シェールガスの基礎基本
そもそもシェールとは何か?
シェールとは頁岩(けつがん)を指します。
頁岩とは水中に堆積した泥が固まって出来た岩のことです。
頁岩は板のようになっていて、一方向に割れやすくかなり昔に沼沢(しょうたく)地帯だったところなどに多く見られます。
この石は水分や気体を通しにくく、普通の油田とは対照的です。
(普通の油田は砂のような地層であるため)
ただ頁岩は一方向に割れやすいため、力をかけるとすぐに亀裂が入ります。
シェールガス開発はその性質を利用しているわけです。
シェールガス開発
1970年代に米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)がシェールガス開発のための研究開発をスポンサーし、
1991年にミッチェル・エナジーと言う会社がバーネット・シェールで水平掘り(ホリゾンタル・ドリリング)
と破砕法(フラッキング)というシェールガス開発に特徴的な基礎技術を駆使して初めてシェールガスの開発に成功しました。
ミッチェル・エナジーという会社はジョージ・ミッチェル(バーネット・シェールの父と呼ばれ2013年に老衰により死去)
というテキサスA&M大学の石油エンジニアリング学科を首席で卒業した技師によって設立された会社です。
彼は試行錯誤を繰り返し、10年間かけてフラッキングとホリゾンタル・ドリリングの手法を確立しました。
余談ですが2002年にミッチェル・エナジーはデヴォン・エナジーに買収されています。
有名なシェールガス田としてはイーグルフォード(メキシコの国境に近いテキサス南部)、パーミアン・ベイシン(西テキサス)、ヘインズビル・ボシエ(東テキサスからルイジアナ州境付近)、マーセラス(バージニア州西部・オハイオ州東部・ペンシルバニア州のほぼ全域・ニューヨーク州西南部をカバーする、広範な地域)などがあります。
また有名なシェールオイル田としてはノースダコタ州のバーケンという油田があります。
ここで重要なのは全てのシェールガス田がアメリカの内陸にあるという点で、
これは生産したシェールガスを運搬するのが鍵になるということです。
シェールガスはアメリカだけでなく世界のかなり多くの場所に存在することが知られていますが、
実際の開発ではアメリカが圧倒的に先行していて、
他の地域ではほとんどシェールガスは生産されていません。
なぜならシェールガス開発には高度な技術が必要で、裾野産業がしっかりしていないと駄目だからです。
トヨタの自動車工場の周辺に有能な下請け業者が多いのと同じで、
いくら石油会社が凄くても、下請け会社に技術がなければ全然話にならないのです。
なので推定埋蔵量では中国が世界で最もシェールガス油田を保有していますが実質的にはゼロと同じです。なぜなら中国には技術が無いからです。
現実的に今、シェールガスを量産しているのはアメリカだけで、
世界各国共に掘削予定されていますがまだまだアメリカには追い付けない状態です。
シェールガス開発技術について
シェールガス油田は地下1,500~6,000メートルと、かなり深いところに位置しており、
従来のガス田よりずっと深いところに埋蔵されています。
また横にも長く、その長さは短くて500メートル、場合によっては3,000メートルも水平に存在しています。
普通の垂直掘りでは岩石に激突すると15~90メートルくらいしか突き抜けられません。
つまりシェールガス油田の中を3,000メートルも横に掘り進むということはかなり難度が高いということです。
このシェールガスとシェールオイルを生産する際に最も重要な技術は水平に掘ってゆく技術(ホリゾンタル・ドリリング)と破砕法(フラッキング)です。
先ほど世界で最初にシェールガス開発を行ったのはジョージ・ミッチェルと言いましたが、
ホリゾンタル・ドリリングとフラッキングを積極的に広めたのはチェサピーク・エナジーを創業したオーブリー・マクレンドン(2016年交通事故により死去)という人です。
オーブリーはもともと伝統的なガス田においてどのように生産効率を高めるかという事に注目しながらチェサピークという会社を経営していました。
そこでホリゾンタル・ドリリングを活用すると取り残しになっていたガスも効率良く採れるということを主張したわけです。
1980年代後半から90年代にかけての米国の石油・天然ガス産業ではエクソンモービルやシェブロンといった大手石油会社は米国内の主な油田やガス田を取り尽くして、残りカスをチェサピークのような小さい業者に売却しました。
そしてそのお金でオフショア(off shore)油田の開発など、より大きい案件へとシフトして行ったのです。
マクレンドンは喰い散らかされたそれらのガス田の残りカスのガスを集めているうちに、
いろいろな最新技術を試す機会があったわけです。
それで5,000メートルの掘削深度、3,000メートルの水平掘りなどの難易度の高い技術がokだとわかった瞬間に、全米のシェールガスのmineral rights(地下資源の所有・処分権・採掘権)をどんどん買い漁り、買占めました。
なぜ買占めが可能だったかというとマクレンドンはもともとランドマンという鉱物の所有権を決定し、
土地取得の契約をして回る交渉係の出身だったので、
(Petroleum Landman:石油労働者)
こつこつと地主を回って資源所有権(mineral rights)を集めることは得意でした。
こうして彼は石油および天然ガス業界の
「先見の明のあるリーダー」と呼ばれ、
米国の天然ガスの生産高はどんどん増え始めていきます。
最後に日本が天然ガスをオーストラリア、カタールから輸入している理由はなぜか?
天然ガスは気体なので運搬するのがとても難しいです。
空気を運んでいるのと同じですから、少しの量だと採算が合いません。
液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)は天然ガスを冷蔵庫で冷やし、液体にすることで体積を600分の1にして運んでいるわけです。
巨大タンカーが丸ごと冷蔵庫だと思って下さい。
これだけの処理をするには大きなプラントが必要になります。
アメリカには天然ガスを液化するプラントはカタールほど発展していないです。
生産ができても供給ができなければ意味がありません。
そういう理由で価格は抑えられていますが、今後パイプラインやLNG施設やLNG船などを整備し充実させていくことによってアメリカ天然ガス価格は上昇するでしょう。
話がそれましたが日本が米国の安い天然ガスを買うといっても、日本にまで持ってこれないというわけです。