で7位に浮上するとともに、後半戦に向けたチームのリビルトを着々と進めている。

7月19日にFW坂元一渚璃のブランデュー弘前FC(東北社会人1部)への期限付き移籍が発表。8月に入ってDFパク・ジュンヨンの契約解除とMF鏑木瑞生のヴァンラーレ八戸への期限付き移籍が発表となった。一方、鹿屋体育大FW加藤大晟の来季加入内定と特別指定選手認定、そして仙台大DF山内琳太郎の来季加入内定がリリース。さらに湘南ベルマーレからヴァンラーレ八戸に期限付き移籍していたMF柴田壮介の期限付き移籍が発表となっている。

DF山内は身体能力の高さと対人の強さ、ボール奪取能力の高さが特徴のCB。プロのスピードや駆け引きに慣れれば、特別指定選手としてこの先に出場機会を得る可能性は十分。次節はDF大森が累積による出場停止のため、ベンチ入りが濃厚だ。そしてMF柴田壮介はボール奪取能力の高いアンカー。MF大西の負傷離脱の穴を埋め、中盤のスタメン争いに名乗りを上げる。

さらに激しくなるシーズン終盤の戦いに向け、進化を続けるいわきFC。新戦力の適応と活躍に期待したい。

■「積み上げてきたベースの部分で上回る」田村雄三監督

「前節の秋田戦では約3カ月ぶりの勝利を収めることができました。先制点の場面は西川が倒れなかったこと、トレーニングを積んできた加瀬のクロスの質、パワーを持って入った谷村のパフォーマンスも含め、良い守備から良い攻撃ができたゴールになったと思います。

DF生駒仁・堂鼻起暉・石田侑資の後ろ3枚はまだ完璧とは言えませんが、ラインコントロールができつつあり、積極的にチャレンジしてくれている。これからも少しずつ課題を与え、クリアさせることで成長を促したい。そしてFW加藤大晟は中断期間中のトレーニングマッチも含め、いいフィーリングで戦えていた。あれぐらいはできる選手だと思っていますし、秋田戦で他の選手から信頼を得られたはず。ポジションを争うFW陣への刺激になってほしいですし、いい競争が生まれることを期待します。

愛媛FCさんはよく走り、球際も厳しく来るチーム。でも、彼らのストロングはこちらがここまで取り組んできたベースの部分でもある。だからこそ、そこではっきりと上回りたい。そしてビルドアップの時の選択肢を増やすこと、奪ったボールを味方にしっかりとつなぎ自分達がボールを持つ時間を増やすことなど、前節で生まれた課題を克服していきます」

■最終順位に直結する大切な3連戦

明治安田J2リーグは8月3~4日に第25節が行われた。結果を受けた順位は以下の通り。

勝ち点53で首位に立ったのは横浜FC。ホームでジェフユナイテッド千葉と対戦し、後半アディショナルタイムに2点を取る劇的な逆転勝利を挙げた。第24節終了時点で首位に立っていた清水エスパルスはベガルタ仙台に1対2で敗れ、勝ち点52で2位。そしてここまでシーズン1敗だったV・ファーレン長崎がホームで水戸ホーリーホックに敗れ2敗目を喫し、勝ち点51で3位となった。

自動昇格圏の2枠を巡り上位3チームが熾烈なデッドヒートを繰り広げる一方、プレーオフ圏内4枠を巡る争いも白熱。4位はファジアーノ岡山がモンテディオ山形と引き分けて勝ち点42。5位はレノファ山口FCが大分トリニータに2対0で勝利を挙げ、勝ち点41で迫る。6位は同じ勝ち点41で清水に勝利を挙げた仙台。前節7位につけていた千葉は横浜FCに敗れ3連敗。8位に後退し、いわきFCが10勝7分け8敗の勝ち点37で7位に浮上している。

来週末の第27節、いわきはアウェーで千葉と直接対決。そしてホームでの熊本戦を挟み、8月31日には仙台とのアウェーゲームを迎える。目標のプレーオフ圏内入りに向け、8月の戦いは非常に大事。まずは今節、愛媛FCからしっかりと勝ち点3を取りたい。

2024明治安田J2リーグ第26節 愛媛FC戦は8月10日(土)18時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

運命の8月戦線。若き選手達の雄姿をぜひスタジアムで見届けてほしい。

(終わり)


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