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【マッチプレビュー】2024明治安田J2リーグ第33節 いわきFC対栃木SC

2024明治安田J2リーグ第33節。いわきFCは9月29日(日)、ハワイアンズスタジアムいわきに栃木SCを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■栃木SCとは


栃木県宇都宮市をホームタウンとする栃木SC。正式名称は「栃木サッカークラブ」。前身は1947年に発足した栃木県初のクラブチーム「栃木蹴球団」。「栃木教員サッカークラブ」への改称を経て1994年に一般社会人選手に門戸を広げ、現在の栃木SCに名称を変更する。1999年に関東サッカーリーグに昇格して優勝。全国地域サッカーリーグ決勝大会で準優勝し、JFL昇格を果たす。

2006年の天皇杯に県代表として参戦。3回戦で東京ヴェルディに勝利を挙げる快挙を成し遂げ2007年にJリーグ準加盟クラブとして承認を受ける。2008年に選手をオールプロ化。JFLで上位に入り2009年Jリーグ加盟。J2へと戦いの場を移した。J2では2015年に最下位でJ3降格も2年で復帰。2018年からはJ2で戦い続ける。

栃木SCと縁のあるいわきFCの選手がFW有馬幸太郎。有馬は鹿島アントラーズ時代の2019年、天皇杯栃木SC戦でデビュー。この試合でプロ初ゴールを挙げている。その後、2020年に栃木SCに期限付き移籍。2年間でリーグ戦42試合に出場している。

栃木SCのこれまでの最高順位は2013年の9位。2018年のJ2復帰以降、2020年に田坂和昭監督の元で10位に入るも、それ以降はリーグ下位の成績が続く。元福島ユナイテッドFC・時崎悠監督体制2年目の2023年は開幕4試合勝ちなしと低調なスタート。いわきFCとは4月23日の第11節で初対戦を果たしている。

試合は開始2分、栃木がFKからのゴールで先制。栃木はその後もペースを握る。いわきは後半に入って再三ゴールに迫るもゴールならず、栃木が1対0で勝利している。

二度目の対戦は7月5日の第24節。J2残留を見すえる下位同士の直接対決となった。試合は前半をスコアレスで折り返し、いわきが71分、MF岩渕弘人(現・ファジアーノ岡山)のミドルシュートで先制。1対0で勝利を収めている。

栃木はその後、シーズン終盤に失速。残留争いに巻き込まれたが第41節でJ2残留を決め、最終順位19位でシーズンを終えている。

■2024年戦力分析~栃木SC


今季はかつてジュビロ磐田の黄金期を支えた元日本代表DF田中誠氏を新監督に招聘。田中氏はJリーグで初めての監督就任となった。しかし開幕2連敗を喫するなど序盤から苦戦。チームは下位に低迷する。

いわきFCとの前期の対戦は4月28日の第12節。いわきは前半からペースを握り、28分にロングスローの流れから右WB五十嵐聖巳がクロス。これにFW谷村海那が合わせ見事な先制ゴール。いわきはその後も栃木に圧をかけ続け、セカンドボール争いで上回り続けた。後半に入ってもいわきペースは続き、幾度となく決定機を得るもゴールならず。栃木は終盤にゴールチャンスを作るも、いわき守備陣が身体を張って試合を締めくくった。

栃木SCはその後、第15節終了時点で3勝3分け9敗で降格圏に低迷。大きな課題がリーグワーストの失点数だった。チームは5月に小林伸二新監督を迎えて立て直しを図り、6月の第20~21節で大分トリニータ、ジェフユナイテッド千葉に連勝。夏の移籍期間にDF坂圭祐をガンバ大阪から完全移籍で、FW山本桜大を柏レイソルから、MF玄理吾を徳島ヴォルティスからそれぞれ期限付き移籍で獲得。J3降格圏からの巻き返しを図る。

小林監督就任後は得点力が向上。失点数55は現在もリーグワーストだが減少傾向にある。8月末の第29節ではV・ファーレン長崎と対戦。終了間際にFW南野遥海のゴールで追いついて1対1の引き分け。だが第30~31節にかけて藤枝MYFC、水戸ホーリーホックに連敗。特に第31節の水戸戦は6分にFW宮崎鴻のゴールで先制。前半を2対1で折り返すも後半に2点を奪われ逆転負けを喫してしまう。

翌週の相手は19位・鹿児島ユナイテッドFC。チームはこの6ポイントゲームで奮起する。

開始2分で鹿児島に先制を許して後半を迎えるも、81分にFW小堀空のゴールで同点に追いつく。さらに猛攻を続け90分、背後へ抜け出したMF南野遥海がPKを獲得。これを南野自ら決めて劇的な逆転勝ち。J2残留に望みをつないだ。水戸戦の逆転負けから鹿児島線の劇的な逆転勝ち。チームは復調傾向にあると見ていい。

第32節終了時点で7勝8分け17敗の勝ち点29。順位は降格圏内の18位。残留圏内の17位・大分トリニータとの勝ち点差は4。一方、前節の勝利で19位・鹿児島との勝ち点差を6と広げている。フォーメーションは3-4-3。第32節・鹿児島戦のスターティングメンバーはGK27丹野研太、DF23福島隼斗/5大谷尚輝/33ラファエル、MF22青島太一/16玄理吾/15奥田晃也/10森俊貴、FW42南野遥海/19大島康樹/32宮崎鴻。

プレースタイルはシンプル。後方から丁寧にビルドアップすることは少なく、ロングボールを使って相手を自陣に押し込み、セカンドボールを奪ってつなぎ、サイドからのクロスでゴールを陥れる。前節の徳島に続き3バックを敷く栃木とのミラーゲーム。この試合も1対1のバトルがカギを握るだろう。

いわきはまず前線からGKやCBにしっかりプレッシャーをかけ、いいボールを蹴らせないこと。特に前線のターゲットマンFW宮崎鴻は大型で競り合いに強く要注意。そして宮崎と交代で出場するナイジェリア人の長身FWイスマイラは2019年から2021年夏まで福島ユナイテッドFCに在籍。天皇杯福島県県代表決定戦などでいわきFCと相まみえた経験を持つ。いわきDF陣はまず、彼らとのファーストバトルを制したい。

FW宮崎やイスマイラが競って落としたボールを拾いに来るのがシャドーのFW南野遥海や大島康樹、ボランチのMF玄理吾や青島太一、神戸康輔ら。彼らとのセカンドボール争いに負けてはならないのは言うまでもない。特にFW南野は左足のシュートを得意としており、決して前を向かせてはならない。

そして中盤の選手がつないだボールをサイドで展開するのがMF森俊貴、石田凌太郎、大森渚生らWB陣。特にMF森の縦のスピードには要注意。そして左足のクロスを得意とする大森はいわきDF大森理生の実兄だ。

ロングボール主体の栃木SCと、ボールを保持して動かすいわきFC。今節のゲームはおそらく、いわきがボールを持つ時間が長くなる。いわきは自陣でのボールロストを避け、栃木をしっかりと相手陣内に押し込んでゲームを進めたい。そうなれば失点を避けたい栃木は5バックでゴール前をがっちりと固めてくる。そこをしっかり崩し、クロスを上げ切り、シュートを打ち切ることができるか。その「徹底」が今節のポイント。特にMF山口大輝、西川潤、柴田壮介ら中盤の選手に期待したいのがミドルシュート。鹿児島戦の西川の先制点のような脅威を示すことで、強固な守備ブロックを敷く栃木DF陣をおびき出したい。

J2残留に向け、もはや1試合も落とせない状況にある栃木SC。アウェーの地・いわきから勝ち点を持ち帰るため、なりふり構わぬ戦いを挑んでくるのは間違いない。1点の重みが増すシーズン終盤。いわきはしっかりと先制点を取るだけでなく2点目、3点目を奪いたい。そして確実にゲームをクローズする試合終盤のリスクマネジメントも、この先のゲームでは重要になる。

■シーズン終盤に入り新戦力が台頭


第24節から第27節までJ2参入後初の4連勝の後、痛恨の2連敗。第30節で鹿児島ユナイテッドFCに勝利するも翌31節にホームでV・ファーレン長崎に完敗を喫したいわきFC。前節はチームはアウェーの地・徳島に乗り込み、徳島ヴォルティスとのリスタートの一戦に臨んだ。

7位・いわきFCと12位・徳島の勝ち点差は4。徳島はJ1昇格プレーオフ進出のため、絶対に落とせない一戦だった。いわきは前節からスタメン1名を変更し、この夏に湘南ベルマーレからの期限付き移籍で加入したMF柴田壮介がアンカーで初先発。

強い風と雨のコンディションの中、いわきはロングボールを使ったシンプルな組み立てで慎重に試合に入り、MF柴田を中心にセカンドボールを拾って優位に立つ。風上の徳島は前半途中からボールを握っていわき守備陣を押し込み、決定機を迎える。だが、いわきも粘り強くゴールを死守しスコアレスで前半が終わる。

後半。風上のいわきはMF加瀬直輝に代えてMF杉山怜央を投入し、右サイドをテコ入れ。杉山は果敢なドリブル突破で期待に応えた。試合が動いたのは51分。この試合も左WBに入ったMF山下優人のCKをFW有馬幸太郎がヘッドで押し込み、いわきが先制。風上のいわきはその後も優位に試合を進める。

終盤、長身のFWブラウン ノア賢信を左サイドに張らせ、ゴールをこじ開けに来た徳島。いわきはMF柴田に代え坂岸寛大、MF杉山に代え長身のDF速水修平を投入して5バックを敷き、危なげなくゲームをクローズ。勝ち点3を持ち帰った。

この結果でいわきは14勝7分け11敗。勝ち点49で7位。6位・ジェフユナイテッド千葉と同勝ち点も、千葉が得失点差で上回っている状況。目標のプレーオフ圏内入りに向け、この先も緊張感あふれる戦いが続く。

シーズン終盤に入りMF柴田、杉山ら新戦力が台頭、DF速水が復帰を果たしたことは明るい材料といえる。運動量豊富な柴田は徳島戦でチーム随一の走行距離を記録。しっかりとセカンドボールを回収して守備の安定に貢献した。そして4月のルヴァンカップ・アルビレックス新潟戦以来の出場となった杉山はFC東京U-18~作新学院大出身の3年目。これまで負傷がちだったがスピードに優れ、足元で受けてドリブルで相手をはがす対人能力はチーム随一。今のコンディションを維持できれば、この先の切り札になり得る。

柴田の好パフォーマンスは、MF下田栄祐の気持ちに火をつけたことだろう。そして杉山が台頭した右サイドでは、MF加瀬直輝、MF五十嵐聖巳を交えた3人のポジション争いが過熱している。残念ながら今季、昨年ほどのインパクトを残せていない下田、徳島戦に前半で交代となった加瀬、ベンチ外となった五十嵐。彼らのリバウンドメンタリティと成長意欲が、今後のチームに好影響をもたらすことを期待したい。

■「相手よりも、自分達に矢印を向けたい」田村雄三監督


「徳島戦は雨と風が強い中、ゲームへの入りをシンプルにすることを意識。前半途中からボールを握られる展開になりましたが、しっかりと耐えつつ、連動してボールを奪いに行くことができました。徳島さんは先制されたゲームで勝てていないため、後半のいい時間帯に点を取れて非常によかったです。

守備ではラインコントロールとプッシュアップ、スライド、クロスの攻防など、継続的な課題を与えています。徳島戦で出た課題の一つがゲームコントロール。状況が悪ければラインをいったん切ってゲームをコントロールすることも、特にここからは大事です。幸いDF大森、堂鼻、石田の3バックは完成度はまだまだですが、試合ごとに少しずつよくなっている。残りの試合でしっかりと積み上げていきます。

アンカーで起用した柴田は守備力があり、奪ったボールをシンプルに味方につけられる選手。球際に強く、徳島戦ではしっかり身体を張ってセカンドボールを拾ってくれました。そして後半から入れた杉山は直前のトレーニングマッチで2点取っており、何かやってくれる期待を込めて起用しました。いいパフォーマンスだったので、今後も継続してほしいところです。

シーズン終盤に差しかかり、ここから簡単な戦いはありません。栃木さんは下位にいますが、決して油断のできない相手。今節は難しいゲームになるでしょう。ただし、相手のことばかり考えるのではなく、これまでの試合でできたこと、できなかったことをしっかり整理し、自分達に矢印を向けていきたい。幸い徳島から栃木そして藤枝MYFC、ファジアーノ岡山と同じ3バックのチームとの戦いが続くので、より自分達の成長にフォーカスできる。少しでもいい部分を高め、課題を減らしていきます」

■プレーオフ圏内入りに向け、いよいよ残り6試合


明治安田J2リーグは9月21~22日に第32節が行われた。結果を受けた順位は以下の通り。

藤枝MYFCとのダービーを制して3連勝し、勝ち点71で首位に立つのは清水エスパルス。勝ち点70で追いかける2位は大分トリニータと引き分けた横浜FC。3位V・ファーレン長崎はザスパ群馬に勝利し、いわきFC戦に続く2連勝で勝ち点60。2位・横浜との勝ち点差は10。

4位ファジアーノ岡山は水戸ホーリーホックと引き分けて勝ち点52。5位ベガルタ仙台はヴァンフォーレ甲府と引き分け、岡山と同勝ち点で並ぶ。そして6位はジェフユナイテッド千葉。FW小森飛絢のハットトリックでレノファ山口FCに4対1で勝利し勝ち点49。千葉に敗れたレノファ山口FCはプレーオフ圏外の9位に後退した。

いわきFCは第32節終了時点で14勝7分け11敗の勝ち点49で7位。同勝ち点の6位・千葉との得失点差は8と開いている。そして8位はモンテディオ山形。3連勝を挙げ、勝ち点48。1ポイント差でいわきに迫る。

2024明治安田J2リーグ第33節 栃木SC戦は9月29日(日)15時半より、ハワイアンズスタジアムいわきにてキックオフ。試合の模様はDAZNでのライブ配信に加え、福島放送で地上波生中継される。

激戦続くJ2はいよいよ残り6試合。「魂の息吹くフットボール」をぜひ、ハワスタで見届けてほしい。

(終わり)

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