そこそこacademic GPへの道JPCA2020(アーカイブ参加)
日本プライマリ・ケア連合学会のシンポジウムをいくつか聴講したので自分なりに考えたこと・感想をまとめてみました。朝ごはんを作りながらの流し聞きだったので、間違って解釈しているところもあるかと思いますがご容赦ください。地方の育児世代としては、アーカイブでもこういった議論が聞けるのは非常にありがたいことです。
ちなみに部分的にでも拝聴できたのは、
シンポジウム2
総合診療科の作り方
シンポジウム7
地域でプライマリ・ケアを教える: 卒前、臨床研修、専門研修 (全国地域医療教育協議会との合同企画)
シンポジウム14
大学でのキャリア選択、その多様性とこれから
シンポジウム15
論文の質量を高める High volume academic GPへの道
シンポジウム16
日本版ホスピタリストの役割、効果、そして今後の展望
(本当はアーカイブ視聴可能期間にアップしたかったのですが、間に合いませんでした・・・)
自分が医学生・専攻医で家庭医を目指していた時と比較して、「どうやったら家庭医・総合診療医になれるか?」という問いにはだいぶ答えが出しやすくなった(まだまだ課題はあると思いますが、研修先や働き方の選択肢は増えてきていると思います)分、今回は「専門医をとった先のキャリア」を意識したテーマのシンポジウムを拝聴してみました。「どうしたらこの分野をより発展させられるか?」という、特にacademicからの発信が多く、興味深かったです。専門医をとった後の若手のキャリアとして、大学院、総合診療科の立ち上げ・運営、開業など...があると思いますが、今回は特にプライマリケア研究でのロールモデルがクローズアップされているのが印象に残りました。これまで学術集会で手技や、各分野の知識のアップデートをするためのWSが盛んに行われていた時期もありましたが、自分の周りを見渡してみても、この分野のフェーズやニーズが変化しているのかもしれません。
病院総合診療のシンポジウムでも、臨床研究を発信することの重要性が話題になっていました。中小病院が実質的にプライマリ・ケアの現場となっている状況を踏まえると、地域の中小病院で勤務しながらも臨床研究に関われる人数を増やしていくことが必要だと理解しました。その中で、ちば総合医療センターの井上和男先生や愛媛大学の川本龍一先生(シンポジウム15)のように地域で働きながらHigh volume academic GPになられた先生の、目の前の疑問に答えていく形で「小さな研究を最後まで自分でやり切った経験がその後の研究実践に繋がっている」というのは勇気づけられるメッセージの反面、自分にやれるだろうかという不安も感じます。総括として、慈恵医科大の松島先生が「論文の執筆量は正規分布にならない。ほとんど書いたことがないか、極端に生産性が高いかに分かれる。プライマリケア領域では、正規分布で真ん中あたりのボリューム感で、臨床+研究ができる層が増えていったらいいのではないか」というメッセージを発せられていて、大きく肯いてしましました。そう、私自身はHigh volume academic GPにはなれそうもありませんが、それでも、地域で働いていても研究できるってなんかカッコいいじゃないか?と思うわけです。カッコいい、楽しそう、というのは(自分の)動機として大切だと思っているので、なんとかやれないものか・・・そのヒントを様々なシンポジウムを聴きながら探していました。
実際的には、先ほどの井上先生の「小さくても自分で研究をやりきった経験を持つ」こと、そして川本先生の「まずは研修医の時に症例報告を論文にした」「論文を提出し、reviseでのコメントを参考にしながら研究を身につけていった」という、実践をしながら少しずつ形にしていくことが着実な成長の道なんだなと思う一方で、「適切なタイミングで良いメンターに出会う」ことで、難所を近道できる可能性についても当シンポジウム内では言及されていました。そういった意味では、「ずっと同じ地域にいる」という縛りがない場合には、数年間大学院にしっかり通う期間をとることも、これからの家庭医・総合診療医のキャリアとしては存在感をましてくのだと思います。ここ数年でプライマリケア領域の研究を学べる大学も増えてきているようなので、慈恵医科大学の青木先生のようなロールモデルがいらっしゃることでよりプライマリ・ケア研究が盛んになっていくのではないかとワクワクします。京都大学の福原先生も「プライマリケア領域は多様で面白すぎるから、若手にも研究がその多様な分野の一つぐらいにしか認識されてこなかったのではないか。でも、これからは研究を基盤の一つとしてやれる先生を増やしていく必要がある」と話されていました。今回のアーカイブ参加は、各大学や病院の取り組みを知ることができたという意味でも非常に面白いシンポジウムでした。なんとか、地域で働きながらもメンターの先生に出会ったり、小さくても研究に関われるような場が増えていくと良いなと思います。
私自身は、これから少なくとも5年間ほどは同一地域にいる可能性が高いので、地域にいながらできることを探している最中です。シンポジウム14「大学でのキャリア選択、その多様性とこれから」では、私自身が直接・間接的にお世話になってきた先生方の所属大学(富山大学、福井大学)が多く講演されていました。大学の教育機関としてのポテンシャルを感じるとともに、講演されている先生方が、地域医療を一定の期間経験されてから大学での総合診療部運営に携わっているという経歴を知れたことも、励まされることでした。大学で要職に付きたいとか、そういうことではないのですが、総合診療に関わる先生方のキャリアパスの多様性を改めて知ることができた思いです。様々な課題はありつつも、大学総合診療部のポテンシャルを非常に感じたので、まずは自分の勤務先などが地域医療実習先として関われるようになったらいいな〜と思うのでした。