機能性とデザイン性を兼ね備えたダンボール製の新しい収納製品FLOORBOXの魅力
「FLOORBOX」なるダンボール製の収納製品を知り、どんなものか試してみたく、発売と同時に衝動買い。随所にこだわりが感じられてすっかり気に入ってしまいました。これは推せると感じたので、FLOORBOXの魅力についてお伝えしたいと思います。
株式会社ドリップが手掛ける新しい収納製品「FLOORBOX」
FLOORBOXは、堀口英剛さんと平岡雄太さんが代表をされている株式会社ドリップの新製品。詳しいことはドリップのウェブサイトで紹介されています。ちなみにFLOORBOXのことは、堀口さんが運営するmonograph(YouTube)で知りました。
なぜダンボール収納なのか気になったのですが、ドリップの皆さんが普段からダンボール製の収納箱を使っていて、使い勝手に課題を感じたことがきっかけでFLOORBOXを開発することになったそうです。
製品の詳細については公式サイトをご覧いただければと思いますが、簡単に紹介しておきます。まず基本となっているのが「FLOORBOX-100」という製品。縦250mm、奥行き340mmで、A4サイズを横にして収納可能。
FLOORBOX-100を基準に、そのハーフサイズの「FLOORBOX-050」、クォーターサイズの「FLOORBOX-025」、そしてFLOORBOXの収納ケース「FLOORBOX-SHELF」という4種類の商品展開。FLOORBOX-SHELFを使うと、箱を引き出し方式で使えます。
全製品ともAmazonで購入可能です。
デザインの端々から感じられるこだわり
ドリップの製品を購入するのは今回が初めてですが、FLOORBOXが届いたときに梱包のロゴ入りテープを見て、ブランドやデザインを大切にしているんだなと感じました。
製品のビニール包装もきちんとしていましたが、これは開発パートナーのダンボールワンの品質だと思います。ダンボールアート制作で、ダンボールワンを使ったことがありますが、ダンボールが高品質で梱包も丁寧でした。
FLOORBOX-100は、折りたたまれてフラットになっている状態から簡単に箱形状に変形できますが、そのままでは底面が写真のようになっており、使い勝手が悪いです。
しかし、付属のコの字型ダンボールを入れると底面が平らになり、見た目もすっきり。
コの字ダンボールには、次の3つの役割が考えられます。
ダンボールの「継ぎ目」隠し
剛性の向上
シールの貼り付け用
コの字型ダンボールを入れる前のFLOORBOXの右上に、ダンボールの「継ぎ目」があるのがわかるでしょうか。これはダンボールを接着するときの、のりしろですが、これが隠れることで美観が増します。
持ち手部分には穴があいていて、外箱と一緒に持つことでダンボールが二重になり、剛性が向上。重くなっても安心感があります。
他社のダンボール収納箱で、底面にだけ板ダンボールを入れて補強する製品がありましたが、その場合は継ぎ目が隠れないですし、剛性を上げるための対応としても不十分です。
FLOORBOXの左下には窓があり、付属のラベルシールが見えるようになっていますが、シールはコの字ダンボールに貼り付けるようになっています。
ラベルシールの貼り付け箇所には、位置決めのための小さな切り込み。ここに貼ればよいのだなと直感的にわかりました。
050、025は、側面を折り込んで作りますが、これにより剛性が増すとともに、ダンボールの断面が隠れて見た目がよくなります。
間仕切りを入れるとさらに剛性アップ。特に025は小さいためかなり丈夫。
FLOORBOX-SHELFは、100単体、または間仕切りを入れて050や025を収納可能。既存のダンボール収納はフタ方式が多い印象ですが、引き出し方式だと使い勝手がよいです。剛性も高いため、引き出すときに折れ曲がる心配もありません。ただし書籍などの重量物を多く入れると重さで引き出せなくなるので、その場合はフタ方式が最適です。
製品に触れていく中で、このように様々な部分にこだわりがあることがよくわかりました。
ミニマルだけど遊び心が感じられるデザイン
予備知識のない状態でFLOORBOXを手にしたときに、構造設計とグラフィックデザインが非常に優れていると感じました(先入観なしに製品に触れたかったので、公式の記事は後から読みました)。
構造設計に関しては、ドリップのアイデアとダンボールワンの設計力によって具現化されたもので、グラフィックデザインに関してもプロのデザイナーに依頼されていることが後でわかり、腑に落ちました。
ダンボール製の収納箱は、無地、または書類保管用としてのデザインされた製品が多いと思います。そのため、無機質、業務用途といった印象が強く、あまり魅力的なアイテムとは感じられませんでした。
次の写真の収納箱は、近付いてみると表面に細かなテクスチャがあり、質感は高いのですが無機質です(こちらは芯材に紙を貼り付けた「貼り箱」と呼ばれるもので、ダンボール製ではありません)。
FLOORBOXのグラフィックデザインは絶妙なバランスで、グラフィックの面積は最小限ながら、しっかりとした存在感があり、またロゴや数字からは柔らかさが感じられ「業務用感」がありません。
SHELFは付属のダンボールパーツを使って接続できますが、重ねると側面に「Floor」のロゴが現れます。この遊び心がデザイン上のアクセントになっていて、FLOORBOXの個性にもなっています。箱を重ねたときにロゴの中心に隙間ができますが、正面のFloorロゴも同様にロゴをカットするような水平線があり、このような細かな部分にも配慮してデザインされたのではないかと感じました。
FLOORBOXのグラフィックは既存製品のようなゴチャゴチャ感がなく、洗練されていてとても好み。これが無地だとデザイン要素がなくなって寂しいんですよね。
例えば、AppleロゴのないiPhoneを思い浮かべてみてください。無地になることで途端に大きく印象が変わり、グラフィックデザインの与える影響の大きさを感じられると思います。
コンパクトながら、予想以上の収納力
小物収納は無印のメイクボックスで揃えてみたものの、出し入れしにくく、見た目も残念。製品は悪くないけど、使い方がコレジャナイ感。
FLOORBOXに入れ替えてみたところ。ステキやん… 引き出し超使いやすい。紙製品はパルプ(木材)を使っていることもあって、木製の棚とも相性バッチリ。やはりプラスチックよりも温かみがありますね。
実際に細々としたものを入れてみると、予想以上の収納力。エネループの電池は数も多くて重めだけど、強度の高い025なら問題なし。ケーブル類もきれいに収まります。
050、100は無印のメイクボックスがジャストフィットだったので、そのまま入れちゃいました。
ということで、FLOORBOXのレギュラーが確定。メイクボックス達はまた別の用途を考えるかな…
FLOORBOXは高額なのか
「FLOORBOXは高い」というコメントがSNSで散見されたので、他社の100サイズ同等製品の単価を調べてみました。
A社(国内グローバル企業) 単価 990円(送料500円)
B社(外資グローバル企業) 単価 899円(送料500円)
C社(国内業界大手) 単価 552円(5個で2,759円・送料無料)
D社(外資グローバル企業) 単価 963円(3個で2,890円・送料無料)
FLOORBOX-100 単価 1,190円(2個で2,380円・送料無料)
FLOORBOXは単価比較では少し高いものの、送料込みの価格は一番安いです(最小ロットで購入した場合)。厳密な調査ではないし、購入個数によって総額や単価も変わりますが、少なくともFLOORBOXだけが際立って高いということはありません。
SNSでは「ダンボールだからもっと安いと思った」というコメントもありました。しかし実際に何かを作って販売しようと思うと、ざっと考えただけでも次のような費用がかかります。
開発費
広告・宣伝費
梱包資材費
送料
人件費
FLOORBOXはAmazonから出荷されており、FBA(フルフィルメント by Amazon)という有料サービスを利用されていると思います。FBAなら製品が売れたときの出荷作業はAmazon任せですが、物流倉庫に製品を送る必要があり、それが大量になれば手間も膨大。製品はダンボールワンから倉庫に直送だと思いますが、製品の梱包や送付のための費用は、何らかの形で製品に転嫁されているはずです。製品に関する問い合わせやサポート対応などもあるし、売れなければ不良在庫を抱えるというリスクもあります。
ダンボールは梱包材として多用され、無料で手に入るものなので、なんとなく安く感じるのだと思いますが、実際に製品を開発し、販売していくためには多くの時間と費用が必要となるわけで、価格を下げるのは容易なことではありません。
上記の比較対象は、量産効果で単価をさげているであろう大企業ばかりであることを考えると、FLOORBOXはかなり頑張った価格設定になっていると感じます。
FLOORBOXの機能性とデザイン性が刺さった
もう改善の余地はないかなと思っていた製品が、これまでに無かった付加価値をともなって世に出てくることがあります。少し前の事例でいうと、バルミューダのGreenFan(扇風機)です。
モーターが回って風を送るだけの扇風機は安価な家電の代表格でしたが、バルミューダは自然な風やデザイン性の高さを売りに登場し、3万円以上という高額ながら大ヒットしました。
FLOORBOXも、期待感の低いダンボール収納を見直し、新たな機能性やデザイン性を加えた点がGreenFanに通じるところがあります。
FLOORBOXは収納をモジュールのように捉えていて、100、050、025という数値でサイズを表すアイデアは直感的でわかりやすいです。好きな組み合わせでSHELFに収納できつつ、個別利用も可能という自由度もあります。
基準になっている100は、A4を横にして入れられるサイズで、大きすぎず、小さすぎず、剛性もあり、また025は机の上にも置いて使えるサイズ感ながら、収納力は高いです。
あとはやっぱりグラフィックデザインの秀逸さ。ミニマルで遊び心のあるデザインは、傍らに置いて眺めたときに豊かな気持ちにさせてくれます。このような要素が相まって、製品の魅力となり、刺さりました。
FLOORBOXが、ダンボール素材に目を向けるきっかけになって欲しい
ダンボールは軽量ながら、丈夫さもあり、リサイクル率が高く、製造時の環境負荷も低いなど、優秀な素材。使わないときは折り畳めば邪魔にならず、役目を終えたらリサイクル。汚れたら可燃ごみとしても処分できます。
向き不向きはあるので、なんでもかんでもダンボールがよいというわけではないけど、使える場面ではもっと利用が増えるとよいと思うんですよね。FLOORBOXのような機能性やデザイン性を兼ね備えた魅力的な製品が、そのきっかけになるとよいなと思います。
ちなみにいま空きガレージにスタジオをDIYしているところなので、完成した暁にはFLOORBOXをもっと購入して布教したいと思っていますが、脱線して魔改造してしまうかもしれません。まあ、それはそれで楽しみ方の1つということで…