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人を見るとつまづく──自分を通して可能性を伝える


「自分を売れ」という言葉をよく耳にします。営業やプレゼンの場では、「まずは自分の魅力を知ってもらうことが大切だ」と言われることが多いです。もちろん、信頼や誠実さはとても大切ですが、それを意識しすぎると、逆にうまくいかなくなることがあります。それが、「人を見るとつまづく」という状態です。

どういうことかというと、商品やサービスそのものよりも、それを提供する「人」に意識を向けすぎると、あとで期待が外れることがあるのです。たとえば、ある営業担当の人がとても魅力的で、その人に憧れて商品を購入したとします。しかし、時間が経つにつれ、その人の完璧でない部分が見えてくることもあります。そうすると、「思っていたのと違った」と感じ、商品やサービスの価値まで疑ってしまうことがあるのです。

人に憧れて決断することは、よくあることです。「この人が言うなら間違いない」と思うと、その人が勧めるものにも魅力を感じます。しかし、人は誰しも完璧ではありません。少しでもギャップを感じると、「こんなはずではなかった」と気持ちが冷めてしまうことがあります。これが、「人を見るとつまづく」という現象です。

では、どうすればこの問題を避けられるのでしょうか。それは、「自分を売る」のではなく、「自分を通して商品やサービスの可能性を伝える」ことを意識することです。

可能性を伝えるとは

可能性を伝えるとは、「この商品が素晴らしい」とアピールするのではなく、「これを使うことで、あなたの未来がこう変わるかもしれません」と相手と一緒に未来を考えることです。そうすることで、相手は「この商品が欲しい」のではなく、「この未来を手に入れたい」と思うようになります。

たとえば、新しい手帳を販売するとします。「この手帳はとても使いやすく、私も愛用しています」と伝えるのも一つの方法ですが、「この手帳を活用すれば、スケジュール管理がスムーズになり、やりたいことをもっと実現しやすくなります」と伝えたほうが、相手はより興味を持ちやすくなります。

このように、「誰が言っているか」ではなく、「それによってどんな未来が手に入るのか」を伝えることが大切です。

可能性を伝えるための3つのポイント

では、どのようにすれば「可能性を伝える」ことができるのでしょうか。次の3つのポイントを意識すると良いでしょう。

① 相手の未来を一緒に考える

人が求めているのは、商品そのものではなく、それがもたらす「未来」です。「この商品にはこんな機能があります」と説明されるよりも、「これを使うことで、あなたの生活がこう変わります」と言われたほうが、より魅力を感じやすくなります。

たとえば、英会話スクールを紹介する場合、「このスクールの講師はとても優秀で、カリキュラムもしっかりしています」と伝えるよりも、「ここで学べば、1年後には海外旅行で堂々と英語を話せるようになります」と伝えたほうが、よりワクワクするのではないでしょうか。

② 自分は「媒介者」だと考える

自分自身を「価値を届けるための媒介者」と考えることも大切です。「自分を売る」ことに意識が向いてしまうと、「どうやったら気に入ってもらえるか?」ばかり考えてしまいます。しかし、それよりも「相手にとってどんな可能性を提供できるか?」に意識を向けたほうが、自然とうまくいくことが多いです。

たとえば、スポーツのコーチを思い浮かべてみてください。良いコーチは、自分のスキルの高さを見せつけるのではなく、選手が最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートします。営業やプレゼンも同じで、「自分がすごい」と伝えるより、「相手がどう変われるか」にフォーカスすることで、より伝わりやすくなります。

③ 相手の視点に立って伝える

可能性を伝えるためには、相手がどんなことに悩んでいて、何を求めているのかを理解することが大切です。別の言い方をすれば相手のニーズをキャッチすることですね。そのうえで、「この商品なら、あなたの悩みをこんなふうに解決できます」と伝えられると、より興味を持ってもらえます。

たとえば、高齢者向けの健康食品を紹介するときに、「この商品には最新の成分が入っています」と伝えるよりも、「これを毎日摂ることで、体が軽くなり、お孫さんとのお出かけがもっと楽しくなります」と伝えたほうが、相手の心に響きやすくなります。

「人」ではなく「可能性」に目を向ける

「人を見るとつまづく」というのは、その人に期待しすぎてしまうと、ちょっとしたことで幻滅してしまうことがある、ということです。しかし、商品の価値やサービスの可能性をしっかり伝えることができれば、たとえ提供者が完璧でなくても、その価値は揺るぎません。

だからこそ、私たちが意識すべきなのは、「自分を売る」ことではなく(人柄は大事ですが)、「自分を通して可能性を伝える」ことです。そうすることで、相手は自分で価値に気づき、「それは良いですね」と納得して行動を選ぶことができます。

少し意識を変えるだけで、伝え方が大きく変わります。そう考えると、営業やプレゼンの場も、より楽しくなるのではないでしょうか。


#岩井健二
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