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結局何が日本酒と組織マネジメントの共通項だったのか
おはようございます。
まっすーです。
先日福岡テンジン大学の「日本酒が教えてくれる!?組織経営のヒント」をテーマとした課外ワークショップを終えました。
「日本酒造りから組織経営のヒントを探る」というなんとも物珍しいテーマと取り組みでしたが、非常に価値ある内容であったと思うので、下記にレポートします。
はじめに。ワークショップの概要
開催した場所は佐賀・基山にある基山商店。
日本酒造りと組織経営の共通点を学ぶという、一風変わった内容に興味を持持たれている方や単純に美味しい日本酒が飲めることを楽しみにしておられる方もいらっしゃいましたw
授業の概要と流れは下記の通りです。
【授業概要】
・日時:2023年4月22日(土) 13:30~16:00
・先生:増田 雅人 (株式会社IW 代表取締役)
・教室:基山商店 酒蔵内
・定員:15名
・参加対象:日本酒が好きな方、組織経営のヒントが欲しい方
【授業の流れ】
13:15 受付開始
13:30 授業開始
13:35 アイスブレイク
13:45 先生からの話題提供~日本酒ができるまでの微生物の経営~
14:15 杜氏から日本酒造り基礎知識を学ぶ
14:30 【個人ワーク】日本酒との対話~試飲体験~
15:00 【グループワーク】日本酒が教えてくれたことの振り返り
テーマ①日本酒から学んだことを実生活に置き換え
15:10 テーマ②学んだことを踏まえ明日から踏み出す一歩
15:40 記念撮影、アンケート記入
16:00 授業終了(解散)
僕のパート
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初めに今回の主催者である福岡テンジン大学の森さんからアイスブレイクをしてもらった後に、僕のパートになりました。
僕が思う日本酒造りと組織経営の共通点
僕が日本酒の造り手と消費者をつなげる「オンライン酒蔵留学」を運営する中で、30~40蔵を巡って感じたことは、どの酒蔵さんも、発酵過程において微生物がきちんと働く『環境づくり』が大切だと話されていること。
これを聞くうちに、これは組織経営ととても似ていると感じるようになりました。
なぜなら、組織経営も結局のところ『環境づくり』だからです。
経営者や管理者・上司が個人としてできることは限られています。
スタッフとうまく協業するためのキーポイントはいかに組織内の人たちが気持ちよく働くことができるような環境整備ができるかどうか。
僕はその上で重要なことは、まずスタッフ自身が深く自分のことを理解しているかどうか、そしてまたスタッフ間同士が相互理解できているかどうかだと考えます。
なぜなら、自分のことを理解し、納得した上で業務に取り組んでいる人と、なんとなくやらされている感でやっているのとでは、全くもってスタッフのモチベーションのあり方が異なります。
また他のスタッフがどういう人で、何を目指しているのか、あるいはどういうところに不満を感じているのかを知ることで、スタッフとのコミュニケーションのあり方は変わってきます。
何よりそのスタッフに共感することができ、一緒に頑張りたいという気持ちが芽生えます。
スタッフそれぞれが何のために業務に取り組み、今何を目指しているのかを理解した上で、業務に取り組み、それぞれが目指しているビジョンを共有・理解した上で仕事ができるととてもスムーズに仕事できるようになります。
そこで、今回はいつも社内のマイビジョンミーティングで行っている「人生の輪」というツールを使い、参加者に自分自身と向き合ってもらいました。
『人生の輪』を使った自己理解
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人生の輪とは「感情・健康・人間関係・お金・キャリア・時間・物理的環境・人生全」般の8つの項目について、現状を点数化してレーダーチャートにしていくことで、自分自身を見つめ直す手法です。
社会人の方はとにかく時間がなく、自分と向き合う時間を蔑ろにしがちです。
自分の現状と向き合い、ポイント化
しかしながら、今の自分の状態がどうなのか、どれぐらい現状に満足しているのかあるいは不満を感じているのかを考える時間をとることは人生をより良く、幸せに生きるために必要なことです。
8つの項目に分けて考えるととても考えやすいですし、なるほど今僕はここに幸せを感じているんだ。ここに不満を感じているんだ。という新しい気づきを得られます。
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理想の状態をイメージ
現状の自分を見つめてもらった上で、それではこの各項目が10点満点になる理想の状態について考えてもらいます。
全てが10点満点になるということは、とても幸せな状態になっている状態です。
働くにおいて、その理想の状態を追い求めることが重要です。
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人生のセンターピンを見つける
今回のワークショップでは、時間が少なくてできませんでしたが、本来は理想の状態を考えてもらった後に、8つの項目のうち1つが満点になれば他の項目も満点になるというポイントを探り出してもらいます。
これを「人生のセンターピンを見つける」と言います。
これが重要なのは、結局のところ8つの項目を一気に10点満点にしようとしても、難しいからです。
だから一点集中させて、そこが満足すれば他もボーリングのセンターピンにボールが当たった時のように、他の項目も満足するというポイントを探り出します。
具体的な行動目標に落とし込む(SMART目標)
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そして、それらを終えた後に、具体的な行動目標に落とし込みます。
重要なことは幸せな状態をイメージし、ここまでやれたら自分は満足だなと感じられる目標を設定すること。
また目標を大体3年後から直近3ヶ月まで落とし込むことです。
つまり理想の状態に向けて逆算して行動目標を決めるということです。
具体的に目標を落とし込むために良いフレームワークとなるのはSMART目標です。
是非ご参照ください。
今回のワークショップでは、最後のセンターピンと具体的に行動目標に落とし込むという作業はできませんでしたが、参加者の皆さんはとても真剣に自身と向き合い、そして自分が感じたことを他人にシェアされていました。
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小森杜氏のパート
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次に、基山商店の杜氏・小森賢一郎さんから日本酒についての説明がありました。
日本酒のつくり手として感じる日本酒造りとは
日本酒は並行複発酵と言われる世界でもとっても難しい発酵技術を要していて、造りの変数が多いからこそ、つくり手の技術がより問われるものだというお話がありました。
例えばワインと日本酒の原材料とつくり手の技量について対比した時に、
ワイン=葡萄の良さ:つくり手の技量=7:3
日本酒=お米の良さ:つくり手の技量=3:7
こんな感じになるとのことです。
(もちろんこれは小森杜氏の個人的な見解ですので、違う見方もあるとは思います)
でも、各酒蔵さんのお話を聞いているとこれはよくわかります。
例えお米が良かったとしても、
そもそもお米の特徴がどうなのか
どれぐらい精米するのか
炊き方をどうするのか
水の特徴がどうなのか
洗米をどうするのか
お米に水をどれぐらい吸わせるのか
麹をどうつくるか
酵母をどうするのか
温度管理をどうするのか
火入れなのか生なのか
無濾過なのか濾過なのか
など、そういった数多くの要素によって、良いお米でも美味しくないお酒ができることもありますし、反対にそこまで出来が良くないお米であっても美味しいお酒に仕立て上げることもできます。
小森杜氏のお話から、それぞれの原料や工程の特徴や意味を理解し、微生物達にどううまく働いてもらうかの創意工夫があることがわかりました。
そして、改めていかに日本酒造りというのがすごいのかがわかりました。
ゴールを逆算してお酒造りを行う
また組織経営と似ている点として、ゴールを逆算してお酒造りを行うということが挙げられます。
小森杜氏によると自分がこのお酒の味わいをどうしたいのか、誰にどんなシチュエーションで飲んでもらいたいのかを考えて、お酒造りを行うそうです。
例えば、フルーティで日本酒初心者に飲んでもらいたいなと思ったら、吟醸香をよく出す酵母を選んだり、より低温で発酵させるように温度管理に注意したりという具合です。
お酒のつくり手が普段何を考えて、つくっているのかをじっくり聞く機会はそんなにないと思うので、とてもみなさん真剣に聞いておられました。
お酒と向き合い、表現するワーク
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その後、4種類のお酒を試飲しました。
ただの試飲ではありませんでした。
お酒の味わいを季節や人に例え、誰と飲むかについて考えるという独特のアプローチで、参加者は真剣にお酒と向き合いました。
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お酒の表現ポイントは下記
季節に例えると
擬人化するとどんな性格?
このお酒の良いポイントを5つ教えて
このお酒を誰と飲みたい?
参加者たちがグループごとに発表した内容には、杜氏も感嘆の声をあげるほど、斬新なアイデアがたくさん出てきました。
特に擬人化において絶妙な職業や有名人の例えが参加者たちを引き込み、ワークショップは大変盛り上がりました。
小森杜氏によるとお酒造りの業界では、基本的に減点法で味を評価するから、今回のようにそのお酒の特徴や良さを加点方式で評価して、そして擬人化して表現するということは今まであまり試みてなかったので大変興味深いとのことでした。
今後みなさんの表現をまとめることで、新しい銘柄が出ることに期待ですね!
蔵見学
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授業後には、蔵見学が行われ、種麹や機械、発酵中のタンクなどを見学することができました。蔵は働く人の負担軽減や、最近の気温上昇に伴う醸造環境検討など変化し続けているそうです。
何より小森杜氏はDIYの天才w
蔵内には小森杜氏自作の設備が色々とあり、それについて嬉々として教えてくれました。
近年の趣味はホームセンターに行くことだそうです笑
また杜氏の「人にやさしく 酒にやさしく」という言葉には、環境づくりを大切にしている姿勢が伺えました。
以前にも「基山の自然の豊かさを大切にし、農家さんと共に歩むお酒造りがしたい」とおっしゃられていた小森杜氏がつくるお酒には、優しさと柔らかさが見事に表現されていますので、是非機会がある方は飲んでみてください。
結論
ワークショップを通じて、日本酒造りと組織経営の共通項を考えました。
お酒造りにおいて酵母菌などの微生物達が活動しやすくする環境づくりとお酒造りにおけるゴールの逆算の考え方を学びました。
つまり、ゴール(どのようなお酒を造りたいか)を定めてから、必要な各要素を積み上げて進めるということです。
組織経営でも、「環境づくりと最終ゴールが大事、そこからアクションを起こす」という参加者の気づきと共通する部分がありました。
お酒を通して人生や組織を見直す、とても興味深い授業となりました。
貴重な機会をいただいた福岡テンジン大学の森さんをはじめとしたスタッフの方々、ありがとうございました。