【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第16節 いわきFC対大宮アルディージャ
2023明治安田生命J2リーグ第16節。いわきFCは5月17日(水)、いわきグリーンフィールドに大宮アルディージャを迎える。この試合の見どころについて解説していこう。
■試合の見どころ
清水エスパルス戦の大敗で最下位に転落し、現在、勝ち点11で22位(最下位)のいわきFC。苦しい戦いが続く中、今節のJ2はミッドウィーク開催。相手は21位の大宮アルディージャだ。
この試合の見どころは
①右SB嵯峨不在の穴を誰が埋めるか
②両サイドのマッチアップ
③いわき攻撃陣の編成
といったところか。
いわきFCの至近の戦いを振り返ろう。
前節は東北ダービー。ホームでの対戦相手は8位・ブラウブリッツ秋田。スターティングメンバーはGK 21高木和徹、DF 16河村匠/3遠藤凌/4家泉怜依/5速水修平、MF 14山口大輝/24山下優人/13鏑木瑞生/8嵯峨理久、FW 18吉澤柊/9近藤慶一。
累積警告によりMF宮本英治が出場停止。代わりに入ったのはルーキー鏑木瑞生。鏑木は今季SHで出場してきたが、ボランチで初先発。右SH加瀬直輝の欠場により、もともと右SBの嵯峨が右SHに上がり、右SBにルーキー速水修平を起用。速水は前々節にCBで初先発したが、今節はSBでの出場となった。そして今節、シーズン序盤の負傷で戦列を離れていたMF山口大輝が左SHで復帰したのは、今後に向けた明るい材料。そして2トップは清水戦でゴールを挙げた吉澤柊と、特別指定選手の近藤慶一。
いわきFCとブラウブリッツ秋田。インテンシティの高いプレースタイルを貫く両チームの顔合わせは、ロングボールの応酬で激しく攻守が入れ替わる展開となる。
14分、秋田の攻守の要・MF諸岡裕人が負傷退場。そしていわきは44分、右クロスからMF山口が得意のヘディングシュートを放つも、秋田GK圍謙太朗に阻まれる。
74分、秋田のカウンターからの決定機をDF河村匠が懸命のクリア。ゴールを死守するも、この直後に試合が動く。MF嵯峨がスライディングで相手と接触し、このプレーにレッドカードが提示されて秋田にPKを献上。GK高木和が好反応で止めるも、こぼれ球を決められて失点。これが決勝点となり秋田が勝利。いわきFCは痛恨の5連敗。3勝2分け10敗の勝ち点11で22位となった。
今節の相手・大宮は現在、4勝1分け10敗の勝ち点13で21位。
チームを2022年から率いる相馬直樹監督は大倉智代表の早稲田大ア式蹴球部の後輩。さらに村主博正監督とは、FC町田ゼルビア監督時代の2014年から6シーズンを監督とコーチとしてともに戦った間柄。そして両チームは、ともにアンダーアーマーのユニフォームをまとう同士でもある。多くの縁のあるチーム同士が闘志をむき出しにして戦うガチンコマッチ。
そんな中、不動の右SBとしてチームを支える嵯峨の出場停止は痛い。ここ2試合でDF遠藤、MF宮本と主力選手の出場停止が続いていたが、今回誰が、どのような形で嵯峨の穴を埋めるのか。そして嵯峨の欠場は、出場チャンスを狙う選手にとってはチャンス。村主監督のプランに注目するとともに、新たなヒーローの台頭を期待したい。
■戦力分析~大宮アルディージャ
大宮アルディージャは、埼玉県さいたま市をホームタウンとするクラブ。名称の「アルディージャ(Ardija)」はスペイン語でリス(旧・大宮市が1990年の市制施行50周年記念時に制定したマスコット)を表す「Ardilla」に由来する。
前身は、1969年に日本電信電話公社の埼玉管内で結成された電電関東サッカー部。85年、民営化に伴いNTT関東サッカー部へ改名し、翌年、日本サッカーリーグ2部昇格を果たす。
93年に発足したJリーグには参加せず、ジャパンフットボールリーグ(旧JFL)に参戦。97年に佐々木則夫氏が監督に就任。その後、NTT再編に伴う廃部騒動を乗り越えてプロ化が決定。埼玉県大宮市に本拠地を移し、98年にチーム名を「大宮アルディージャ」と改名。翌年からJ2参戦を果たす。
2004年に最終順位2位でJ1に昇格し、10シーズンを戦った。その後2016~2017年もJ1に在籍し、2017年にJ2降格。2018年からはJ2での戦いが続く。昨年は開幕から低迷が続き、5月に相馬直樹監督が就任。最終順位19位でJ2残留を果たした。
2023年は相馬監督体制2年目。GK笠原昂史(←長崎)、DF浦上仁騎(←甲府)、大森理生(←FC東京から期限付き移籍)、鈴木俊也(←早稲田大)、MF石川俊輝(←甲府)、高柳郁弥(←東洋大)、阿部来誠(←大宮ユース)、FWアンジェロッティ(←柏レイソルから期限付き移籍)、大澤朋也(←愛媛FC)、室井彗佑(←東洋大)らを補強。
今季は開幕から第8節まで4勝4敗。しかし4月半ばから6連敗を喫して順位を落とし、第15節終了時点で4勝1分け10敗の勝ち点13で21位。
前節・ファジアーノ岡山戦のフォーメーションは3-4-2-1。スタメンはGK 1笠原昂史、DF 25誇田裕太郎/17新里亮/5浦上仁騎、MF 22茂木力也/7小島幹敏/16石川俊輝/46貫真郷、MF 33室井彗佑/13山崎倫、FW 19アンジェロッティ。試合は岡山に1点のリードを許した後半アディショナルタイム、途中出場のFW柴山昌也が中央を突破。同じく途中出場したFW富山貴光が劇的な同点ゴールを決めて1対1の引き分け。連敗を6で止めた。
大分トリニータやジュビロ磐田に勝利するなど地力の高さを示す一方、6連敗を喫した主な要因は決定力不足と推測される。アタッキングサードへの侵入回数は決して少なくないが、フィニッシュの精度を欠いた。これはFW陣の負傷の影響も大きく、もともとチャンスメイクの質は高い。負傷者が復帰して連敗をストップさせたことで、得点感覚は戻りつつある。
サイドでのマッチアップはこの試合の大きなカギ。前節は後半から途中出場したMF48柴山昌也、MF39泉澤仁の二人はJ2屈指のドリブラー。カットインからのクロスやシュートの精度も高い。泉澤はおそらく後半から出場し、いわき守備陣をかき回しにかかるだろう。
まずはクロスを上げさせないこと。そして上げられた時の対応も重要だ。いわきはDF嵯峨が不在の中、どのような策を講じて大宮のサイド攻撃を封じ込むかに注目したい。
点取り役を担うのはFWアンジェロッティ、そして岡山戦終盤に同点ゴールを決めたベテランFW富山。そしてFW9中野誠也も裏への抜け出しを得意とする。スピードと得点感覚の優れるアタッカー陣には警戒が必要だ。
■「何としても勝ち点を取りたい」村主博正監督
「清水エスパルス戦の大量失点を受け、守備の約束事を徹底的に見直しました。ビルドアップをせずロングボールを蹴ってくる秋田さんを相手に立ち位置を工夫したことで、守備については選手達も手応えを感じていたと思います。IQの高いMF山口の復帰で攻撃の形が増え、周りの選手達も安心してプレーできるようになりました。どうにかして1点を取りたかったのですが、取れなかった。非常に残念です。嵯峨のレッドカードについては結果は覆りませんので、前向きにやっていきたいと思います。
相馬さんと初対戦になりますが、一緒にやっていた時よりもアップデートされていて、より柔軟な発想でできることを増やしているように思います。DFや中盤のボールを持てる選手の特徴をより生かしつつ、2トップには相変わらずいい選手を置いている。もちろん私情を挟む余裕などありません。何としても勝ち点を取りたい。
大宮さんは6連敗していましたが、前節終盤で同点ゴールを決めて引き分けた。チームとして手応えのあるゲームをしたはずなので、しっかり対策せねばなりません。そこを含め、どんなメンバーが適正なのかを考えたい。もう一度フラットな目線で選手を見て、動けている選手、パワーのある選手を使いたいと思います」
■1試合の結果如何で順位が大きく変動する状況に変わりなし。
第15節を終え、首位はゴールデンウィークの連戦を含む直近5試合を3勝1分け1敗で乗り切ったFC町田ゼルビア。東京ヴェルディを破り、10勝3分け2敗の勝ち点33で頭一つ抜け出した。2位は9勝2分け4敗の勝ち点29で大分トリニータ。前節はロアッソ熊本と引き分け、町田を勝ち点差4で追う。
プレーオフ圏内の3位以下は大混戦。3位は8勝2分け5敗の勝ち点26で東京ヴェルディ。同じ8勝2分け5敗で得失点差で追うのはV・ファーレン長崎。そして5位は、いわき戦に続く大量得点で藤枝MYFCを圧倒した清水エスパルス。シーズン計33得点という圧倒的な攻撃力で、ここ5試合を4勝1分けでクリアし、6勝7分け2敗の勝ち点25で昇格圏内入り。6位は7勝4分け4敗の勝ち点25でブラウブリッツ秋田。
7位以下も混戦が続く。7位ザスパクサツ群馬から14位ツエーゲン金沢までが勝ち点差5以内、そして15位のジェフユナイテッド千葉から最下位のいわきまでが、勝ち点差6以内にひしめく。
最下位に沈むいわきFCと大宮アルディージャの「裏天王山」。混戦が続くJ2は、たった1試合の結果如何で順位が大きく変動する状況に変わりはない。大宮戦を終えた日曜はアウェーでジュビロ磐田との対戦。この連戦をいい形で乗り切り、中位浮上のきっかけをつかみたい。
明治安田生命J2リーグ第16節 大宮アルディージャ戦は5月17日(水)19時より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNでライブ配信される。
熱きアンダーアーマー対決。いわきFCの選手達の雄姿を見届けに、ぜひ、いわきグリーンフィールドへ。
(終わり)