【FM店主日記Day49】リズムと自転車の偉大なる共通点に関する考察日記
人生においてリズム感、というものは結構重要である。
人間がリズムという概念をいつごろ発見したのか、あるいは人間以外の生物にもリズムという概念があるのかどうか、はたまたまだ実は発見されていないのか、と言うのは全く持って謎だし、ナスカの地上絵以上に調べても調べても意味がわからないというか、そもそも調べようがないような気もする。しかしながら、先人たちがリズムという概念をどこかの段階で発達させ、そしてそれは何万年、あるいは何百万年もかけてやがて音楽、という概念にまで発達した、というのは想像に難しくない。
生物の鳴き声を聞いて、そこにパターンや繰り返しを認知し、その繰り返しを予測可能なものであることとして捉えることにより安心感を得る、ということを先人たちはおそらく最初はやっていたのだろう。それなりに発達した声帯を持つ先人たちは他の動物の鳴き真似をしたりすることで音を発する技術を磨き、やがてモノを叩く、こするなどの行為により自らもリズムを生み出す、という行為に昇華させていったに違いない。
このようにリズムというのもは人間が発展していく段階で極めて重要な役割を果たしていた、ということが明確であるにも関わらず、時々、リズム感がない人、あるいはリズム感になんらかの不具合が認められる人に遭遇することがある。会話のテンポが合わない、あるいは、歩く時に足を出す右左右左右左右左のタイミングに微妙な、そして毎回異なったシンコペーションが潜んでいるなどのあからさまな場合もあれば、カホンやジャンベをちょっと叩いてもらった際にリズムをキープするという行為が難しいと感じる人もいれば、ジョークや書く文章にグルーブ感がない、といったケースも見受けられる。そのようなことから、人類の発展においてリズムは必須であったが、人類全員にとってこれは必須アイテムではなく、どちらかというとあると便利、という贅沢品扱いで、100円ショップでまとめ買いするプラスチックのタッパーとか、サランラップとか、ウェットティッシュとかとある意味同類であり、自転車に乗れると確かに便利であるが、自転車に乗れなくても実は人生そんなに困らない、ということと同じくらい、リズム感なんてなくても日常生活に支障が出ることはない。
しかし、リズム感というのはなかなか便利なものである。リズムに乗って何かをすると時間の経過をよりスムーズに感じることができるし、リズムに合わせてみんなでやると不思議なことにピタリと息やタイミングが合ってしまったりもするのだ。リズムを自ら生み出すことによりペースを掴んだり、気持ちを高揚させたり、などの効果も期待できるため、リズムというのは必須アイテムではないが、自転車に乗れる、というスキルと同じくらいに便利で実用的でコストが割と安い上に自動車とは違って、自転車税などの税金の支払いや保険の加入、ヘルメットの着用などが今のところは義務化されておらず、車検やその他の登録義務なども発生しない、という点において非常に優れたスキルであると言えるわけであり、これは活用しないとMOTTAINAIと世界がため息をつく、映画「トイレット」でアメリカにつれていかれた祖母役を演じるもたいまさこがつく深いとも言えないため息を彷彿とさせるような勿体なさがそこには存在するのだ。ちなみにこの映画は主役を演じるもたいまさこにたしかセリフがほとんどない、という非常に興味深い作品であった。
最近、小林聡美の「茶柱の立つところ」というエッセイ本をオーディブルで聴き終えたのだが、これがほのぼのとしていてなかなか面白く、その直前まで聴いていた阿佐ヶ谷姉妹による「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたりぐらし」をも凌駕する圧倒的な面白さであり、茶柱の立つところの本の中の話にもたいまさこさんが登場していたのでそんなこと思い出したのだが、それを思い出したというのもリズムに乗ってこの言葉たちが足早に羅列されることで生み出されたグルーブ感によってのみなさる技であり、グルーブ感に一緒に身を委ねればグループ感も演出される、ということで、つまり私が言いたいのは、いや、言いたいことなんて言うのは最初から最後までないのだけれど、強いて言うならリズム感がある人生の方がなんか楽しそうだし、リズムと自転車は乗れるなら乗ったほうが実用的であり、便利であり、早く目的地に辿り着ける上に税金もかからない、という事実を読者諸君にはしかと受け止めて今日という日をまた1日1日と生存していただきたいということであり、それ以上でもそれ以下でもない。
かのアルバート・アインシュタインは云った「人生は自転車のようである。転ばないようにするには漕ぎ続けなくてはならない」と。
私は思う。自転車操業するには自転車がいるし、失業するには職がいる。
フェルマータ店主 KAORU
PS- リズムについてより詳しく知りたい方は、こちらの文献が面白そうだったのでぜひダウンロードしてお読みください。僕はまだ読んでないですが。