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【葬送のフリーレン】バスケと冒険者の戦略・戦術の進化②
最近「NBAバスケ超分析 語りたくなる50の新常識」という本を読みました。
ざっくりな内容としては、NBAの観戦力を高めるために、現代バスケの新常識を紹介する、という本です。
データを混じえながら、どのようにバスケの戦略・戦術が進化していったかを紹介する、良著だと思います。
一方、葬送のフリーレンにおいても、冒険者、特に魔法使いの戦略・戦術の進化が描かれることがあります。
詳細は以下の記事にてまとめていますが、内容が長いので、時間があれば御一読ください。
本記事では、上記の書籍を参考に、バスケの戦略・戦術の進化と、葬送のフリーレンの冒険者の戦略・戦術の進化の類似性を考察し、両分野の幅広い視点での楽しみ方を紹介したいと考えています。
本記事は以下リンクの続きになります。
漫画「葬送のフリーレン」の記述内容は、単行本全10巻97話までを含みますので、ネタバレを避けたい方は読むのを止めて下さい。
ここからが本題で、バスケと冒険者の戦略・戦術の進化の具体例について、上述の書籍と葬送のフリーレンの内容を引用しつつ、紹介していきたいと思います。
ペース&スペース
現代のバスケも、葬送のフリーレンの冒険者の戦闘も、ペース&スペースという戦略で解釈することができます。
その戦略は以下の3つの要素が関係しています。
①3ポイントシュートと一般攻撃魔法
現代バスケにおいて、3ポイントシュートの活用は重要です。
以下の図にあるように、2012年には一試合当たり平均20本だった試投数(シュートを打った数)が、2021年には35.2本まで増えており、その時期の増え方は過去のものよりも明らかに急速です。
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佐々木クリス著「NBAバスケ超分析 語りたくなる50の新常識」 p11より
3ポイントシュート自体は昔からありますが、なぜこの時期に急速に増えたかについては、後で説明します。
3ポイントシュートを打つ効果としては、単純に得点能力が高い(2点よりも3点)こともありますが、守備が3ポイントライン付近まで引き出されることが大きいです。
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佐々木クリス著「NBAバスケ超分析 語りたくなる50の新常識」 p14より
そのことについて、著者は以下のように表現しています。
3ポイントショットの最大の効果、それは攻守の最重要拠点であるバスケットの周りとペイントの煩雑さを取り除くことにあったのだ。もはや3ポイントショットの活用なしに現代的なバスケットボールのオフェンスは構築できないだろう。
一方葬送のフリーレンの世界でも、3ポイントシュートに似たものがあり、それが一般攻撃魔法です。
一般攻撃魔法の元になった人を殺す魔法は、非常に強力な魔法で、当たれば確実に致命傷になる攻撃です。
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原作:山田鐘人/作画:アベツカサ「葬送のフリーレン」 第5話より
しかも、対象がある程度遠距離でも、大岩をキレイに破壊するくらいの威力を持っています。
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原作:山田鐘人/作画:アベツカサ「葬送のフリーレン」 第2話より
つまり一般攻撃魔法は、遠距離から放つことが普通の魔法で、しかも威力の高い魔法なので、バスケで言う3ポイントシュートに似ていると考えています。
敵の視点から考えると、その魔法は優先度高く防御しないといけないものになるので、どうしても自身の付近の防御が薄くなるという、副次的な効果が期待できます。
両者の違いは、得点能力・魔法の威力です。
3ポイントシュートは昔からあり、シュート一本の得点能力に変化はありませんが、一般攻撃魔法はそれまでの魔法と比較して、威力が明らかに上がっています。
ただその結果として、敵の防御が薄くなるところは、共通しています。
②ペイントアタックと質量攻撃
3ポイントシュートが2012年から急速に増えた理由については、著者曰くレブロン・ジェームズの能力を最大限に活かすためだと言われています。
レブロン・ジェームズについては、著者は以下のように表現しています。
身長206cm体重113kgという規格外の体格を持ったレブロン。2022年現在NBA史上唯一3万得点、1万リバウンド、1万アシスト以上を累計で記録する稀代のオールラウンダーだが、最大の強みはペイント、特にリムを強襲する能力にある。得点を競い合うバスケットボールではバスケットの周りやペイントエリアまでボールを進めることが任務の半分以上といっても過言ではない。
引用にあるように、バスケの得点方法の王道でもある、リング周りへアタックする能力が高いレブロンですが、そんな彼であってもNBA優勝への道のりは厳しく、それを阻んでいた一つの要因が、リング周りのスペースの不足でした。
それを解決したのが、先述した3ポイントシュートの活用です。
3ポイントシュートを数多く打つことにより、リング周りの守備が薄くなり、レブロンのアタック能力が最大限活かされた結果、NBA優勝へと繋がりました。
この成功した戦術は、他のチームでも真似されるようになり、先述した3ポイントシュートの試投数の増加に繋がりました。
一方葬送のフリーレンの世界でも、レブロンの強力なペイントアタックに似たものがあり、それが質量攻撃です。
一般攻撃魔法が普及してしばらくは、消耗戦が主流となります。
消耗戦とは、一般攻撃魔法と防御魔法の能力が均衡し、決め手がないまま、どちらかの魔力が切れるまで戦う方法です。
ただこの戦術を打開するものが、自然物を利用した質量攻撃です。
防御魔法はあらゆる魔法に対応する複雑な術式ゆえに、物理防御性能はあまり高くなく、魔法で圧倒的な質量のものをぶつけると、破られてしまいます。
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原作:山田鐘人/作画:アベツカサ「葬送のフリーレン」 第44話より
それにより攻守の均衡を崩し、敵の急所に致命傷を与えるというのが、上記の戦術です。
この戦術は、3ポイントシュートにより誘導した攻守の均衡を、レブロンの強力なペイントアタックで崩すという、上述の戦術と似ていると考えています。
③アーリーオフェンスと魔法の高速化
3ポイントの活用とともに、アーリーオフェンスも現代バスケの主流になりつつあります。
以下の図では、速攻(ショットクロック22~18秒のシュート)とアーリーオフェンス(ショットクロック18~15秒のシュート)の攻撃全体に対する割合の遷移を示していますが、現代ではアーリーオフェンスが増えていることが確認できます。
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佐々木クリス著「NBAバスケ超分析 語りたくなる50の新常識」 p18より
アーリーオフェンスの狙いは、守備が整う前に攻撃することです。
フリーでシュートを打つとは行かないまでも、ボールを持っている選手に対して守備の準備ができていない状態で攻めることは、シュートの成功確率を上げることとなります。
一方葬送のフリーレンの世界でも、アーリーオフェンスに似たものがあり、それが魔法の高速化です。
先述した一般攻撃魔法は、あらゆる魔法の中で最も速射性に優れています。
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原作:山田鐘人/作画:アベツカサ「葬送のフリーレン」 第53話より
それを極めることで、防御魔法が展開される前に、敵に攻撃を当てることができます。
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原作:山田鐘人/作画:アベツカサ「葬送のフリーレン」 第97話より
この魔法の高速化は、アーリーオフェンスで守備が整う前に攻撃する、先述した戦術に似ています。
両者の違いは、その戦術が可能になった理由です。
バスケの場合は、8秒ルールやハンドチェックの禁止などのルール変更と、それに適した選手の増加が理由ですが、葬送のフリーレンの場合は、人類の魔法使いの約80年の不断の研究・開発が理由です。
おまけ
現代バスケでは、3ポイントラインよりもずっと離れたところからシュートする、超ロングレンジシュートも流行っていますが、それはフェルンの使う、超遠距離射撃に似ています。
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佐々木クリス著「NBAバスケ超分析 語りたくなる50の新常識」 p55より
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原作:山田鐘人/作画:アベツカサ「葬送のフリーレン」 第75話より
長くなりましたので、他の戦略・戦術の類似点は、以下記事にてまとめました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。