見出し画像

【国指定重要文化財・旧田中家住宅】

川口市の旧田中家住宅(詳しいことは建築史家の先生方へ)。来月から調査と耐震補強?修繕?で少なくとも今後5年は見学できないらしいということで急ぎ見てきた。素晴らしかった。良かった。なんなら住んで小規模学会くらい開きたい気持ちになった。田中邸の元の持ち主は、田中德兵衞といってこの名前は現在も引き継がれている。この邸宅は2005年まで7代目が住んでいたという。現在で8代目らしい。2代目が川口で麦味噌の醸造(製造)開始。当時の埼玉県は麦など穀物の豊富な地域で良質な水に恵まれており、さらに大消費地・東京に近いことから麦味噌醸造が川口の地場産業として発達。4代目が材木商、肥料販売などを手がけ成功するが大正12年に味噌一本に絞り込む。この4代目がこの写真の邸宅を建てた。目の前が日光御成道、道の向こうに芝川がある。芝川までが敷地だったようで、貯木場、製材所、河岸場もあった。輸送は陸路もあるが水運というのをここでも認識できた。田中邸は1923年に完成した木骨煉瓦構造3階の洋館と1934年増築の和館の他、茶室、文庫蔵、煉瓦塀、池泉回遊式庭園で現在は構成されている。以前はこの邸宅の周囲にぐるっと味噌蔵があった。3階建ての洋館は県下で一つ。煉瓦の積み方はイギリス式で化粧煉瓦仕立て。洋館設計は櫻井忍夫。関東大震災があっても倒れなかった木骨煉瓦造。洋館1階の玄関横には応接間あり(文化住宅)。洋館3階の資料室の小屋組みを見ると和小屋組か?と思いました。和館は木造一部2階建て。数寄屋造り。4代目は貴族院議員でもあったので来賓行事が多く、和館を建てた。迎賓のための大広間は洋館3階の眺望の良い位置。全体がジョージアン様式で天井は漆喰で、花弁をモチーフとした中心飾り。壁は白漆喰。柱はイオニア式のペディスタイル付きのオーダー。窓は上げ下げ式。腰壁は家紋をかたどった板張。この丸い家紋は他の洋間にもあった。階段にはアーティチョークがついている。家紋は外のファサードにも見られる。家具もトラディショナルな感じ。現在はピアノもある。なんか赤坂の迎賓館の要素を感じてしまいました。ファサードはルネサンス風味??(何と表現したらいいのか)。床の間は3つ。竿ぶち天井は屋久杉、長押が檜、落としがけが杉、床柱が黒柿、床板が松、床框が黒檀とか黒漆とか。材木商をしていただけあってこだわりの木が使われているようです。付書院も組彫刻も素晴らしいです。(2階の床の間のある和室の欄間も良い)。広いお座敷は先代の奥様がお茶をされたということで炉がきってありました。調理場などがある勝手口から入り狭い階段を上ると2階には小間使い用の部屋がある(見学不可)。現在の株式会社田中徳兵衛商店はすぐ近くに自社ビルがあります。この日はお味噌などを販売していました。そして、この日はボランティアさんたちがお掃除をしていました。どこもきれいで清潔感があり、今でも住めそうでしたよ。(イベントは数多くされているようです)。掃除ってだいじだと改めて思いました。こうやって地元の市民の手で文化財は支えられ、使われながら、長く愛されているのですね。(1973年に一度修繕等があったようです)写真をとっていなかったようなのですが、洋館1階は丁場です。神棚や金庫もありました。ここが事務所のひとつだったのかと思います。洋館には迎賓の他に事務処理機能もあったのかと思われます。

いいなと思ったら応援しよう!