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文化をデザインするTransition Design 1

アカデミックなデザイン研究で世界トップ校の1つ、カーネギーメロン大学(CMU)が提唱している「トランジションデザイン」が、新しいデザインの可能性を拓く内容だと感じるので、自分の備忘録的に要点を書き残しておく。

2021年追記
トランジションデザインを実践してみた例は別記事で記載していますので、そちらを参照ください。また、この実践プロジェクトは論文として、国際学会Design Research Societyが主催したPIVOT2020にて、日本初のトランジションデザインの事例として発表を行いました。文献への引用は私の最新の論文を参照してください。


本記事はTransition Designの序論部分。具体的なフレームワークについては続きの記事をどうぞ。

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この図が特に有名だが、今流行りのサービスやソーシャルイノベーションデザインを超え(ると彼らは言っている)、社会や生態系レベルのデザインという非常に壮大なスケールを射程に捉えているほか、未来を描くために先住民の生活の歴史を遡ったり、自己組織化などの生物のアナロジーを使うなど、いま一度人類や生物の本質に立ち帰る態度が、それがまさにデザインといえばそうなのだが、学問横断的に整理されていてとても新鮮に感じる。後で出てくるが、代替経済、コスモポリタンローカリズムなんて単語は今後のキーワードになり得ると思う。

以降の文章は、Transition Design Overview (PDF) の記載をgoogle翻訳+解釈し、私なりに要点を抽出したもので、本編そのままの和訳ではないのでご注意ください。詳しくは原文を参照のこと。

1. Transition Designとは?

トランジションデザインは、持続可能な未来に向かうための新しいデザイン研究・実践分野で、デザイン主導で社会の移行(Transition)を提案する

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気候変動、生物多様性の喪失、天然資源の枯渇、貧富の差の拡大など、21世紀の「厄介な問題 (Wicked Problems)」に取り組むため、社会のあらゆるレベルで根本的な変化を起こすような、問題解決の新しい手法が必要である。

トランジションデザインは、私たちが「過渡期 (Transition Times)」にあり、持続可能な未来への社会的移行の必要があるということを前提に、この移行においてデザインが重要な役割を果たすと主張する。

トランジションデザイナーは、きわめて長期に渡って存続するもの(Long Now)をデザインする。未来の世代を念頭に置きながら、過去からの知識と知恵を利用して、現代のソリューションを着想する。

歴史の中でどのように大規模な社会・技術移行が発現したのか研究し、世代を超えて持続的な生活を設計してきた先住民社会の知恵を利用する
持続可能な未来への移行には、科学、哲学、心理学、社会科学、人類学、人文科学などの分野から統合された知識と新しいスキルセットが必要になるため、既存のデザイン方法論に異論を唱えるものになろう。

2. 「Transition」概念の源流となる理論・運動

1.  Sociotechnical Transition Management Theory | 社会技術移行管理理論
北欧発のイノベーション・マネジメントと技術評価の学術分野で、社会移行がどのように起こるかに焦点を当てている。

2. Transition Town Network | 移行タウンネットワーク
UK発のコミュニティベースの運動として設立以来、地元の食糧とエネルギーシステムを開発し、地域の企業の発展を支援している。 

3. The Great Transition Initiative | 大規模な移行戦略
経済学者とシステム理論家によって1964年に初めて使用され、95年、一連の将来の複数の惑星シナリオおよび変化の戦略を識別する報告「大規模な移行」(生活の質の向上、貧困の削減、不平等、人間の連帯、豊かな文化、生物圏の保護) を行なった。

4. Transitions in complex systems | 複雑系での移行
「相転移」とは、動的・非線形で自己組織化し、相互依存する複雑な社会的・自然なシステムの中における変化を示す言葉で、予測または制御することはできないが、新しい形態や行動変容の源泉となる。

3. Transition Designに関連する概念

1. Living Systems Theory | 生物系理論
生態学・生物学分野の科学者は、全ての生きているシステムがどのように機能するかに関する一般原則を提案した。 生物系理論は生物と環境との関係の動的なパターンを探求する。自己組織化、発現、レジリエンス、共生、ホラーキー、相互依存性は、複雑系での変化の開始や促進のための原則である。

2. Futuring | 未来思索
トランジションデザインは、より根本的に新しいアイデアや持続可能な未来が必要であり、SF、ストーリーテリング、未来予測、スペキュラティブデザインなどの手法がある。トランジションデザインは、現在のデザインソリューションは持続可能な未来の長期ビジョンから来ると主張する。

3. Indigenous Wisdom | 先住民の知恵
先住民族の産業以前の社会は、世代間にわたって持続可能な場所に住み、
地元の文化に埋め込まれた「遅い知識 (Slow Knowledge)」を伝えている。トランジションデザイナーは、彼らのデザイン手法や、自然環境との共生の関係から多くのことを学べる。

4. Cosmopolitan Localism | コスモポリタン・ローカリズム
ドイツの活動家ヴォルフガング・サックスが発案した用語で、情報、技術、リソース面では世界的につながっている一方で、地球規模の問題に対する解決策は地域の社会・経済状況に合わせて設計・最適化されているような、グローバルなネットワークの中で、ローカルに最適化されたライフスタイルを指す。

5. Everyday Life Discourse | 日常生活の談話
日常生活は、社会とそれを形作る力を理解するために、重要だがしばしば見過ごされる状況である。 トランジションデザインは、日常生活とライフスタイルが主要な文脈であり、その中で持続可能な未来と生活の質の向上のためのデザインが行われるべきだと捉えている。

6. Post Normal Science | ポスト科学
ポスト科学は、情報が少なく、事実が不明で、価値が論争中で、緊急の決定と成果が重大である中で長期的な問題に取り組むための調査方法である。

7. Needs | ニーズ
ライフスタイルや日常生活の中で、人々のニーズをどのように満たすかを理解することは、持続可能な解決策を開発するための重要な戦略だ。Max-Neefの「ニーズと充足者('92)」理論は、ニーズは有限かつ普遍的であると提唱している一方、人々がそのニーズを満たす方法は、時代・文化・地理的位置・年代・価値観により特有だと述べている。トランジションデザインでは、地域社会が自己組織化しており、家庭/近所/都市/地域など、複数のレベルでニーズの満足度をコントロールしている場合、日常生活は持続可能性が高いと捉えている。

8. Social Psychology Research | 社会心理学研究
92年のリオ地球サミット以来、サステイナビリティ研究者は人々がより持続可能な方法で生活するための最善の方法を確立しようとした。社会心理学ベースの、健康行動の変化に関する研究から得られた知見には「変化の段階」「自己効力感」「小さなステップから大きなステップへ」「スピルオーバー効果」が含まれていた。

9. Social Practice Theory | 社会実践理論
社会実践理論は、ゆっくり変化する/慣習的な習慣や日常生活の生息地を形成するデバイス、スキル、行動、意味の関係性を注視する。これにより既存の慣行におけるイノベーションの機会を特定するのに役立つ、臨場感のあるエスノグラフィーをデザインする。

10. Alternative Economics | 代替経済
持続可能な未来への移行には、大部分のニーズがローカルで満たされ、一部はグローバルネットワークに依存し続ける新しいタイプの衡平かつ統合された経済システムの開発が必要となる。すべての人のニーズを満足させることを目的とした(優位な経済パラダイムの外にある)交換方式を探求することは、移行ソリューションを開発する上での重要な礎石である。

11. Worldview | 世界観
過渡期の間は、世界に新しい存在方法が必要である。環境学者で物理学者であるフリトフ・カプラは、21世紀において私たちが直面している無数の問題は相互に関連し、相互に関係しており、「認識の危機」である単一の根本問題にまで遡ると主張している。
彼はこの認識の危機を、複雑なシステムの性質を理解するには不十分な、機械論的/還元主義的な世界観と定義している。 より包括的/生態学的な世界観への移行は、持続可能な未来への移行にとって最も強力な方法の1つである。

12. Goethean Science&Phenomenology | ゲーテ科学・現象学
アーティストと詩人のヴォルフガング・フォン・ゲーテは、自然界の生物、特に植物の「完全性」を理解する現象論的アプローチを開発した。この理解は、成長、成熟、終焉の時間的ダイナミクスに焦点を当て、部分と全体との共生的な関係を観察した。

4. Transition Designのフレームワーク

さて、ここからいよいよトランジションデザインの具体的なフレームワークの話に入るのだが、だいぶ大作になってしまったので次回に続く(こちら)。ここまででも既に、あらゆる学問領域が包括的にデザインの文脈に組み込まれていることが分かる。
ここまで読まれた物好きな方がどれほどいるかは分からないが、誤訳等あったら教えてください。
ちなみにフレームワークは下図。

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1. Vision, 2. Theories of Change, 3. Mindset & Posture, 4. New Ways of Designing という知識、行動、自己反映の相互補完的かつ互いに影響を及ぼしあう4つのプロセスから成る。

後半はこちら


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