【FM店主日記Day81】白と黒のスプーンに感化されて久しぶりにめんどくさい料理がしたくなったという話
ネットフリックスで「白と黒のスプーン」を観ている。
イカゲームもかなり面白かったけれど、白と黒のスプーンはそれの料理人版で、かつ登場人物がリアルなシェフという点でより臨場感のある演出になっているし、シェフたちが繰り出す料理のバリエーション、コンセプト、そしてテクニックが素晴らしい。料理は曲作りとかと同じでインスピレーションとアイデアというかコンセプト作りが八割でデリバリーの部分、つまりそれをいかにして実現させるかは二割くらいなイメージでいつもとらえているのだけど、料理に命をかけてきた人たちの本気のコンセプト作りは見ていてとても清々しいし、共感できるし、ショーとしても娯楽性が高い。
そして、審査員の二人も上品な感じで、いうまでもなく食べ方も綺麗で、審査の時の基準も明確で、彼らもまた番組にとってとても魅力的な存在になっている。一人はソウルでモスという韓国唯一のミシュラン三つ星レストランを営むオーナーシェフ、アン・ソンジェ、もう一人は「外食産業の王」と称される有名料理家で、国内外で20種類の外食チェーンを経営するペク・ジョンウォン。二人とも料理に対する理解力が半端なく高く、一流の料理人が作った料理を評価する姿はさながらグランドマスター同士のチェスの対決を見ているようでもあり、メッセージを受け取り、それを咀嚼して解釈し、それに対する思慮深い回答を返す。お互いがお互いを理解した上でそれに対してさらなる願望を重ねていくハイレベルな攻防。
そして、韓国作品の他の例に漏れず編集というか、演出というか、見せ方、そして見せるタイミングが絶妙にうまくて、ついつい次のエピソードを再生してしまう。
ネットフリックスのライバルはYouTubeでもアベマでもHuluでもアマプラでもない。ネットフリックスは人の睡眠時間を削ることをそのマーケティングゴールとしている。いかにしてあともう一本見せられるか、とれだけ人を釘付けにできるか、画面からどうすれば人は目を離さずにいられるか。イカゲームの時もほとほと感心したけれど、今回のこの白と黒のスプーンのシリーズには感心しっぱなしだし、あとまだいくつかエピソードが残っているので今後の展開にも期待したい。
そして、これを見ていて「料理とは最高のクリエイティブである」とすっかり感化されすぎてしまったので久しぶりに手の込んだ料理とか作ってみたいという気持ちになっている。先日のパクチーイベントの感触とインスピレーションが残っているうちに次なる一歩を模索してみようかとこの数日色々とアイデアを頭の中で巡らせているところだ。
といっても、ちょっとやる気が出ただけで、結果何もしない可能性も十分にあるので過度な期待は禁物だ。過度な期待ほど人をガッカリさせてしまうスパイスはこの世に存在しない。期待なんてしてはならない。期待するなよ。
フェルマータ店主 KAORU
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