共働き夫が「お迎え週2に増やそうかな」と提案したら「なんで週5じゃないの?」と言われた話。あるいは無意識バイアスについて
あれは約2年前の2019年春。妻にある提案をしようと思った僕は、彼女に話しかける前からすでに内心ニヤついていた。そう、これからする提案が彼女を喜ばせると確信していたからだ。
こんなnoteを書いてこれまで彼女がやってくれていた家事育児の大変さにも気づき、できる限りその分担を増やそうと思っていた僕はこう考えた。「これまで週1回だった保育園のお迎えを、これまでより仕事を早く終わらせて週2回に増やせたらめちゃくちゃ喜んでもらえるのではないか?!」
「これは完全に家事育児のできる夫だ」そう確信していた。これまでも家事育児を任せっきりにしていたわけではない。むしろ保育園の送りは毎日行っていたし、掃除や買い物もたくさんやっていた。お迎え週2で彼女はきっと喜ぶ。
子どもを寝かしつけたあと、二人でお茶を飲んでるときに僕は言った。「これまで保育園のお迎えは週1回だったけど、もう少し仕事を早く終わらせるようにして週2回行けるようにするね。」心の中でニヤケが止まらない。彼女の反応はこうだった。「なんで週5じゃないの?」僕「?????」
そのあとの記憶はなぜだかあまり無い。だが「週5にできない理由は?」「なんで?」と何度か聞かれたことだけは覚えている。喜んでもらえると思っていた僕は斜め上すぎる反応に「?????」がしばらく消えなかったが、少しずつ正気を取り戻して、「なんで週5じゃないのか?」を真剣に考えるようになった。
真剣に考えていくと、自分の中の無意識に「妻がお迎えに行くのが当たり前」という考えがあることに気づいた。当時はまだ週5でオフィスに出社してマネジメントもしていたため、無意識のうちに「お迎えに行くのは難しい」もっと言うと「お迎えは女性が行くのが当たり前」という考えが染み付いていた。
ただ、これはよくよく考えると「全然当たり前じゃない」。なんで男女の違いだけで妻が毎日早めに仕事を終わらせてお迎えに行かないといけないのだろうか。彼女もきっとその日終わらせたい仕事がありながら「お迎えでお先に失礼します」と、そんな言葉を発してオフィスを出ていたに違いない。
そう考えを巡らせるとこれまで当たり前のようにお迎えに行ってもらっていたことが申し訳なくなった。そのまま色々と会話をするうちに、他の家事育児の分担ももっと見直すようにして、保育園のお迎えも半分半分(お互い週2-3)にすることにした(そのあとに書いたnoteがこれ)
お迎えが週1だとそれは特別な日だけど、週2-3になるとそれはほとんど日常だ。その頃から仕事の仕方は大きく変わったと思う。夕方5時くらいにはオフィスを出られるように仕事の進め方を組み立てる。朝早く起きて個人タスクは片付けて、スムーズにプロジェクトが進むよう前もって前もって仲間に連絡をする。
「(毎日のように)お迎えに行くのは難しい」と勝手に決めつけていたのは僕自身だった。そして彼女の自由な時間(働いたり、友だちと会ったり〜)を制限してしまっていたのも僕だった。彼女からの斜め上の反応は、僕の「当たり前」を見事に壊してくれた。
こんな出来事の「なんで週5じゃないの?」のくだりを、先日の #ゆるふわダイバーシティ (ダイバーシティをテーマにゆるく話すトークイベント)でスピーカーのりっちゃとひろなの二人に話した。
妻の性格もよく知る彼女たちは笑いながらも「固定観念を取り除く思考実験的な問いかけだったのかな」と言ってくれた。そう、たしかにこれは素晴らしい思考実験だ。あの場で彼女が「お迎えの日を増やしてくれてありがとう。助かる。」と言っていたら、僕は今でも「お迎えは(女性の)妻が行くのが当たり前」と思っていたかもしれない。
そうか、彼女は僕にそれを気づかせるために「なんで週5じゃないの?」と言ってくれたんだ。当時あまりの衝撃に考えを整理できていなかった僕はやっと理解することができた。大切なことを気づかせてくれてありがとう。
イベントの翌日、僕は妻にこんな話をしたよ、と伝えた。大切なことに気づかせてくれた感謝を込めて僕は言った。「やっと気づいたんだけど、あれは思考実験だったんだね」妻はこう言った「え?いやマジでしょ」
そう言った彼女の眼は笑ってなかった。