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映画『どうすればよかったか?』を見ての感想

映画『どうすればよかったか?』公式サイト

映画『どうすればよかったか?』感想
標題の映画を単館の札幌シアターキノで観た。俳優は誰もいないし、つくりごとはないので脚本はなく、全て事実の記録で、この藤野家の長男であり弟である監督の20年以上の苦悩が映像にされているようだった。同じ家庭内ドキュメンタリーでも信友直子監督『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえりお母さん~』の正反対の家族に見えた。
 舞台はおそらく札幌市の閑静な住宅街。藤野監督の8歳年上の姉まさこさんは小さい頃から頭がよく、きれいで、ピアノと絵が得意で、弟の面倒見もよく、高校の頃は生徒会副会長で、医学部に入り、解剖に失敗したあたりから、統合失調症の症状が現れたとのこと。両親とも、医学の研究者で、姉も医学の研究者・医師を目指していた。弟である監督は社会人になってそれなりの年齢になってからも、呼称として両親をパパ、ママと呼んでいたようで、それくらい、恵まれた家庭に見えた。(監督は北大農学部を出た後、社会人を経て映画を学んでいる。)
 でも、医学をわかっているはずの両親、特にお母さんの方は、姉の病を受け入れられないようで全く病院に連れて行きたがらないし、父親も同じ。なんの手だても講じないまま、歳月だけが過ぎてゆく。姉と一緒に暮らしている両親も歳をとってゆく。家族の暮らしは、ほぼ家の中だけ。その間中、ずっと弟は姉を医者に診てもらうよう両親を説得する。
 最後まで見ると弟である監督の気持ちがわかってくるようだ。きっと弟は、薬で統合失調症を制御して姉に人生をとり戻してほしかった。

ーこの家族の当事者でない私は、お姉さんを早く良い医師に診てもらって、お姉さんが合う薬と出会っていれば、その人生の後半は、社会や世の中と接しながら、支援者を得ながら何かできたのではないかと思った。お姉さんが外に出ないよう家に鍵をかけたところをみると、ご両親はどうしても隠したかったのかと思った。世の中に存在しているが隠されている非常に重いテーマだった。薬でなにもかも解決するわけではないと思うけど、薬でコントロールして、せっかくのお姉さんの持って生まれた良いところを社会の中で生かしてほしかった。ーお姉さんは弟が好きだったと思う。ー監督が提示したもう一つは「生きていることの意味」かなと思う。

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