出資するのは「心が動いたとき」。世界的な課題を解決するスタートアップに出会いたい
起業家コミュニティが運営するコミュニティベンチャーキャピタルの千葉道場ファンド。主宰の千葉功太郎さんは、長年IVSに参加しており、参加のたびに魅力的なスタートアップに投資をしています。投資家にとってIVSにはどのような魅力があるのか、どのような企業に投資をしたいと考えているのかをうかがいました。
勝ち進んだ「選ばれしチーム」に会いに行く
――千葉さんは何年もの間、IVSに参加し続けてくださっています。IVSのどのようなところが魅力的だと感じているのですか?
千葉 各セクションそれぞれにおもしろさがあるのですが、特にIVS LAUNCHPAD※に注目しています。このときのためにプレゼンテーションのトレーニングを重ね、準備してきた実力者たちが出場する中、そこで勝ち進む人というのは、やっぱり面白い人ばかり。半年に1回の選ばれしチームに会いに行く。そんな感覚で参加しています。
――参加者には人としての面白さを感じるということでしょうか?
千葉 実力があるだけでなく、本当に魅力的な人が多い印象です。例年、IVSには人柄にしても分野にしても多種多様な方々が集まってきます。特にIVS Crypto 2022 NAHAからは、Web3を使った事業に特化した方も参加されるようになって、さらにイベントとして多様性が増してきました。英語でのプレゼンテーションもより多くなり、言語の面でもダイバーシティが加速しているのが興味深いです。
心を動かされたらその場で声をかけ、投資を決める
――これまでIVSの参加者にどれほどの出資をしてきたのでしょうか?
千葉 正確にはカウントしていませんが、自分の感覚では1回参加したら必ず1社以上は投資しているイメージです。IVSがスタートした初期の頃から参加し続けているので、かなりの件数にはなっているでしょうね。
投資は、IVS LAUNCHPADのなかから「これはすごい!」と心を動かされた方にさせていただいています。最終的な順位には関係なく、千葉道場のコミュニティに入っていただきたいと感じた方に声をかけていますね。私はIVS LAUNCHPADの審査員を務めているので、登壇される方のお話を詳しく聞くことができます。世界が抱えている課題解決を目指すような大きな志を持ち、規格外の事業にひたむきにチャレンジしている。そういった方にお声掛けしています。
――起業家としての「思い」に共感できるかどうか、それが一番の要因になると。
千葉 起業家にとって重要なのは「なぜ、それに取り組むのか」だと思っています。起業の原点が、例えば幼少期の体験だったり、育った環境であったり。あるいは、最初に働いたときの失敗だったり、学生時代の海外旅行で見聞きしたことだったりと、何でもいいんです。それが原動力となって、見つけた課題を自分の事業として解決する。そのような志があるか、ないかが私の投資の基準になっています。
――事業アイデアではないのが意外です。
千葉 スタートアップなので、最初の製品やサービスがうまくいくかは、正直わかりません。ただ、仮にそれがうまくいかなくても、志さえあれば、2つ目のプロダクト、3つ目のプロダクトと、課題に対してピボットしていくことができます。プロダクトはあくまで手法です。実現したいことへの強い思いがあれば、手法もフレキシブルに変えていくことができるので、いずれ成功すると考えています。
IVSは感情を揺さぶってくれる刺激的な場所
――今後、IVSに期待していることはありますか?
千葉 IVSはすでにグローバルかつダイバーシティ豊かな国内唯一のイベントになっていると思います。日本国内に限定したイベントはたくさんありますが、気軽に世界から足を運べるカンファレンスは他にありません。一方でIVSは過去にも台湾やバンコクをはじめ海外でも開催していて、その際は何百人もの日本人が一緒に海外へ足を運ぶわけです。そうしたダイナミックさもIVSならではと思っていて。そういう意味でのボーダーレスな唯一無二の存在として突き抜けていってほしいと思っています。
――これまでIVSで出会った起業家で印象的な方はいましたか?
千葉 昨年行われた「IVS Crypto 2022 NAHA」の前夜祭で、屋外でのバーベキューパーティーがありました。いつもなら、そうした時は多くの方から名刺交換を求められて、食事やビールを楽しめないことが少なくありません。でも、そのときはWeb3分野の人が集まっていたこともあって、私のことを知らない人ばかりでした。なかには、「何をされている方ですか?」と声をかけてくれる若い起業家の方もいて。それがすごく新鮮に感じて、なんだかうれしくなってしまいました。
――千葉さんのように知名度があると、貴重な体験と言えますね。
千葉 あくまで一般的論ですが、それなりに年齢を重ねて知名度があると、ちやほやされないと居心地が悪くなる人もいます。どう立ち振る舞ったらいいか、わからなくなるんです。それに、自分のことを知らない若い起業家の方にいちから自己紹介すると、「ふうん」なんて反応が薄いこともある。そうすると、こっちはもう大慌てですよ。「これはまた別の話なのですが」なんて、興味を持ってもらおうと必死です。そうした意味では、IVSは私の感情を揺さぶってくれる場所にもなっていて、刺激をくれるよい機会になっています。
招待制の廃止で、より熱意に満ちた起業家が集うカンファレンスに
――IVS2023 KYOTOは招待制を廃止し、チケット制をとることになりました。どのような感想をお持ちですか?
千葉 IVSがこれまで守ってきた世界感を自らディスラプトしたといえます。正直、驚いたのと同時に、すごいなと。誰でも参加できるようになったとはいえ、若い方々にとっては安い金額ではありません。その分、支払う金額以上の「何か」を得ようと、熱意に満ちた方々が集うことになるわけです。これまで以上におもしろいカンファレンスになるのではないでしょうか。
――IVS2023 KYOTOでは何に注目していますか?
千葉 実は、次回の「IVS2023 KYOTO」は、所用でどうしても参加できないんです。本当にプライベートな理由で申し訳ないのですが、9月にパイロットの上級ライセンス試験があって。私の夢の一つがジェット機の機長になることで、そのためにあと2つのライセンスをパスしないといけない。これと重なってしまったのが理由です。これまで皆勤賞と言ってもいいくらい参加してきたIVSですが、非常に残念です。
――千葉道場からは誰か参加されるのでしょうか?
千葉 私の代わりに、同じく千葉道場のプリンシパルである廣田航輝やパートナーの石井貴基が行く予定です。ぜひ、見つけたら声をかけてほしいですね。
――廣田さんからも一言、期待している点を伺えますか?
廣田 IVSには2019年から千葉と一緒に私も参加していて、毎回新しい出会いがあるイベントとして楽しみにしています。IVSはランチタイムや夜の交流会などで起業家の方々とフラットな形で接することができる、貴重な場になっています。いろいろと情報交換をしたいと考えていますので、私や石井を見つけたらぜひ声をかけてください。
チケットのご購入やイベントの概要はこちらから
https://www.ivs.events/ja/2023
IVS2023 LAUNCHPAD KYOTOの詳細はこちら
https://www.ivs.events/ja/ivs2023launchpad
インタビュー協力:千葉 功太郎(ちば こうたろう)
DRONEFUND創業者・代表パートナー。千葉道場ファンド ジェネラルパートナー、慶應義塾大学SFC特別招聘教授。インターネット領域等のスタートアップ60社以上、VC40ファンド以上に投資するエンジェル投資家であり、ドローン・エアモビリティ前提社会を目指す分野特化型VC「DRONE FUND」や、「千葉道場ファンド」の代表を務める。
2019年4月には、慶應義塾大学SFC招聘教授に就任。また、ホンダジェットの国内顧客第1号であり、自らも航空パイロットライセンス(自家用操縦士 Private Pilot License)を有する。
千葉道場:https://chiba-dojo.jp
Twitter:https://twitter.com/chibakotaro
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