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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第38節 いわきFC対ベガルタ仙台

2023明治安田生命J2リーグ第38節。いわきFCは10月8日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきにベガルタ仙台を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■ポイント&レビュー

現在、11勝10分け16敗の勝ち点43で18位のいわきFC。今節の相手は17位のベガルタ仙台だ。

仙台はここまで37試合を消化し、11勝10分け16敗の勝ち点43と戦績はまったくの五分。いわきは得失点差で上回られている状況だ。そのため今節の東北勢対決は、生き残りをかけた激闘となるだろう。

ポイントは
①左サイドの攻撃で相手を押し込めるか
②ロングボールへの対応
③DF遠藤の出場停止による影響

といったところか。

今節、仙台がアグレッシブな戦いを挑んでくるのは間違いないだろう。いわきはここ2試合でつかんだ流れを継続し、勝ち点3をつかみたい。

仙台の分析を行う前に、いわきFCの至近の戦いを振り返ろう。

第36節、ホームでツエーゲン金沢に勝利し、連敗を脱したいわきFC。第37節は東京に遠征し、首位を独走するFC町田ゼルビアと対戦した。

いわきのスターティングメンバーはGK31鹿野修平、DF24山下優人/3遠藤凌/4家泉怜依/6宮本英治、MF33下田栄祐/14山口大輝/19岩渕弘人、FW17谷村海那/18吉澤柊/11有田稜。金沢戦に続き宮本、山下をSBに置く4-1-4-1をチョイスした。

町田は前期のホームでの戦いで、ゲームを優勢に進めるも決定力の差に泣かされ、0対1の悔しい敗北を喫した相手。いわきは持ち前のパワーと走力を前面に出して町田に圧をかけ、アンカー下田を軸に中盤の数的有利を生かし、開始からボールを支配。吉澤・有田・谷村の3トップの粘りと山口・岩渕のBB(インサイドハーフ)の積極的なスプリントで、町田を押し込んでいく。

29分、MF下田がゴール正面でファウルを受けFKを獲得。これを山下が左足で直接決めた。青森山田高出身の山下は、恩師である町田の黒田剛監督の前で見事なゴールを奪ってみせた。さらに41分、谷村が左サイドから見事なミドルシュートを決め2対0に。谷村はチームトップの岩渕に並ぶシーズン6ゴール目を記録。前半を通じて圧をかけ続けたいわきが2点をリードして折り返す。

町田は後半開始から、元いわきFCのMFバスケス・バイロンを投入。劣勢の打開を試みる。しかし、いわきは流れを渡さない。後半開始早々の46分、DF遠藤がインターセプトしたボールをつなぎ、前線にスプリント。MF山下のクロスに走り込み、左足のボレーで決めて追加点。3対0と町田を突き放す。

いわきはその後、再三チャンスを迎えるもFW有田、吉澤が決め切れない。町田は60分、交代選手を入れて立ち位置を変更。セカンドボールの回収率を上げて徐々に普段通りの形を見せ、DFチャン・ミンギュ、FWミッチェル・デュークの得点で1点差に迫る。そして土壇場のパワープレーでGK鹿野が守るゴールを脅かすも、タイムアップ。

いわきはJ1昇格をほぼ手中に収めた首位・町田に真っ向勝負を仕掛け、見事なアップセットをやってのけた。

▼前節のハイライトはこちら

いわきFCの通算成績は11勝10分け16敗の勝ち点43。順位を一つ上げて18位となり、降格圏に沈む金沢そして大宮アルディージャとの勝ち点差は10。残り5試合。J2残留そして中位進出に向け、確かな光が見えてきた。

■戦力分析~ベガルタ仙台

ベガルタ仙台は、仙台市を中心とする宮城県全県をホームタウンとするクラブ。

名称は、仙台の夏の風物詩「七夕まつり」にちなんだもの。「ベガルタ」という名は年に一度、七夕の日に出会う織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)の2つの名を合わせたもの。「県民・市民と融合し、ともに夢を実現する」という願いが込められている。

オリジンは1988年創部の東北電力サッカー部。1994年に東北社会人サッカーリーグ及び全国地域サッカーリーグ決勝大会で優勝。同年、クラブ名を「ブランメル仙台」に改称する。

1995年よりジャパンフットボールリーグ(JFL)昇格。Jリーグ準会員となり、1999年に「ベガルタ仙台」に改称。Jリーグ2部制開始とともにJ2参戦を果たした。

2001年にJ2で2位となり初のJ1昇格。その後は2004-2009年、2010-2021年をJ1で戦った。2021年に19位となり、12年間とどまったJ1から降格。1年でのJ1復帰を目ざした2022年シーズンは7位。シーズン終盤の残り8節で原崎政人監督を解任し、伊藤彰監督を招聘するも、悪い流れを断ち切れなかった。

「GRAV 協創」というスローガンを掲げた2023年シーズンは伊藤監督体制2年目。J2トップクラスの戦力をそろえ、J1昇格の有力候補と目された今季は、開幕3試合で1勝2分けのスタートを切る。

そして3月12日の第4節で、いわきFCと対戦。このゲームは東北地方に本拠地を構えるチーム同士の「復興応援試合」となった。試合は前半20分にセットプレーの流れから、左SBに入った江川慶城のゴールでいわきが先制。1対0で勝利を挙げた。

▼前回対戦のハイライトはこちら

仙台はその後、大崩れこそしないものの、思うように勝ち星を伸ばせない。そして7月に入りモンテディオ山形、清水エスパルス、ツエーゲン金沢、東京ヴェルディに敗れ失速してしまう。

これにより伊藤彰監督が退任し、コーチの堀孝史氏が新指揮官に就任。夏のマーケットでMF長澤和輝を名古屋グランパスから、MF松崎快を浦和レッズから(期限付き移籍)獲得し、中盤を補強。さらに元日本代表FW齋藤学をニューカッスル・ユナイテッド・ジェッツFC(オーストラリア)から獲得。だが8月は1勝3敗、9月に入りファジアーノ岡山、水戸ホーリーホック、ジェフユナイテッド千葉に3連敗して順位を下げた。

しかし前節、チームは息を吹き返す。

ホームで迎えたロアッソ熊本との対戦では、ロングボールを駆使したインテンシティの高いプレーを見せ1対0で勝利。5試合ぶりの白星を挙げ、勢いに乗る。同勝ち点で並ぶ同じ東北勢のいわきを相手に、闘志をむき出しにしてくることは間違いない。

フォーメーションは4-2-3-1か。前節のスターティングメンバーはGK33林彰洋、DF4蜂須賀孝治/22小出悠太/3福森直也/2秋山陽介、MF37長澤和輝/26松崎快/32鎌田大夢/7中島元彦/18氣田亮真、FW13山田寛人。

今節は、前節に出場停止だったCB菅田真啓が復帰してくる他、メンバーに大きな変化はないだろう。警戒すべき選手は、右サイドに入るMF松崎快。この夏に加入したレフティで、カットインしてのクロスやパス、組み立て時のサイドチェンジが得意。交代で入るMF加藤千尋も同じ左利きで、彼らの中への侵入を防ぐことが大きなポイントになる。

またパスセンスに秀で、今シーズン4アシストを記録するMF鎌田大夢は、現在イタリアで活躍する日本代表MF鎌田大地の弟。JFAアカデミー福島から昌平高を経て、2020年に福島ユナイテッドFC入り。2021年の天皇杯福島県代表決定戦でいわきFCとの対戦経験があり、昨年より仙台でプレーする。

今節の大切なポイントは前節と同様に、いかにボールを握って相手を崩していくか。特に、左サイドから積極的に攻撃の形を作り、仙台のストロングである右サイドを押し込んでいくことが重要だ。仙台の失点はクロス対応がきっかけとなっていることが多く、サイドを崩し、いかに質の高いクロスを上げるかも大きなポイントとなる。

懸念はDF陣の編成。今節はDF遠藤が累積警告で出場停止。そして前節と同じメンバー選考とすれば、SBに入るのは本職ではない山下、宮本の二人。仙台が今節もロングボールで背後を狙うシンプルな戦い方を選ぶならば厄介だ。ただし、そこはもちろん想定内。選手一人一人が攻守のタスクを理解してやるべきことを遂行すれば、勝ち点3はおのずと転がり込んでくる。

■「やるべきことは変わらない」田村雄三監督

「町田戦は選手達がよく頑張ってくれました。町田さんをひと言で評すると、徹底するチーム。球際の強さや走力の高さ、ラインを割るまで全員がボールを追う姿勢、そしてセットプレーの強さがある。シンプルにプレーするので、逆に言えば難しいことをしない。それによって起こることへの共通認識を全員が持っており、意思の統一ができている。その徹底が彼らのストロングです。

ただし、球際の強さや走力、最後まで諦めない姿勢は、もちろん我々も大事にしていること。そして確かに町田さんは強いですが、過剰に恐れる必要はなく、弱点もある。そこをしっかりと突き、町田さんのストロングの部分で上回っていこうと選手達に話しました。それができたことが大きかった。

戦術面でもキーとなる約束事をみんながよく理解し、ゲームで遂行してくれました。自分達の強みがどこになるのか。そして、どうボールを動かして相手のやりたいことを無力化するのか。そこを明確にしてしっかりやれば、こっちのペースになると信じていました。

金沢戦の前まで3連敗していましたが、試合内容はそれほど悪くなかった。だから特に何も変えなかったし、自分自身も意識していませんでした。どれだけ連敗しようと次の試合はすぐにやって来る。だからやるしかないし、連敗しようとサッカーを変えるわけでもない。練習を重ねて課題をクリアし、やっていることのクオリティを高めるしかないと割り切っていました。その結果、金沢さんと町田さんに勝つことができました。

もちろんこの2試合でも課題が出ているので、引き続きしっかりトレーニングを積んでいきます。仙台さんは4バックで来ると思いますが、立ち位置は出る選手によって変わるでしょうし、こちらがアンカーを置けば中盤のバランスを変えてくると思います。いわきが前からプレッシャーをかけることはわかっているでしょうから、熊本戦と同じく、ロングボールで背後を狙う展開が多いと予測しています。

でも、こちらのやるべきことに変わりはありません。

いいゲームをした次の試合は、どうしても難しくなるものです。よかった部分を継続し、同じテンションで同じゲーム展開をできる保証はない。でも、それを少しでもできるようにすることが大事。練習メニューとトレーニング強度、コンディショニングなど、さまざまな面に矢印を向け、選手達がいい状態で試合に臨めるよう準備します」

■厳しい戦いはまだまだ続く。

2023明治安田生命J2リーグ第37節は、9月30日に4試合、10月1日7試合が行われた。結果は以下の通り(左がホーム)。

9月30日(土)
仙台1-0熊本
藤枝2-0清水
大分0-1大宮
甲府2-1水戸

10月1日(日)
山形0-1徳島
栃木1-2秋田
町田2-3いわき
磐田1-0長崎
岡山0-5千葉
山口3-2金沢
群馬0-0東京V

上記を踏まえた順位表は以下の通り。

いわきFCが首位を独走する町田を破る金星を挙げた今節。ジュビロ磐田はホームにV・ファーレン長崎を迎えて1対0で勝利。3試合ぶりの白星で勝ち点を65に伸ばし、2位に浮上した。

そして、ともにJ2昇格を果たした藤枝MYFCが、清水エスパルスとの静岡県勢対決に2対0で完勝し、3戦ぶりに勝ち点3をゲット。敗れた清水は15試合ぶりの黒星を喫し、勝ち点64で3位に後退した。今節に行われる磐田と清水の直接対決は、自動昇格圏を巡る決して負けられない戦いとなるだろう。4位は勝ち点62で東京ヴェルディ。10位・ザスパクサツ群馬との対戦は両者譲らずスコアレスドロー。

そしてここに来て、圧倒的な強さを見せているのが5位・ジェフユナイテッド千葉。ファジアーノ岡山のホームに乗り込み、怒涛のゴールラッシュで5対0で快勝し7連勝。勝ち点を60に伸ばし、ヴェルディに2ポイント差に迫る。

水戸ホーリーホックに2対1で勝利を挙げ、勝ち点56で5位・千葉を負うのは6位・ヴァンフォーレ甲府。リーグ戦と並行してACLを戦うため、厳しい日程をどう乗り切るか注目したい。そして7位・長崎(勝ち点55)から11位・モンテディオ山形(勝ち点52)まで、3ポイント差以内に5チームが並ぶ。プレーオフ圏内争いはここまでか。

一方の残留争い。22位・大宮アルディージャは、後半アディショナルタイムに決勝ゴールを挙げて大分トリニータに1対0で勝利し2連勝し、勝ち点を33に伸ばした。依然最下位ではあるものの、21位のツエーゲン金沢と並んだ。

降格圏に沈む金沢は20位・レノファ山口FCに2対3で敗れ6連敗。山口は2連勝で勝ち点42を確保。金沢、大宮に9ポイント差をつけた。

清水を破った12位・藤枝(勝ち点45)から20位・山口(勝ち点42)まではダンゴ状態。町田を倒したいわきは一つ順位を上げて18位。勝ち点43を確保してJ2残留が見えてきたとともに、いよいよ藤枝、13位・水戸ホーリーホック、14位・徳島ヴォルティス、15位・ブラウブリッツ秋田らを射程圏内にとらえた。ただし19位・栃木SC、20位・山口(ともに勝ち点42)とはわずか1ポイント差であり、気を抜くことはできない。

いよいよシーズン終盤。残りのホームゲームは3試合。同じ東北勢の仙台との戦いは、もちろん勝ち点1で満足できる試合ではない。仙台に勝てば、今シーズン初の3連勝。そして仙台の後に迎える相手は、前期に悪夢の9失点を喫した清水エスパルス、そして好調・ジェフユナイテッド千葉。首位・町田を倒した勢いのまま、上位チームを叩く。そのためにも、仙台には絶対に負けられない。

明治安田生命J2リーグ第38節 ベガルタ仙台戦は10月8日(日)14時より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。

ホームゲームは残り3試合。ハワイアンズスタジアムいわきで、DAZNで。東北決戦に挑むいわきFCに、熱きご声援を!

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