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ビリオネアのいっていた「先に買い手を見つける」の意味が少しわかった気がした

自作した製品が予想以上に多くの人に購入していただけたんですが、そのことを通じて、ビリオネアのいっていた「先に買い手を見つける」の意味が少しわかった気がしたので、そのことについて書いてみました。


Find Your Buyer First

昨年(2022年)、グレン・スターンズさんというビリオネアの経営者が、身分を隠し、知らない街で、わずか90日間で元手の100ドルを100万ドルにできるか挑戦するという番組がディスカバリーチャンネルの公式YouTubeで公開されました。いまも視聴できます。

人材に恵まれすぎでは?とか、ツッコミどころもありますが、起業家として成功体験を持っている人ならではの視点は学びも多く、面白かったです。

グレンさんの教えの中で、特に印象に残ったのが「Find Your Buyer First(先に買い手を見つける)」というものでした。大抵は商品を作ってから売るけど、それは間違いなのだと。

グレンさんは、売ります買います的なウェブサービスで見つけたバイヤーに、廃材置き場から見繕ったタイヤを拾ってきて、販売していました。日本ではフリマサービスはありますが、買いたいものが示されているサービスって少なそう。ジモティぐらい?あと無断持ち出し可能な廃材置き場も少なそうなので、国内では再現性は低いかも。

ただこれは、あくまでも軍資金を稼ぐためにやっただけ。その後は人を集め、事業の構築に専念。なのであくまでもビジネス手法の1つだとは思うんですが、そのような考え方をしたことがなかったので新鮮でした。


どうやって先に買い手を見つけるのか

作りたいものを作ったけど誰にも買ってもらえないということは、クリエイターにはありがちな気がします。インフルエンサーや、ファンがいる作家ならば、何を作っても売れるかもしれませんが、無名だとそういうわけにはいきません。

マーケティングは誰もがやっているし、何かヒットしようものなら、あっという間に競争激化。参入障壁がなければ、優位性はすぐに無くなります。

クラウドファンディングは先に買い手を見つける仕組みともいえますが、アイデアに技術が追いつかない、開発が頓挫する、悪質なケースでは製品化前にアイデアを盗まれるなどリスクも多くあります。

「先に買い手を見つける」のは、実際にはかなり敷居が高そうです。


ネットの情報を参考にVFXボールを自作

話は変わりますが、昨年、VFXボールというものを作りました。これはCGを実写に合成するときにリファレンス(参照用)として使うもので、周りの風景が映り込むピカピカのクロームボールと、グレーボールのセットです。大きさは直径30cm以上のものから、手のひらサイズのものまで様々。次の写真は、私が作った直径7.6cmのVFXボールです。

VFXボール

最初はネットで買おうと思っていましたが、探しても見つかりません。少なくとも国内では皆無。ようやく中国の通販サイトで見つけたものの、安いものでも3万円以上と高額で、品質もわかりません。

価格的に会社で試しに買うのはありかもしれませんが、個人では足踏みしてしまいます。しかしVFXボールの作り方がブログで公開されていたので、そちらを参考に自作しました。


思い出したグレンさんの教え

VFXボールを作るときに、グレンさんの「先に買い手を見つける」という教えを思い出しました。これはもしかすると買い手がいるのに売り手がいないケースなんじゃないかなと。

最近はCGの敷居も下がり、個人で実写合成映像を作る人もいます。VFXボールは必須ではないものの、実写合成の品質を高められるツールなので需要はあるはず。それが国内で販売されていないのは、次のような理由からだと推察しました。

  • 個人で作るには敷居が高い

  • 製品化して採算が取れるような市場がない

  • VFXボールの存在を知らない人も多い

VFXボールの材質に決まりはありませんが、今回のようにステンレスボールを使うなら、穴を開けるための電動工具やビット(ドリルの刃)、ネジ切りタップ、グレーボールを塗装するためのエアブラシや塗料など、まあまあ色々なものが必要になります。

製品として作る場合、初期投資や人件費、他社にお願いするなら外注費などが必要となり、そこに利益も乗せるため、少量生産なら単価が上がるし、大量生産ならある程度の需要が見込めないと無理です(ハイリスクすぎる)。

そもそもVFXボール自体の認知度が低いとも考えられます。なんせ国内で誰も販売していないぐらいですからね。

このようなことを踏まえると、まずは私のようなフリーランスが試しに少し作って売ってみるぐらいがちょうどよいのではないかと思えてきて、やってみるかという気になりました。工具や材料などの費用もかかるので、それが回収できたらラッキーぐらいの感覚。ただ、やるからにはリスクは低くしたいので、次のようなことを抑えておこうと考えました。

  • 少量生産(ついでに作れるぐらいの数量)

  • 値頃感のある価格設定(自分が買いたいと思える価格)

  • 情報は然るべき場所でしっかりと伝える(認知されなければ売れない)

数量はあくまでも個人用のVFXボールを作るついでにできる程度に。在庫の保管場所も必要だし。また赤字にならないような十分な利幅は取りつつ、自分自身がこの値段で売ってたら買いたいと思える価格設定に。

そして、せっかく作っても欲しいと思ってくれる人に届かなければ意味がないので、映像制作者がよく見ているVookと、自身で運営しているCG関連サイトのC3Dに情報を掲載することにしました。


VFXボールは毎月売れて7ヶ月で完売

Vookでは、VFXボールとは何かという説明に始まり、実際の使い方まで書きました。存在を知ることで欲しいと思ってくれる人もいるかもしれないので、需要の掘り起こしという意味合いもあります。

一方、C3Dでは、VFXボールの作り方について詳しく書き、実際に使った材料や工具、参考にしたウェブサイトのURLなど、すべて公開しました。

簡単だと思う人は自作すれば良いし、購入を検討してくれる人には価格の妥当性(買った方が安い)を感じてもらえるとよいかなと。

Vookで書いた使い方は概要的なものだったので、C3Dではさらに具体的に書いていて、Vookの記事を読んで興味がある人は、リンク先のC3Dの記事を見るとより理解が深められるようにしました。

11月に記事公開と同時にVFXボールの販売を開始すると、毎月少しずつ売れて5月には完売。6月には、正規品より少し品質が落ちるために販売を控えていたものをBグレード品として10%オフで販売開始。すると追加した6セットのうち、4セットが売れて、残り2セットに。

全部で20セットにも満たない、ごく少量だったので全然大したことはありませんが、予想以上に引き合いをいただきました。また複数の映像制作会社に購入していただき驚いたのですが、これは多くのプロが集まるVookに掲載した効果だったかもしれません。

まだもう少し需要があるんじゃないかと感じたので、新たにステンレスボールを発注したんですが、最近、DIY能力が大幅に向上しているので次に作るときはもっと品質を高められそうです(笑)


VFXボールはなぜ予想外に売れたのか

VFXボールが予想外に売れた理由として、次のようなことが考えられます。

  • 極めてニッチな製品

  • 需要に対して供給が乏しい

  • 実写合成の知識

  • DIYスキル

  • 過去の製品開発・販売経験

  • ウェブライティングスキル

このような極めてニッチな製品は、企業が参入するほどの市場性はありません。しかしVFXボールを必要としているのが日本で私だけということは考えにくいので、潜在需要はあったのかなと。

これまで本当に必要だった人は、自作するなり、海外通販で購入するなりしていたのではないかと思います。またはあれば使うけど、無ければ無いなりにVFXボールを使わない方法をとっていたのかもしれません。

今回のようにうまく「すきま」に入り込めたのは、長年CGに興味を持ち続け、とりわけ実写合成に興味があったため需要に気付けたことや、DIYが得意だったということが大きかったと思います。

また過去に小規模ながらも製品開発や販売を手掛けた経験があったため、説明書の作り方や専用箱の調達方法などもわかっていました。

あとはウェブライティングのスキルも重要。ウェブライティングとは、検索サイトで上位に表示させるための書き方。いま初めて「VFXボール」とGoogle検索してみたんですが、1位、2位は私が書いた記事、中国通販のVFXボール情報を挟んで、3位は私のVFXボール販売ページでした。

「VFXボール」の検索結果

競争が激しい分野では、こんなにうまくはいきません。このような結果になるのは、誰もVFXボールについて書いていないというだけです。ただこれによって、見て欲しい人達にちゃんと情報が届けられていると思います。


先に買い手を見つけるとはどういうことか

今回の経験から、先に買い手を見つけるということは「潜在需要に気付けるようにする」ということなのかなと感じました。企業が察知できない需要に消費者側が気付くとか、男性ばかりで商品開発していたところに女性の意見を取り入れたらヒットしたというのはよくある話。

ただし気付きを形にするためには行動力も必要。思えば、グレンさんの番組はその連続。90日で100万ドルを稼ごうというのだから、立ち止まっている暇はありません。そういうところも見習うべきところですね。

「潜在需要を察知して動く」ということは、製品づくりだけでなく、日々の仕事を円滑に進める上でも重要なことで幅広く応用が効くのではないでしょうか。今後はあらゆる場面で活かしていきたいなと思ったのでした。

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いわい ともひさ
最後までお読みいただきありがとうございます! TwitterではCG方面のつぶやきが多めです。 https://twitter.com/Iwai ダンボールアートの主な作品はこちらでご覧いただけます〜 https://iwaimotors.com