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俺イメ杯3 感想

最強の名前トーナメントサーバー内で開催された『俺がイメソンを集めてキャラ作る杯3』の楽曲を聴いた感想のまとめ。

楽曲の感想は開示の際に間延びしないよう、200字という制限を付けて書くようにしている(この記事を読めばこの発言がとんでもない嘘だと分かる)。ここでは書き足りなかったものや補足などを付け足す。

また、名前/必殺技も曲と同時に表記するため、ネタバレになることは留意してほしい。できれば一度杯を通して見てくれると嬉しい。

全曲揃ったプレイリスト↓



1. Jitsuryoku

初っ端から治安悪くていい。口は悪いけど姿勢としてはかなり真摯だ。
食らった汚言や罵倒を消化し昇華する、創作者・表現者としてのスタンス。ブレなさを何度も自らに問いているのは、強さというよりは誤魔化しきれない弱さの表出だと思う。弱いからこそ汚言や罵倒に目が向いてしまうし、傷つくし、文句も言いたくなるし、だからこそ逸れず道を歩みたいと願う。頻出する金・売買に関する言葉やいいとこ育ちのボンボンという表現など、やはりこちら側に嫉妬心、不条理に対する怒りがあるんだろうな。
だからこの曲は周囲に向けた忠告のようでいて、自分自身に対する戒めと叩き直しの歌なんだろう。完璧実力主義というのは、ここまでも、ここから先も、自分には実力しか頼れるものがないんだぞ、という戒めの主義。他と一線を引いて進んできた道程を、決して揺るがないものにするための主義。ひたすらに自分を磨き、叩き上げた実力で、いつか世界すら転覆させてやりたいという祈りの歌でもある。
それはそれとしてaの韻踏みが素晴らしい。最高に気持ちいい。ヤクぐらい気持ちいい。

名前
 
憚る悪魔の"反撃者(アヴェンジャー)"「憎まれっ子は慣れっこ」亜栖田 ロタ

必殺技

1.風穴開ける荒業、瞬く間の早業『我武者羅(アンチアーミー)』

2.徒花咲かす鮮やかなる鑪『痛覚燃料(ブラッディマカハドマ)』

2. 「Re:Story」

「問わず語り」って良い言葉だなあ、と思わされた。思わず自分から身の回りのことや、嬉しかったことや辛かったことを話したくなってしまうような誰か。「自分語り」と出しゃばりを窘めるようなスラングが蔓延る世の中で、自然にわたしらしくいられた、あの8月の夏がどれだけきらめいていたか。
この曲は想起の歌だ。私はもう大人という年齢になってしまった。仕事に追われ、疲れが取れず、いつも眠くてむしゃくしゃしてる。明日も大変な業務が詰まっていて、こんな生活を続けていても自分が見据える未来には辿り着けそうにないと不安と焦りだけが募る。
けれど、あの頃の思い出を、君を触媒にして再生することで、また新たな人生の視点を手に入れらるじゃないか。もしかしたら、あなたの隣に「君」はいないかもしれないけれど、夢の中で二人で踊ってみるくらいは叶うかもしれない。バカバカしいほど純粋で美しい、Re:Story Of My Life の魔法を信じてみたい。

名前

離想郷(ノスタルジア)の管理人 エーデルワイス

必殺技

夏のあぜ道、木陰の奇跡(フラッシュバック・プロテクション)
忘れじの逢魔が時(リプレイ・トワイライト)

3. 惡手

気持ちのいいテンポで韻を踏みつつ、カッコいい歌詞世界を崩さない。ボードゲームを絡めるのが上手だ。心算(つもり)は心積もりからだろうか。いいルビ。We can but dieは「あなたはもう詰みですよ?」くらいの意味合いかな。
この曲はメッセージというより雰囲気や世界観を歌ったものだと思うので、私も物語として見ることにする。主人公はまさに天才なんだろう。負けて自分を敵視する挑戦者たちに、本質を見据えずに囃し立てる観客やメディアに飽き飽きしている。本人としては努力と計算でゲームをやってるわけで、あいつら「天賦の才だのセンスの無いこと絶えずほざいている 」なんだ。なんとなくナメられてもいそうなので、その地位に付くにはあまりに若いのかも。
タイトルが「あくしゅ」なのも、ゲームのフェア性というか、ルールからは逸脱しないでこちらを対等と見てくれる良さがあるな。こっちはただあなたと楽しみたいだけなのに……見た目や地位や来歴に囚われないライバルを探しているように見える。
イメソンとすればキャラクターイメージがくっきりする曲だなあ。選曲が良い。

名前

『森羅盤上(チェックメイト)』西棋士団長 レディ・グランドマスター

必殺技

無意味"だった"布石が爆ぜる(ディフレクション・アサシン)
終わりを告げる雁字搦め手(ダブルチェック・カラミティ)

4. PANI PANI

服話さんが最近カバーしたPANI PANIだ!あんまりカバーから話すのはどうかなと思ったが、送った人がカバーの話を意気込みに書いてたので言った。
低くなるラップパートが抜群にカッコいい。私が聴いてきたボカロ曲の中では随一だと思う。この曲もかなり世界観・あるキャラクターの指向性みたいなところを歌っている。ゲームで言えばかなりペルソナシリーズだな。
とにかくトリックスターのイメージがある曲だ。夜の街を駆け巡る怪盗や、イカサマを使って大勝ちするギャンブラーが見えてくる。やっていることは犯罪や人を騙すような行為なのに、その手口が鮮やかすぎて騙された当人ですら恍惚としてしまうような、そういったズルさ。飢えた街やメディアを自分の行いで満たしてやろうという、堂々とした自己優越とサービス精神がある。サビから、スリルを楽しんでいるところも大いにあるな。逆境からの急転攻勢が似合う。
胸に衝動を抱えた青年が、大舞台に躍り出る。言ってしまえばとてもとても中二病なんだが、その妄想を現実として描き切れる存在がどれだけカッコいいのか私たちは知っているはずだ。異常で異端でダーティがいいんだよ。夢物語のままに終わらせてなるものか。
ここからはもう完全に私の妄想。
発火しちゃうペーパームーンという歌詞の、ペーパームーン(紙の月)とは「妄想、実現しない理想、世迷言」のような意味だ。It's only a paper moonというジャズの曲があり、その歌詞に「Say it's only a paper moon Sailing over a cardboard sea But it wouldn't be make-believe If you believed in me(それはボール紙の上を行くただの紙の月だけれど、貴方が信じてくれるなら、それは単なる作り物ではなくなるさ)」ってフレーズがあって。「愛の上で鳴り止まない」って歌詞から、この曲が妄想や中二病的概念からあなたに向けたラブソングだったら嬉しいなあと思うわけ。
あまり他の曲に触れない方がいい(開示の際に困るかもしれない)が、先の惡手とちょうど対になるかもしれない。こちらはズルの天才で、あっちは実力の天才。二人ともボードゲームが好き。

名前

虚貌演者(アノニマスアクター) "怪盗二十面相"

必殺技

劇場仮面(アクターフェイス):『人狼』
仮面すり替え(フェイスキャントリップ):『犯人』

5. Heavenly Hell

最初に聴いたときは分厚いダークファンタジーの情景が脳裏に浮かんだが、歌詞をよく確認すればこの曲が歌っているのは現代、もしくはこの先の未来にある地獄のことだ。誹謗中傷にエコーチェンバー。先行きの見えない不安定な土壌で、最低限の家族のようなコミュニティからも隔離されてしまった子羊のような人々が、定期的に投げ入れられる餌に群がり食べている。それが元仲間だったことすら「知らない」ふりをして……歌詞はむしろ徹底的に統治されたディストピアに合致する。
ファンタジーらしい壮大な曲調、純白な灰や神といったあえて俗世から離した表現、これらすべては演出なんだろうな。見てくれを繕って、エネミーマークの裏にある人間の顔を無視してという。戦う者が誇り高く見えるように、敵がまさに悪に見えるように。結局どこに行きついても戦争は終わらない。正義の暴走にしろ、正義の被害者にしろ、どちらも「抗戦」という泥沼に呑まれてしまっていて、どちらが勝利しても(そもそも勝利という状況が生まれた時点で)立場が逆転するだけなのがやるせないな。

名前

灰燼の執行者 包帯を巻いた"救世手"ギスモンド

必殺技

十字を切るその手に芥「灰は灰に、塵は塵に」
掲手『鏖天(ヘヴンリィ・ヘル)』

6. 出現

小さく暖かな音色のピアノから、急にいつものjohnさんの電子音に変わる入りが、『出現』というタイトルをうまく表現していていい。静かで大人しい誰かが、急に表出させた個性のインパクト。
この曲はオンライン美術展「出現画廊」のテーマソングらしく、その意義は新進気鋭のアーティスト、それもインターネットを中心に活動してきた(始めた)アーティストを知ってもらうためのものだ。まだ知られていない、若き才能に出会うための美術展。どこにでもいるような人間の中に燃える突飛な個性とどうしようもない創作の熱を、私たちに見せてくれ、『出現』してくれ!という願いがコンセプトだろうか。私には、この曲がただの「観客」の目線から歌われているようには感じなかった。「二人」とは誰と誰を指すのか?もちろん片方は絵の作者だろうが。むしろ、その才能の近くに存在し、同じような創作を行い、届かなさに目を焦がしながらもその才能が受容されていない現状に憤慨しているような、そういった誰かの目線。「アンタみたいに 成れりゃ良かったよ」というサビの歌詞を、誰が言っているのかという話だ。
これは「過去の私」と「作品」の歌なんじゃないだろうか。自分自身の能力を見つめ、才能を見つめ、限界を見つめて、それでもまだ輝けるはずなんだと信じるあなた。皆が待っている、なにより自分自身が期待しているそこに辿り着くための、迷いだらけでもひたすらに探す一筆。未熟でも、ワタシという存在が完全ではなくとも、焦がれる想いのままに作り上げたそれは、きっといつの日か『出現』するのだろう。二人は巡り合える。
特にリリックを大切にしている作曲者のjohnさんが、「言葉じゃ足りないくらい」と表現するような想い。人間を進化させた火を、そこに見る。

名前

瞬間塑像の『混凝彫師(コンクリエイター)』神鑿しる

必殺技

歩み出す"理想像"(ディア・マイ・ゴーレム)
改新する会心の出来!(オーバーホール・ジャイアント)

7. DIE SET DOWN

DIE SET DOWN、大切断!?意訳すれば(英文法としてそもそも正しくないが)「死を振り下ろす」みたいな感じになるだろうか。もしくは「死の状態に置く=殺す」みたいな。このOPは仮面ライダーアマゾンズのシーズン2のものだ。仮面ライダーアマゾンズという存在も、この曲を送られて初めて知った。仮面ライダーアマゾンの続編ではなく完全新作。ストーリーは暗めで結構グロいらしいが、記事読んでるだけでも魅力が伝わってくるな。ライダーのビジュアルがかなりカッコいい。
「さっきまで命だったものが辺り一面に転がる」って有名な構文、この歌詞からだったんだ。アマゾンズの世界観を象徴するように、重苦しく何かを傷つけ殺さねば生きられない生きるという行為の苦しみ、罪深さを詰め込んだ歌詞だと感じる。迷彩夜(メサイア)、かなり面白いもじりだ。迷彩はアマゾンのビジュアルに合致するし、メサイア(救世主)として誰かを救いつつ、同時に誰かを殺めている自分の境遇を皮肉っている。もしかしたらメサイアコンプレックスの内容も含まれているかもしれない。
主人公はもうどうしても、「闘う」ことと「生きる」ことが不可分になってしまっているんだな。守り"斬る"という歌詞も、それを表現しているんじゃないだろうか。身を隠すとか、法を整備するような文明的な守りを持つことはできず、ただ闘争でしか誰かを守れない。
生存とは、肉体の中のいかんともしがたい野生・本能との闘いでもある。どれだけ人間が発達しようと、生物である原理からは逃れられず、本能という道標なしには生きられない。生きるという行為そのものが本能であるからだ。主人公は、あなたは、生物としてありたいのならば決して避けられない運命とどう向き合うのか。そうして殺しながら生きることに、どういった着地点を求めるのか。知性を得てしまった生物に付いて回る問いだ。よだかの星の命題は解決されることなく、その生物の死によってリコールされている。

名前

穴だらけの剣山 百口鬼

必殺技
回転牙 - 切歯扼腕(food chain-saw)
液状化 - 咀嚼蹂躙の死地(Abattoir)

8. きみはマザーファッカー

本当に最高の曲。世界の真理。正しいことしか歌ってない。晴れた青空のような気持ちのいい曲だ。
どう見ても仮面ライダーや戦隊ヒーローに出てくる怪人みたいな奴らがMVに出て、朝の情報番組の子供向けミニコーナーみたいなフリして暴言を吐く。誰もが持つ醜さや裏側をそう表現しているのか、それともあの見た目は「虐げ」の象徴なのか?助けを求めようとも怪人という立場に押し込められて声を上げることもままならない彼らは、MVで哀愁漂う表情を見せる。
イラつく人間どもに贈る怒りの歌……という側面だけでなく、人間という種全体への諦めと同情が含まれているような気がする。お前たちはMother fuckerでMuscle headで、そこはもう変えようがない。世界の半分はクソったれでできているけれど、それでも半分は良いやつでできていることもまた真実だ。朝起きるたびにこの世界に嫌気が差す。でも、こうやって罵倒しながらこなくそと生きていくことも、悪くないじゃないか。
嫌なやつ全員消えたら私は楽で幸せかもしれないが、私だって誰かにそう思われているかもしれないし、嫌なやつのことを好きで大切に思っている誰かもいて、それは私という人間にとってもきっと同じことなんだ。でも、だからって、なんでも飲み込めるわけじゃない。心のどこかにやりきれなさを抱えたままフラフラ歩く人生の、呼吸のために吐いた暴言が、きっとこの曲を構成している。

名前

股に掛けるは異界魔境 営業職の正野会社員

必殺技

営業兵装その1:強制開門破城槌(アイスブレイカー)
営業兵装、番外:過剰に過ぎる右拳(ザ・リーサルウェポン)

9. ハイテンションソング

まずボーカルの声が好きだ!ちょっとしゃがれたというか、喉の一部に張り付くような後引く声。ギターもおっそろしいほどカッコいい。
「しょーもない所で怒鳴り散らしてないで、はよ舞台に上がってこいや」って趣旨のMVだと思う。
「本当なら」何でもできると自分を信じている誰かが、世界の持つ圧迫に負け、自分自身で足枷を付けている。これは自縄自縛と解放の歌だと思う。
自分の部屋の中でしか自分でいられない、モノに当たって壊すたびに自己嫌悪だけが溜まっていく。「怒ってなんかいない」「プライドなんて持ってないんだから、怒らない」と自分に言い聞かせているだけのお前。「自分にだけは嘘つくんじゃねえよ!」って叫ぶのは、自分の中でひたすらに溜まり上がっていく怒りとテンションのボルテージだ。「いつか本当の自分を出せる場所に行ける」とか「今自分が本気になってみせたところで、ダサいだけだから」と言う知性や理性は捨てて飛び出すべきなんだ。今の自分よりダサいやつなんていないんだから。野生動物に怒りという感情はあるだろうか?きっと人間のものよりも薄味で、生存に関わらないなら捨ておけるような怒りじゃないかと思う。こんなに進化した人間という生物が、どうして怒ったりするだろうか。それはこの、ハイテンションのためじゃないだろうか?
後から見返して恥ずかしくなっても、乱暴で滅茶苦茶でも、あなたがあなたとして踏み出した歩みは絶対的な価値があり、それ以外には意味が無い。部屋で叫んだだけの歌は誰にも届かない。そして、誰かに借りた怒りでも、拾い物の怒りでも当然意味が無い。あなたのサインを書きこんだ正真正銘の怒りでその世界に向き合え。

名前

雷神駆動(Rising Engine) 轟くその名は『血雷 源』

必殺技

奔る、振り抜く、のちに雷轟。
駆動(ブースト)駆動(ブースト)駆動(ブースト)、鳴り止まぬ『雷撃(カタトゥンボ)』

10. 少 し は 地 球 に 慣 れ た か い?

甘いニュアンスのあるかわいい~音。こういうどこか懐かしくなってしまうような曲がとても好きだ。ポニョの映画見た後に母親にねだって飲んだハチミツ入りのホットミルクの風味を思い出す。
MVは宇宙人らしき女の子を主人公として進むが、たぶんこの子は孤立して「宇宙人」になってしまった地球人なんだろうなと思う。こう書くと『Os-宇宙人』が頭に浮かぶな。この曲の場合、「あなた」に価する人物は存在せず、この世に引き留める楔が脆弱なため不安定だ。そうした希薄な現実では、大事な誰かに言われたことも覚えてはいられないし、地に足の付かない夢のような無意味な願望ばかり湧いてくる。「花売らない」=「媚びを売らない、売る方法が分からない」ために、上手く周りと馴染めず居場所を失ってしまったのだろうか。私も誰かと同じものを食べたい……地球人のみんなと、同じように生きてみたいのに、そういった行為はどこかぎこちなく、かえって宇宙人らしさを強調してしまうのだ。自分という存在が、自分自身にとっても「宇宙人」になってしまったとき、どうやって家に還ればいいのだろう?
根本的に違うのだから、もはや慣れるはずのない地球に「慣れたかい?」と皮肉るように歌う。動画説明欄の「慣れなくて当然」という一言が、この曲のやさしさを表していると思う。言われてみれば不思議な世だ。産まれて社会に適応するのが当然とでもいうように、無責任に集団の中へと放り出され誰が責任を取るわけでもない。産まれついでの浮遊感そのままに、乗り越え禁止の柵の向こうで、かすかに「あ」の音が聞こえる。

名前

寄生する菌糸状神格 "生き返った" 向井ふわ

必殺技

手を繋いでくれますか?(Mold Infection)
もう誰にも会えないね。(My Mycotoxin)

11. SONGS

ピアノから始まって、明るいラッパのファンファーレ……かと思いきや重低音のダンスミュージックへと変貌する。意表を突く展開にキレキレのダンスと、研ぎ澄まされた鋭利な美しさ。構成要素それぞれが粒立っていて練度が高い。誰も譲る気がないんだな……と感じる。
このカッコいい振り付け自分で考えてるの!?すご。自己完結性が高い。が、それでも3人としてチームで魅せていくところにアイドルとしての本懐があるな。個々で見ても十二分に輝いている宝石だが、それが集まってアクセサリーとしての完成系を見せる。こんなに鋭いのに擦れることなく歯車が回るのだから、仲がめちゃくちゃ良いのかな。生半可な協調ではない。宝石でできた機関と見るべきか。
アイドルの持っている青い炎みたいな情熱がそこにあるな。基本的に「アイドル」として売っていく間は表出しにくい情熱、強さの形。女の子として、ヒロインとしているために必要なのはか弱さでも可愛らしさでもない。自立してこちら側から飛んでいく勇気がなければ輝けない。シンデレラだって自分に自信が持てずに舞踏会に行かなかったなら、報われる未来なんてなかったはずなんだ。

名前

閻魔代行 "笏剣"の菫

必殺技

経典抜刀(ざいじょうよみあげ):焦熱菫青刀(アイオライトウ)
無間展開:阿鼻鉄囲山(じごくさくらなみき)

12. 99.9

モブサイコ100、見たいと思って見ていないアニメだ……入りのギターカッコよすぎる。MV、ギャグ調で日常を強く感じさせるキャラクターたちから、急にバチバチの異能バトルに移行してボスっぽいのまで出てくるのが、作品の広さを感じられて良いな。作品世界の広さ、ジャンルを受容する力の高さ。
「このままモブのままではいられない」という決意の歌なのか、やむを得ない状況に「モブでいたいのにいられない」という不条理に焦がれる精神の歌なのか。両方を兼ねていると見るのが自然か。作品を鑑みると、タイトルの99.9、そして歌詞の100というのは主人公の感情のパーセンテージなのかな。
大抵の人間は「あなたはモブです」というレッテルを誰かに貼られて産まれてくる。何者でもなく、この先何者になることも期待されていないということが、どれだけ乱雑でイライラする評価なのか、きっと分かるはずだ。だから人生とは自分の100%を見つけるための道程であり、いつか「モブ」というレッテルを返上することが目的になる。平穏で平凡で、誰にも、自分自身にすら求められない人生を捨て去るために。いつか100%に辿り着けるかな。

名前

『地針(マグニチューナー)』揺波 断層(ゆれは だんそう)

必殺技

地響褶曲(アースディストーション)
震波集束(グラウンドコンプレッサ)……『解放(M 9.99)』

13. 白熱する接戦

インスト曲だ。オーケストラの壮大な、地の底から響いてくる感覚がとてもいい。私は原神を遊んだことが無いので、このBGMが流れるシーンを他の要素に邪魔されず想起できるのはある意味利点か。
頭に浮かんだ情景は雪の降り積もる、もしくは氷に覆われた山々が連なる凍土だった。しかし、樹木や雪解け水でできた泉の周りに生命力の強い雑草が生い茂る感じもある。気候で言えばタイガだろうか。自然は厳めしいが、同じだけ命も強固に追いすがっている。繊細なバランスではあるが、部外者の追随を許さないために、それはほとんど崩されることなく続いている。この地の支配者がいるならば、それは独裁か絶対王政か。従わねば生きられず、それ相応に支配者・指導者が優秀かつ厳格で、冷たい精神を持ち続けなければ、仲間から殺されてしまい座を奪われてしまう。美しい実力の世界だ。不条理ではあるがルールは澄んでいる。

名前

遥かなる樹氷の王 タイガ

必殺技

死山結牙(グロウアップ・ブリザード)
一冬限りの大戦線(アイスエイジ)

14. 盲目の怪物

ボカロ曲のセルフカバーの方。曲のコンセプトに合う若い男性らしい良い声だ。歌の上手いボカロPシリーズだね。まあ曲作るくらい音楽に触れている人間が歌下手な方が変なんだけどさ。湿っぽくジトジトした成人未満・直後が持つ等身大の嫉妬の歌でいいな。もう子供ではないから自分自身を見つめて腐ってるところを把握できてしまうのに、それを受け入れるもしくは黙認することができるほど大人ではない。自分より完璧なものが溢れている世界の中で、下位である自分の居場所なんてあるのだろうか?そういうくぐもった内向的な考えの果てに、世の中にある美しいもの、自分が好きなもの、好きになりたいものを見て、自分の醜さが際立って、怖くて触れられなくなった後の話だ。ヒロイックな感情に酔い、爛れた感情で目は曇り、その姿を「盲目の怪物」と呼ぶ。
そうなった後、彼が手を付けたのは創作だろうか。歌詞を真に受けるなら小説とかになるか。それを「呪い」として世に撃ち出すのは個人的に納得できる。今までにない創作はそのポストを占有し、後世の誰かにとって「それ以上」を要求させる嫌味になるし、誰かの心に残った創作は、その人間の将来に長々と墨を引く要因になりうる。誰かの呪いとなることができる方法のうち、創作活動は人類にとって簡単な部類だ。それに、自分の手から生み出された創作は、自分の手の内にありながらもまだ純粋に見えるし、手の内にあるために支配欲も叶う。私が汚いままに愛するならこれしかない。歪んだ需要によって創作が生み出されることもある。自分の中で自分の創作を神格化していてほしいな……これは私が同じようなことをしたことがあるから、そう思っているだけだけど。

名前

『少女さだめ』- 空想に跳ねる怪異と執筆者「鵜飼 徹」

必殺技
加筆 -『かの少女はすこし微笑み、手にした鋏で次元を裂いた。』
修正 -『かの少女にとって、作者は必要ない。――何にも拠らず絶対であることが、神の条件だから――私の手を、離れて。』

15. Dread Dream Drives

きた!自作曲勢だ。ECHOLOCAUTIONというゲームのボス戦のBGMだろうか。コメントによればラスボスなのかな?とりあえずトレーラーを見る。すごい、これでもかと癖が詰め込まれている。ウサギ、かわいいですね……フクロウ怖っ。でかいフクロウが怖い。失敗してもコウモリママ(すごい肢体をしている)に慰めてもらえるっぽく、ゲーム全体の雰囲気が優しくて良い。テング、いいですね……
ドットによくマッチしたレトロな音源。不安を煽るような低音、宵闇のような怪しげな音色で演奏されるが、含まれる懐かしさでどこか温かい。まさに「希望のあるボス戦」って感じがする。曲の入りが同作の「Starlight Night Flight!」という曲になってるところや、途中で入る明るいパート(もしかしてMemories With Momのアレンジ?)なんかが、「死闘の中で見つけた光明」として感じられるし、さらに言えばその光明を見つける手がかりが、ここまでの戦いや旅や、生まれ育ったあの場所にあったんだと気づくつながりの形がいいなあと思う。RPGの主人公が「始まりから終わりまで、私たちの旅は続いていたんだ」と気付くための仕掛け。そしてその仕掛けはまたプレイヤーも巻き込んで重なるのだ。まるで音の波紋のように……はい、うまいこと言いました。

名前

星を翳らす蝙蝠傘 宵闇海月のメデューシアナ・ギガンティア

必殺技

音さえめくらと化す夜に(Cnida in Haze)
夜のとばりが降ってくる(Night Falling)

16. カットアップマージソート

うわーーー出た。この曲に初めて遭ったときの衝撃よ。何食ってたらこんな曲作れるんだ。(※繰り返し)が本当に繰り返されるとは思わなかったし、こんな形の繰り返しだなんて想定できるわけもなかった。映像と音楽の調和という点で見ても凄い。音MAD文化を一つの曲の中でより融和させた形で活かすというアイデア。途中で入るモールス信号パートや歪に引き延ばされる音と映像など遊び心の暴走といった印象を受ける。
私は音楽に通じているわけではないが、音楽的に何が特に凄いかと言われれば、この(※繰り返し)を分解&再構成することで、まぎれもなく繰り返しであるにも関わらず、聴き手を飽きさせない進行の方法と、「同じ歌詞・音が繰り返し使用される」ことで、聴き手が無意識に蓄積したフラストレーション・抑圧を、ラスサビの「音の最小単位まで分解し、全く別の歌詞を作り上げる」というブレイクスルーで完璧に解決へと持って行っていることじゃないだろうか。こんなに楽曲としては異端に類する音楽なのに、気持ちよさ・キャッチーさを上手に確保していて何度も聴きたくなる。繰り返しからの解放、新たなアイデアによる日常の脱却、別軸への運動と、曲のコンセプトと構造が非常にマッチしていると思う。安見すやというボカロPが、乾燥した音楽の地平を新たに切り開いてくれるんじゃないかと期待させる。もしあなたにこの曲が合ったなら同作者の点.mp4とかタイポフロリオグラフィを聴いてほしい。すごいので。

名前

一度名前を構成して、分解し再構成する。

裁断される事象の地平面、断刃沙美

さいだんされるじしょうのちへいめん、たちばさみ

みしょうちのさいれん、さめたばへちるだいさんじ

未詳値のサイレン、醒めた場へ散る大惨事

必殺技

裁断される事象の地平面(リコンストラクション)
並べ替えられた時空間(パラダイムクリスパー)

17. ちがう!!!


1、2、ナンっ!!! ダイナミック自演ズは精神上の健康に非常に良い。ネガティブの陰りを掻き消す留まることを知らないハイテンポハイテンションな音のカーニバル。聴くだけで背中を遠く遠くまで突き飛ばしてくれるようなエネルギーがあるよな。
あの激しくて言葉の一つ一つを読み取れないスピードのサビの中で、「こんな唄も味方だよ。」って歌詞を突っ込んでくる曲でもあることを知ってほしい。「チョイ 照レルネ/// 」って続くため、この激しさもまた思いを素直に歌い上げることへの照れ隠しであるのかもしれない。もちろん、素直な思いを叫んでいたらテンションが勝手に上がってしまってこの激しさに行きついたってこともあるだろうけれど。ダイナミック自演ズの歌詞は、ネガティブな要素を排しているわけではない。むしろ曲の序盤に多くその問題やままならなさを語る。そこにしっかりと焦点を合わせることで、その後の肯定による塗り替えが華々しく映るのだと思う。鬱屈に打ち込む核弾頭のよう。
同じ種の生物であるにも関わらず、私たちの前に横たわる圧倒的な差異をどう受け止めるか、また、憧れの誰かの背を追っていたら、その下位互換になってしまったように感じるそのとき。個々人の差異の持つどうしようもなさを嘆かずに、その差異こそに価値があるのだと歌う。「視点を変える」というのは、もちろん問題の解消ではない。しかし、解消してはいけない問題や、この先人類が滅亡するまで付いて回る問題を、「視点を変える」「ポジティブに考える」こと以外で乗り越える方法はないのだ。理性的に見せたいだけの臆病なスタンスも、無意味無意義な冷笑も、爆音で吹き飛ばしてしまえ。

名前

乗り回せ"砂塵大蠍(ストームスコーピオン)" 大弓担ぎ ハル・サハラ

必殺技

1."砂漠喰らい(ワームガルズ)"殺しの毒矢
2.砂塵嵐と第六感(クレヤボヤンス)

18. c'est la vie

入りの只者じゃない感じが良い。英語でなければ出せない錆びたカミソリの刃みたいな渋い音のニュアンスがあると思っていて、この曲は特にそれを首元に突き立てられているような、冷たい諦めを感じる。
これはMVにおいてもだが、サビにおいて歌詞が一単語ずつ細切れに強く発音されるところが、雨に濡れた重い足取りをうまく表現できていると感じる。歩いても歩いても、何をしようとも幸福を取り返せない。そこに行きついて安定したことは、生きていて一度もなかった。もし、彼女の元へたどり着けたなら、何か変わるだろうか?そんな薄弱で自分も信じていない可能性が黒くなったズボンを引きずらせる。決して自分から不幸になるわけでもなく、本当に幸せになりたいと願っているのに、それを叶えるほどの余裕はこの世界にはないらしい。ままならないなあ。この"彼女"という存在は、幸福の擬人化なんじゃないかと思っている。幸福から見放されてしまったのだろうか。
酷い絶望なんてこの人生には無いはずで、ヒステリックになれるほどの境遇でもなく、ただ幸福ではないというだけの今が死ぬまで続くとして、どんな気持ちで歩んで行けばいいんだろうか。下り坂というよりは、暗い落とし穴の底をぐるぐると彷徨っている。もしかすればこういった状況を、人は死と呼ぶのでは?C'est la vie(これが人生さ)という皮肉の言葉にピッタリだ。

名前

その掌に虚ろ 傘も持てないブランク・ブラック

必殺技

1.雲散霧消の握手(hand shake off)
ㅤ2.ㅤㅤ ( )

19. 意外なことが次々に起こる

あー楽しい!心地いい。o、ouの韻踏みが不思議な安定感を生み出している。同音の繰り返しが言葉遊びのような使い方をしている歌詞だな。バチバチにはめる感じではなく、執着は緩くしかし確かにそこにある。自然に紡いだ言葉が偶然綺麗な軌跡を描いたみたいな、いや、それは奇跡か。いつもの街並み、いつもの通学路、いつもの電車内に些細な奇跡が起こる雰囲気。その奇跡を見つけるのは自分で、見つけない限り意味のないもの。そういった小さな意外をキャッチする感性の歌なのかも。
二番歌詞からペースが自然にゆっくりになるところもいいな~。滑らかだ。ちょっと「変わった子」なのかもなあ。世界を見つめる眼がズレている。キチっと舗装された道の、端っこの盛り上がりに立ち沿って歩いてしまうような遊びの行動。幼稚に見えるだろうか。いつかそう言われたかもしれない。だから、人前ではある程度落ち着いた風を出して見ている。が、結局ドアの隙間から、ビル窓の並びからあふれ出る不思議からは逃れられないんだな。いいなあ、みずみずしい。朝起きて夜目を伏せるまで絶え間なく続くカラフルなオノマトペに、胸を躍らせて生きるあの子はかわいい。

名前

高校生・素敵不敵(すてきふてき)は『青春世紀(ティーンエイジ)』

必殺技

青春適応(アオハルモニア):まだまだ成長期!
青春超過(アオハレーション):数え切れない夢の具現

20. 冨田魚店

低音のベースから始まるのはエージェントの潜入捜査でもスパイの極秘ミッションでもなく、冨田魚店の仕入れ任務。もちろん、それが前者に劣っているというわけでもなく。彼らには彼らの、そして近所のドラ猫にもそれぞれの矜持と戦いがあるのだ。
彼らはみな真面目に日々の仕事を繰り返している。命を懸けているといってもいい。それでもそこに張り詰めた雰囲気が無いのは、誰もそれをストレスだと思っていないからだ。その当たり前の真面目さがいい。誰もが利益を求める上で敵同士になりうる場だが、だからこそ根柢の部分で皆繋がっていることを感じさせる。冨田魚店の店主が病に倒れれば、他の魚屋の店主はきっと心配して見舞いにくるだろうし、にっくきドラ猫が急に来なくなったら、冨田魚店の店主は休憩時間にちょっと寂しそうな顔を見せる。普遍であることの美しさってこうだよなあ。楽しい日々って、コミカルなのにどこか泣けてくるはずなんだ。その一瞬一瞬は本気で生きているから気づかないけれど、外側から見つめると一本の映画に仕立てられている。そう、笑顔と笑い声とそれなりの戦いがあって今日も町は廻るんだ。

名前

空挺漁師 ゲントナー・ベックマン、通称ゲン爺

必殺技

螺旋空挺銛(スクリューハープーン)発射ァ!
対雲鯨用疑似火龍砲(ドラゴニックブラスター)発射ァァア!!!

21. 💰お金の歌3(MONEY SONG3)💰

な、なんだ?かわいい。にじさんじの外国の方なんだ。ラデツキー行進曲に歌詞を付けている。お金の妖精?お金食べるの?そうなんだ。
ラデツキー行進曲といえば過激化した革命運動に、北イタリア独立を阻止したことで歯止めをかけたヨーゼフ・ラデツキー将軍を称える楽曲だ。だからといってたぶんこのお金の歌に関係する要素は一切ないと思われる。お金を食べることで革命で扇動され暴走していた労働者たちを困窮させる……とか考えたが、違うだろうなあ。
マスコット的かわいさでいい。「きらまぶしい」って造語も、語彙の不足のせいで最適な表現ができないときに、子供が作る造語そのものでかわいい。そういった言葉は言葉の成り立ちとして、とても純粋な場所にある。「きらまぶしい」、とにかくぴかぴかでいいな。それもひらがなだから刺さるような光ではない気がする。
さて、後はこのかわいげのある(本家が可愛くないわけではないが)ハーヴェストをどうやって名前にするのか……

名前
泥棒人形(ブンドルドール) いただきラミリィ

必殺技

奪取&ダッシュ! イタダキオールマネー!!
破れちゃった四次元ふろしき(ゴールデンストリーム)

22. 刃

カッコいい!なんてドストレートで言い訳のない歌詞なんだ。侍や武士のイデアみたいなものを歌っている。『魁!!男塾』の主題歌らしいが、なるほどなあ。武士は「日本男児」の理想形みたいなものか。
ここで歌われている武士の生涯はとても過酷で、いつか刀に敗れて命を散らす儚いものなのだが、武士・主人公はこれを自ら選んでいると考えられる。環境や生まれによって強制されたものではなく(史実としてはそういうものだったのかもしれないが)、武士として、男として生まれたそのときから覚悟は決まっていたという気迫を感じさせる。歌詞の中でひた走り突き進む男が、風や桜や稲光という瞬間的なものと共にあることで、その命の線の細さを感じ取れる。男の魂は刹那にしか存在しない。
壊滅的とも言えるその人生になぜ私たちはこうも心動かされるのだろうか。打たれ鍛えられた玉鋼のような絶対を、そこに見出すからか。

名前

流浪のからっ風 鍔鳴りケンジロウ

必殺技

男、一刃の疾風となりて
刹那、"二刀目"が吹き荒ぶ

23. Day After Day

アーマードコアのトレーラーに使われた楽曲らしい。張り詰めているものの無機質ではない、情熱的な戦場が見える良い曲だな。ギター・ドラム・ボーカルにバイオリンという珍しい構成をしていて、バイオリンの高音がちょうど差し込む繊細な理性の冴えと生死を分ける戦いの恐ろしさを含ませているように感じる。
歌詞を読む限り、主人公は敗残兵のような印象を受ける。戦争が終わってもなお胸の中の炎は燻り続け、「私の戦争はまだ終わっていない」と訴える。それは故郷に戻っても、道端に花を見つけても変わらないようだ。それはある種のPTSDなんだろうな。「身体は闘争を求める」って言葉はダテじゃない。きっとまた同じように戦争へと身を投じることになるし、それを予感している。数多の命を手にかけてしまったことを悔い、贖罪するように……だとて、タダでは死ねないから死に場所を求めている。
Day after day things are rolling on……と繰り返し摩耗する日々を生きて、それでも明日を希求する強い精神がある。遠くに見えるあの過去に、花に、今は少しずつ近づけているのだろうか。

名前

『棺は蹴り破られた(In-R.I.P)』始原の不死者 "アンデッド"

必殺技

再生が追い付かない過剰出力(オーバー・オーバー・リミテッド)
奴等に捧げる歌(Re.R.I.P)

24. ギザギザハートの子守唄

ギザギザハートの子守唄だ!懐メロの代表みたいなイメージ。チェッカーズの服装の"時代"感すごいな。なのに曲としてはキャッチーで古びた感じは一切ない。若い魂の情動って年月で変わるようなものじゃないからだろうか。「夢は机で削られて」ってすごい歌詞だなあ。
この曲に登場する典型的な「不良」という概念は、今の時代の学生にとってはもう失われたものだ。「悪いことは隠れてする」ということが、とても強く広がったのだと思う。そんなことを可能にするツールが世界中を繋げて、誰もが卑怯者になってしまった。誰かと駆け落ちするような燃える青春を、失敗すれば命を失うようなリスクを背負って悪事を働くような覚悟を、今どこの誰ができるのだろう。みんな、がんじがらめにして心の中で飼っているんじゃないか、そういう暴走のための機関を。別に悪いことをしろとか言いたいわけじゃないが、売られた喧嘩も買えないなんて寂しいじゃないか。
前に『うっせえわ』がこの曲を受けて作られた、現代版の『ギザギザハートの子守唄』であるという記事を読んだことがある。愚かだと誰かに口答えするには、自分もまた同じだけ愚かになり下がる必要がある。『ギザギザハートの子守唄』で不良が不良として生きるのは、不良品の青春に文句を言うためなんじゃないだろうか。あえて暴走のために踏み出してみるのもまた一興だろう。傷心はこの子守歌で鎮めてしまえばいい。昔々あいつらがやってきたように。

名前

"鉄筒蒸気聞かん坊(スチームヤンキー)" 義亜真鍮斗(ギアブラスト)

必殺技

鉄筒加速猛連撃(レシプロ・スタンピード)
加熱蒸気噴出:漢と浪漫は斃れない(ライブスチーム)

25. おとなりさんちのユニバース

ダイナミック自演ズ!この曲の場合、いつものツインボーカルと比べて「わたしたち」の生き方・やり方というよりは「わたし」の生き方・やり方としてテーマが描かれていると思う。普段より焦点が絞られているおかげで、首長の基盤が盤石というか、「もうこの人ってこういう人なんだ」って納得してしまう圧が存在する。この曲の星界ちゃんはそういうキャタクターになってるね。
別の視点、別の考え方や分野を「別の世界=おとなりさんちのユニバース」として表現している。私たちが抱きがちな未知へのちょっとした不安感を拳で(最強の根性で)乗り越えていく。ダイナミック自演ズに通底している他者理解の形だ。「ガチャと星を回せ」って歌詞面白くて良い。試行回数、挑み続けることの大切さをチープにたとえていて、気負う背中をぶっ叩いている。でもそういう泥臭さが、星(世界)を回してもいるんだぜって明け透けな笑顔でもあるんだ。「星」がガチャに使うアイテムっぽいところもいいよな。
日常系アニメのOPだよな~。一旦星界ちゃんの設定を無視して考えてみるが、作品としてこの子は人外的な存在で、人間の持つ道理をぶっ壊して生きていく感じがする。善でも悪でもなく、悪意がないためにどんな滅茶苦茶をやってもなんだか晴れやかに映る。というか普段の言動ってほぼ奇行なんじゃないか。意味の分からない精神性でグイグイ来る。この子自体が他の人々にとって「未知」で「不思議」な世界であるのに、この子という世界は目を輝かせながらこちらを平気な顔して受け入れてくる。彼女を見習った無敵の形を心に持って、こちらも彼女のような「未知」で「不思議」な世界を理解するための冒険に出てみたい。また小さい頃みたいにワクワクしよう。

名前

おしかけ堕天少女ルシファーちゃん

必殺技

生ごみ・粗大ごみ破壊光線(エクリプス・レイ)
一足先に終末を(Lasciate ogni speranza, voi ch'entrate.)

26. バンバード

乾燥していて気持ちのいい音だな。絶好のキャンプファイヤー日和って感じがする。フリーゲームで使われることのある結構有名なフリー音源らしい。確かにBGMとしてずっと聴いていてもくどさがなく飽きがこない、自然にノってしまうような曲だ。え、みんなで決めるゲーム音楽ベスト100で優勝してるじゃん。
なんとなく鷲とか鷹とかがサバンナの空を駆けているイメージが浮かぶ。民族楽器が織りなす雰囲気がアフリカっぽさに繋がっているのかも。この曲の湿気のなさはそういうところから来ているのか。ここで描かれる闘争はシンプルに生存をかけたもので、野生としての誠実さがある。嘘が無いから食っても食われても文句を差し挟む余地がない。爽やかでいいよな。自然の持つ理不尽とフェアの天秤がちょうど釣り合っている感覚。そこに生きる生物にとって自然ほどめちゃくちゃなルールを押し付けてくるものもないんだが、だからといって恣意や悪意によって殺されることはないという信頼もあるんだ。この曲はメンタルのリセットに使えそうでいいな。

名前

燻銀の翼、節ばった鉄鋼 怪鳥蜂メガララ

必殺技

急降下爆撃:弾丸針羽(フルメタルジャケット)
黑辻大顎(クロストマホーク)

27. その銃口

ドラム・ベースのリズム隊がかなり良い。強いリズムキープと表面だけがサラッとしている泥みたいな旋律が曲を縁取っている。
のうのうと生きていて、何かを忘れているという薄ぼんやりとした意識だけがあって、ふと見つめた深淵にあったのは、無かったことにしたい過去の罪だろうか。とてもとても生きているようには感じられない生活は、意味ありげなようで実は空っぽ。なぜならそこに「私」が入り込んでおらず、現実と一線を引いて、自己という薄い膜を介して人生に触れているからだ。この手で触れても、まともな感触は無い。だから、両手のサイズの深淵に平気で触れてしまうんじゃないだろうか。
見ているもの全てに銃口を求めるということは、自罰の方法を求めているのか、自己を終わらせる方法を模索しているのか。個人的には自罰の解釈だ。平和を享受しながらも、こんな人間が平気な顔して生きていることに、自分の中で違和感があって、自然に不幸に遭いたいのに、肉体は意に反して動かない。そうなんだよな、望んで不幸を浴びに行くという姿勢は正しくないんだ。それはかえって不幸を軽視して、馬鹿にしていることになる。最後まで幸福に生きようという意志を持ちながら、不幸に死にたいってことになるんじゃないかなあ。矛盾しているようで、こういった歪な指向性は人間の中に発生しうると思っている。

名前

空間異常:"銃口"、またの名を『境界無き正義』

必殺技

覗く深淵、無差別な執行 "Gun Hole of Abyss"
連続空歪現象:"虚指"

以上!

たくさんのイメソンをありがとうございました!

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