【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第18節 いわきFC対ベガルタ仙台
2024明治安田J2リーグ第18節。いわきFCは6月2日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにベガルタ仙台を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。
■ベガルタ仙台とは
ベガルタ仙台は、仙台市を中心とする宮城県全県をホームタウンとするクラブ。
名称は、仙台の夏の風物詩「七夕まつり」にちなんだもの。年に一度、七夕の日に出会う織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)の2つの名を合わせた「ベガルタ」という名称には「県民・市民と融合し、ともに夢を実現する」という願いが込められている。
オリジンは1988年創部の東北電力サッカー部。1994年に東北社会人サッカーリーグ及び全国地域サッカーリーグ決勝大会で優勝。同年、クラブ名を「ブランメル仙台」に改称する。1995年よりジャパンフットボールリーグ(JFL)昇格。ちなみに1997年には大倉智いわきFC代表が在籍している。
1999年に名称を「ベガルタ仙台」に。Jリーグ2部制開始とともにJ2参戦。2001年にJ2で2位となり、初のJ1昇格を果たす。その後は2004-2009年、2010-2021年をJ1で戦った。2021年に19位となり、12年間とどまったJ1から降格してしまう。
1年でのJ1復帰を目ざした2022年シーズンは7位。伊藤彰監督体制2年目の2023年はJ2トップクラスの戦力をそろえ、J1昇格有力候補との前評判も開幕ダッシュに失敗。夏場に連敗を喫して伊藤彰監督が退任し、コーチの堀孝史氏が新指揮官に就任した。だが9月に3連敗を喫するなど、一時はJ3降格も見える順位に低迷。リーグ終盤戦で残留争いのライバルチームから勝ち点を取ってJ2残留も、16位という不本意な成績に終わった。
いわきFCとベガルタ仙台は昨年、2度対戦している。
最初の戦いは3月12日の第4節。東北地方に本拠地を構えるチーム同士の「復興応援試合」として行われた。試合は前半20分にセットプレーの流れから、左SBに入った江川慶城(現・FC大阪)のゴールでいわきが先制。1対0で勝利を挙げている。
2度目の対戦は10月8日の第38節。いわきは前半にMF岩渕弘人(現・ファジアーノ岡山)のゴールで先制するも、前半35分にPKで同点に追いつかれ、57分には仙台MF鎌田大夢のゴールで逆転を許す。しかし68分に途中出場のMF永井颯太(現・東京ヴェルディ)がこぼれ球を蹴り込み同点。2対2の引き分けとなった。
■戦力分析~ベガルタ仙台
今季は新監督として2023までU-17日本代表監督を務めていた森山佳郎氏を招聘。ブラウブリッツ秋田から右SB髙田椋汰など、若手を中心に9選手が新加入した。
今シーズンは第2節で、現在2位につけるV・ファーレン長崎に現状唯一の黒星をつけるなど、開幕7試合無敗の好スタート。4月に1勝1分け3敗と調子を崩すも、5月に1点差のゲームをしぶとくモノにして4連勝し、復調を果たしている。
至近のファジアーノ岡山戦では前半10分にPKで先制するも21分に追いつかれ、後半開始早々に岡山MF岩渕弘人に逆転ゴールを許してしまう。さらに2点を追加され1対4。シーズン最多失点による痛恨の敗戦となった。
連勝こそ4で止まったものの、選手達の能力からすれば第17節終了時点で8勝5分け4敗の勝ち点29で5位、という今の順位に驚きはまったくない。悔しい逆転負けから1週間後、同じ東北勢のいわきに闘志をむき出しにして挑んでくるのは間違いない。
フォーメーションは4-4-2。第17節のスターティングメンバーはGK33林彰洋、DF2髙田椋汰/22小出悠太/DF5菅田真啓/DF39石尾陸登、MF6松井蓮之/MF37長澤和輝/MF27オナイウ情滋/MF14相良竜之介/MF11郷家友太、FW7中島元彦。次節はMF37長澤和輝が累積警告で出場停止。中盤の軸となるのはいわき市出身のMF6松井蓮之だろう。
最も注意すべき存在は右のMF27オナイウ情滋、左のMF14相良竜之介の両サイドハーフ。左の相良はドリブルからのカットインを得意とし、右のオナイウは縦に速くクロスが武器。そして右SBの高田椋汰が高い位置を取ってオナイウと絡み、数的優位を作ってアタッキングサードに侵入してくる。
いわき守備陣は第15節のレノファ山口FC戦でクロスから2失点、第17節の徳島ヴォルティス戦ではFKから失点しており、横からのボールへの対応に課題を残す。仙台が両SHを起点として、いわき守備の3バック脇のスペースを狙ってくるのは間違いない。いわきは要注意選手の個性を把握した上で両サイドを押し込み、彼らに攻撃の時間をなるべく与えないことが大事になる。
■アクシデントに屈せず積み上げた勝ち点1
第16節のアウェーでザスパ群馬に勝利を挙げたいわきFC。第17節、ホーム2連戦初戦の相手は15位・徳島ヴォルティス。いわきは前節からスタメンを3人変更し、右WBに加瀬直輝、左WBにMF大迫塁、インサイドハーフにはMF西川潤が入った。
試合は強風の中、風上のいわきが前半途中から流れをつかむ。22分にDF石田侑資のクロスをFW谷村海那が左足で決めて先制。谷村は今季8G目で得点ランキング2位。
しかしゴール直後にアクシデント。DFの核・照山颯人が負傷交代となってしまう。チームはDF五十嵐聖巳を3バックの右に入れ、右DF大森理生を中央に移して対応。だが、このあたりから徳島が盛り返す。いわきは前半終了間際の48分、FKからゴールを許して同点に追いつかれてしまう。
後半は両チームが決め手を欠く展開。いわきはMF坂岸寛大、下田栄祐、FW近藤慶一を投入し、ゴールを奪いに行く。そんな中、74分にさらなるアクシデント。MF大西悠介が接触プレーから負傷交代となってしまう。その後は徳島が攻勢を強め、徳島FWチアゴ・アウベスが豪快な直接FK。これをGK立川小太郎が横っ飛びで弾き出し、チームを救う。
試合はこのまま1対1でタイムアップ。いわきはここまでチームを支えてきた中心選手2人が負傷退場するアクシデントに屈することなく、勝ち点1を積み上げた。
迎える仙台戦。DF照山颯人、MF大西悠介の回復度合いは気になるところ。だが仮に二人を欠いたところで、今のいわきFCは個人頼みのチームではない。むしろ、出場機会が限られてきた選手達にとって大きなチャンスだ。
今後が楽しみなのはコンディションを上げつつあるMF下田栄祐、そして負傷から復帰したDF生駒仁。彼らの復調は確実に、チームのデプスをより厚いものとするだろう。加えてアタッカーでは、今季サンフレッチェ広島から期限付き移籍するも負傷を引きずっていたFW棚田遼が徐々にコンディションを上げている。今後、棚田が台頭すればFWブワニカ啓太、白輪地敬大も黙ってはいないはず。そして依然として絶対的存在がいない左WB。前節スタメンのMF大迫塁、交代出場の坂岸寛大に加え第16節・ザスパ群馬戦ではMF山下優人が先発。加えてMF嵯峨理久の復帰が待たれる。
さらなるメンバー争いの激化、そして新戦力の台頭を期待したい。
■「今のチームで何ができるのか、自分達のよさを出すにはどうすればいいかを考えたい」田村雄三監督
「徳島ヴォルティス戦についてはさまざまな評価がありますが、アクシデントが続く中、選手達はよくやったと思います。もちろん勝てればよかったですが、簡単ではありませんね。
ベガルタ仙台さんには、もともと個の能力が高い選手がそろっています。そこに森山佳郎監督がプレー強度や球際の強さといった今まで欠けていたピースをしっかりと植えつけて、今季は戦えるチームになりました。それが今の順位に表れていると思います。
仙台さんは前節負けていますし、ダービーですから、この試合に高い意気込みで臨んでくるのは間違いありません。その姿勢をしっかりとリスペクトしつつ、今のチームで何ができるのか、自分達のよさを出すにはどうすればいいかを考えたい。スタジアムに来てくださるたくさんのファンの皆さんの前で勝ち点3を取れるよう、しっかりと準備します」
■熱き東北ダービー。今節こそ勝ち点3を
第17節を終えた今年のJ2。首位を走る清水エスパルスは水戸ホーリーホックに2対1で勝利し、13勝1分け3敗の勝ち点40。2位のV・ファーレン長崎はFWエジガル・ジュニオの単独トップとなる今季9G目でジェフユナイテッド千葉に1対0で勝利し、10勝6分け1敗の勝ち点36。4ポイント差で清水を追いかける。
3位は9勝4分け4敗の勝ち点31で横浜FC。4位はベガルタ仙台に勝利を挙げて8勝6分け3敗の勝ち点30でファジアーノ岡山。ベガルタ仙台は岡山に敗れ8勝5分け4敗で5位に後退。6位は大分トリニータと引き分けたレノファ山口FC。山口の連勝は3でストップし、8勝4分け5敗の勝ち点28。
いわきFCは第17節終了時点で7勝6分け4敗の勝ち点27で7位。プレーオフ圏内の6位・山口との勝ち点差は1。上位をうかがう意味でも、今節は何としても勝ち点3を得たい。
なお6月9日に予定されていた第19節・V・ファーレン長崎戦とのアウェーゲームが長崎のJリーグYBCルヴァンカップ プレーオフラウンド進出によって6月26日(水)に延期。そのためいわきにとっては、今節の仙台戦がいったんJ2前半戦の区切りとなる。そして6月12日(水)には、アウェーでブラウブリッツ秋田との天皇杯2回戦。その後6月16日の第20節・ヴァンフォーレ甲府とのホームゲームから後半戦がスタートする。
前半戦の締めくくりとなる2024明治安田J2リーグ第18節 ベガルタ仙台戦は6月2日(日)13時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信、福島県内では福島テレビで地上波生中継される。
決して負けられない東北ダービー。勝利を目指してひたむきに戦ういわきFCの若き選手達に、熱きご声援を!
(終わり)