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怪#12-2(みえる)


私が一族に名を連ねて
そろそろ5年にもなろうか

冠婚葬祭の中でも
特に不祝儀関係に関して
しきたりが厳しく
いつも緊張していたが

とにかく洗い物を
率先して担っていれば
目こぼし頂けると
わかってからは
台所専門でした

それも時代の流れから
斎場にて儀式を
執り行うようになってからは
ずいぶんと楽を
させてもらっています

ある年、本家の宗主に当たる
大叔父が逝去すると
地元でも一番大きな斎場を
借り切っての葬儀でした

その最中に、仰天したことがあります

祝詞の声に紛れて
私に聞こえているとは
気付いていなかったが
その実、筒抜けだったのです

私は右側の壁際に座しており
私の左隣が
大叔父の孫にあたる
美玖さん・・
彼女は
私より10歳ほど年上

その美玖さんの左隣は
彼女の息子の次男

その隣が長男

その隣が夫という

並びで

1列が5人ずつ座るように
椅子が配置されていました

美玖さんが小声で
次男に聞きます
次男は
小学1~2年生ぐらいでした

「ねぇ、いる?」


「うん、いるよ」


「どこに?」



何が居るのかしら?
私には、わからない
主語が無い会話
でも二人の間では
通じている?



次男が答えます

「鏡の横」


そういって見つめる先は
祭壇です

確かに祭壇の中央から
少し上
遺影の近くに丸い鏡が
あります

そこに何が居るのか?

興味から小声で
美玖さんに聞いてみました

「なにが、いるんですか?」


驚いた顔をしていましたが



「身内になったんだから
  いつかばれるわね」

そういって
話してくれました
次男は「見える」
のだそうです

今聞いたのは
亡くなった大叔父が
斎場にいるかと尋ねたら
祭壇の鏡のあたりにいる

答えたところだったのです

鏡のところに顔が
ぽっかりと
浮いたようにある(いる)
らしい

昨夜の通夜では
来客が帰り
寝ずの番の者を残して
(線香を絶やさないため)
仮眠室に引き上げた際は

棺のある部屋を
歩き回っていたらしく

一晩中
パァン  パチン
と、ラップ音が
ひっきりなしに
鳴っていたそうです


それも
次男には聞こえても
他の人にはわからない

恐ろしいことです


私には
その事象…より

平然と話してる

普通のこととして
受け止めている

美玖さんたちのほうが
よほど・・・怖い


全ての儀式が終わり
本家に帰ってきました
私はいつものように
お台所係

皆さんにお茶と
菓子類を出して
それぞれが、思い思いに
くつろぎ出したので
私も、やっと座りましたが

下座の
たまたまですが
美玖さん一家の後ろ

彼女たちの背中側に
ストンと
ひとり静かに
座ることになりました

そこで、また
変な話が
聞こえてしまったのです

美玖さんの夫が
止めています


「よせよ、そんなこと
  言うもんじゃない」


「何でよ」


「いるんだよ・・」


確かに少し前
美玖さんが
大叔父の生前の
けちぶりの割には
大した財産が無かったなどと
悪しざまに言っていました

それをご主人が
必死に止めているのです

まぁ、礼儀ですよね

そんなふうに
思って聞いていました

ところが!

次男がまた

「ママぁ、おぉじぃ
  小人になってるぅ」

要するに

先に葬儀したばかりの
大叔父は小人サイズで
みんなのところを
ウロウロしてる

今、現在もここにいて
みなの間を
行ったり来たりしながら
話を聞いているらしい

お気を付けください
49~50日は
死者は現世にとどまって
いるらしいですよ



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sennninnkame亀井速水
毎日の重ねから私なりの 「思い」を綴っております 少しでも「あなたの」琴線に 触れるものがあれば幸いです 読んで下さり、ありがとうございます