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【FM店主日記Day9】「2024年の北関東浄水器問題、あるいは蛇口の互換性と神の存在について」 (前編)

この数ヶ月間に渡り、俺を悩ませ続けた問題があった。

問題があった、と過去形になっているのは今日、つまり2024年8月27日(火曜日)、晴れ時々激しい雨、気温30度の午前10時32分にその問題は解決したからだ。

それは「2024年の北関東浄水器問題、あるいは蛇口の互換性と神の存在について」としてのちに知られることになる問題なのだが、俺は浄水器のつけ口と蛇口に互換性がない、と言う致命的とも言える問題に直面し、その理不尽さに震えていた。手元にある浄水器のつけ口が22mmネジ式の蛇口であるのに対して、それを付ける場所の候補として挙げられている蛇口がこともあろうに16mm蛇口だったのだ。これはまさに悲劇としか表現しようがない現象であり、しかし受け入れざるを得ない現実でもある。なぜに神はこんなにたくさんの蛇口の種類をお創りになられたのか?おお神よ、狼よ、あなたの子供である俺に今すぐ教えてくれよ。

浄水器が取り付けられないことは大きな問題だ。浄水器が使えないことにより俺は飲料水をコンビニにて必要に応じて購入するという必要性に常に迫られていた。水は重い。そして蛇口を捻れば出る液体をわざわざお金を払って買うことは俺の信念に反する行為だ。それに加えてミネラルウォーターと呼ばれるその商品はペットボトルと呼ばれる石油を主な原料とするプラスチックの容器に格納されて運ばれてくる。蛇口を捻れば出る水をわざわざ石油由来の容器に格納してさらにガソリンなどの燃料を使って運送してくる、と言うのは俺だけでなく、世界全体を見回してみても、コンビニが多少の利益を上げることができる、と言う点を除いて、メリットなど何もない、言ってしまえば愚行である。

だからこそ俺はこの蛇口の互換性問題に悩まされていた。蛇口への設置が遅れた影響ですでに俺は30本以上のペットボトルをリサイクルに出していた。

ご存知の通り、16mm蛇口にはネジの部分がないため、ネジで固定する仕様になっているナット部分を固定することができない。これをうまく固定し、さらに水が漏れない状態を保つためにはこれは専用のパーツを購入することが最も間違いのない方法として知られている。

そもそも専用のパーツは浄水器を購入した際に付属品として無償で付いてきたのだが、俺は迂闊にもこれらのパーツを無用の長物と認識し、燃えるゴミとして捨ててしまったのだ。あの時の感触は今でも覚えている。あいつらは自分たちの存在意義を俺に対して声の限りに叫んでいたのだが、俺は無情にもその声に耳を貸すことなく、月曜日か木曜日だかの燃えるゴミの日の前の夜にゴミ置き場に市で指定された透明な袋に入れられたあいつらをこの自らの手で捨てたのだ。

これはあいつらからの復讐に違いない。捨てられ、焼却炉で燃やされたあいつらの怒りが呪いとなって、この蛇口の互換性問題と姿形、そして文脈、名前、年式を変え、俺の前に再び姿を現したのだ。

しかし、俺は負けなかった。俺は果敢に戦った。浄水器の本体をホームセンターに持参し、こういう水回りの案件について詳しそうな50代くらいの男性店員を呼び止め、浄水器についての知見を求めた。

「こういうのは専用のパーツを直接メーカーから取り寄せた方が良いですよ」とその男性社員は彼の培ってきたこれまでの経験とこれからの未来に寄せる微かな希望を託すかのように俺に言った。ひどく暑い日の朝だった。俺は片道1.5kmのホームセンターまでパーツを求めて歩いて言って汗だくだった。セミはまだ鳴いていなかったのでおそらくまだあれは六月だったはずだ。

先ほど、俺は「水が漏れない状態を保つためにはこれは専用のパーツを購入することが最も間違いのない方法として知られている」と述べたが、これは何を隠そうこの時にホームセンターのおじさん店員に教えてもらった知見である。

なるほど、メーカーに直接問い合わせれば良いのか、と答えの断片を掴むことに成功し俺は悟りの境地に達したようなユーフォリアに包まれ、そこから真っ直ぐに帰宅した俺はこの案件をおよそ2ヶ月に渡り放置した。そう、すっかり忘れていたのだ。

その時の俺はどのようなパーツがこの浄水器問題を解決するために必要なのか、という重要な情報をまだ知らなかった。そしてそれを調べるのが面倒くさい、と言う理由でこの案件は2ヶ月という長期間に渡り放置されたのだ。なぜならば、必要なパーツの調べ方がわからない、と言う致命的な必要知識の欠落に対して、俺は見て見ぬふりをする、と言う送りバントのような先送り戦術をくり広げたのだ。

その2ヶ月にわたる放置はある時、急な進捗を見せる。俺はある時閃いた。他でもない、必要なパーツを突き止めるための方法をだ。それは、浄水器の型番をGoogle検索し、お客様相談センターに電話をかける、と言う革命的な方法だ。これは名案だと膝を打った俺は手持ちのデバイスで浄水器の型番を入力し、検索結果が表示されるのを待った。

後半に続く)






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